不毛な会話
最近人と話すことが増えた。それも見知らぬ人と。今日は子供が一人いるアラサーの主婦と話した。話しながらランチをした。広い公園を壁一面の大きな窓から見渡すことができるサニーズカフェというお洒落カフェで、僕はラグーパスタを、彼女は大人のナポリタンを食べながら話した。大人のナポリタンにはタコさんウインナーがのっていて、どこが大人なのかはよく分からないと彼女は言って笑った。
盛岡という場所はやはりそれなりに都会であるから、話し相手を求めようと思えば割と簡単に手に入る。ジモティーなんかで友達募集の掲示板を見て、コメントを送るだけでいい。
彼女とはそんな風に出会って、今日は2回目のランチだった。話題はとりとめのないものばかり。最近行ったランチの話。ラーメンの話。自炊の話。リンゴ飴の話。僕が興味あるのはグルメ系の話題ばかりなので、自然そういう話が多くなる。
僕はこの主婦に人としての興味をあまり抱いていない。女性としての興味もまるでない。昔パチ屋で働いていたと語るこの女性は、笑顔はチャーミングだけれど少し太っていて、僕のタイプでは全くない。
不毛な会話、不毛な関係。昔の僕ならそう思っただろう。どうでもいい誰かと話すくらいなら、本を読んだり映画を観たり、自分の孤独と向きあった方が良い。でも今の僕はそれも悪くない、とラグーパスタを頬張り彼女の話に適当に答えを返しながら思っている。
不毛というなら毎日が不毛なのだ。毛なんてほとんどない大地だ。生えていてもぴろぴろっと迫力のない毛ばかり。
同じ不毛なら、少しでも違った不毛の地を歩こう。そんな風に思うようになった。
本を読みながらランチもいいけれど、興味のない誰かとの会話は、たいして面白くもない本よりも得るものがあるかもしれない。
1時間半ちょっと。彼女とのランチで得たのは、美味しいリンゴ飴のお店の情報と、コンロをいますぐ買えという提言くらい。
でもそれだって、ただ一人でランチをしているだけでは手に入らなかった情報だ。リンゴ飴の店に行ってみるのか、コンロを本当に買うのかは怪しいところだけれど、何となくそれもいいかもと思えた。確かに部屋にコンロのひとつくらいあった方がいい。寒い日に鍋が食べられる!
不毛かもしれないけれど人との会話には予期せぬ何かが常にある。
それならそれでいいだろう。不毛に飛び込もう。不毛だからと口をつぐむのを止めよう。下らない冗談のひとつでも口にしよう。僕はとにかくもう、一人で抱える不毛には飽き飽きとしているのだから。
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