ベトナムにおける日本語教育センター設立

1. はじめに
現在、ベトナムは現代化、工業化を推進している。WTOに加盟してから、ベトナムの経済はは外国からの投資により成長し、日本投資家をはじめとして海外投資家を誘致している。2017年の海外投資局のデータにより、日本の投資案件は3,599件で、総額494億6,000万USDと、韓国に次いでベトナムで第2位の大口投資家である。更に、2018年末に日本はベトナムへの成長性が高い投資家の第1位になって、ベトナム全国に日系企業が1,800社、ホーチミン市に1,000社が存在している。
日系企業はベトナムへの投資を促進する際に、仕事をスムーズに行えるよう日本語が出来る応募者を探しているので、日本語能力が高い人材はこれらの企業からの評価が高い。そのため、近年のベトナムにおける日本語学習者の増加に伴い、日本語教育センター設立が増加している。この文章ではベトナムにおける日本語学習環境の現状及び日本語教育センター設立の条件、手続き、プロセスの概略を報告する。
2. ベトナムにおける日本語学習環境の現状
ベトナムにおいて、英語に次いで日本語が一般化しつつある。日越人材協力センター(VJCC)所長によると、大学生、求人応募者のみならず、日本文化好きは日本語学習も好むことが多い。在ベトナム独立行政法人国際交流基金により、ベトナムで日本語学習者ランキングが世界に8位で、アジアに3位である。その上、日本語能力試験に受けたベトナム人のランキングが世界に3位に立っています。ベトナムへ投資の波が押し寄せ、設立された日系企業では日本語能力が高い応募者を優先して採用する。その為、日本語が出来る応募者雇用の需要に対応して、日本語学習者数が急増している。日本語専攻科がある大学以外にも、下記の通り日本語で教育を行う大学がある。
- 日越大学(Vietnam Japan University – VJU)がベトナム国家大学ハノイ校に建設され、敷地面積75haだった。投資総額が3億6,500万USDにのぼる中で、日本からの政府開発援助が2億USDに達し、日本人は日本語教師の50%以上を占める。2016年-2019年には修士課程が設置され、2019年-2022年には博士課程、学士課程が設置される。
- ホーチミン市法律大学は2012年に日本法教育研究センター(Center of Japanese Law) により日本語で法律の教育を行った。
- ホーチミン市工業大学内の越日工業大学(Viet Nam – Japan Institute of Technology)が金沢工業大学及び日系企業の支援により建設され、金沢工業大学のカリキュラムが採用された。
最近、大学では教育言語を日本語とすることが増加しているため、日本語の学習需要もまた増加しつつある。同時に、日系企業は日本語が出来る応募者を探す必要がある。また、日本語学習者は日本語専攻の大学生に限らず、その他の専攻の大学生、日系企業での勤務希望者等がいる。そのため、そのような日本語学習需要に追い付けるように日本語教育センターが設立されている。一般的に、日本語人材の求人は翻訳者、通訳者、秘書、アシスタント、総務、ITエンジニア、教師などである。
日本の国際交流基金の調査によると、現在、ベトナムには日本語教育を実施する学校及び外国語センターが180ヶ所あり、日本語を勉強するベトナム人は4万7,000人である。ベトナムにおいて日本語学習者数は増加し続ける見込みである。
上述の通り、日本はベトナムにおいて第2位の大口投資国である。日本投資家はベトナム国内の日系企業に勤務する日本語人材をはじめとして優秀な人材採用を希望する。これによって日本語を勉強する人が増加し、それに合わせて日本語教育センターも増えていく。しかし、教育の質が高く、ステイタスのある日本語教育センターはまだ多くないので、日本語教育センターの設立は良い投資機会といえる。
3. ベトナムにおける外国語センターの設立条件
政府発行2012年9月26日付教育分野における外国の投資、協力に関する政令73/2012/ND-CP号に基づき、ベトナムにおける外国語センター設立条件は以下の通りである。
3.1 投資額
投資額が学習者1名あたり少なくとも2,000万VNDであること(土地費用を含まない)。
3.2 インフラ
- 教室には証明、机、椅子、設備などを設置すること。
- 教室の面積は、学習者1名あたり少なくとも2.5m2であること。
- 校長室、職員室、図書館、その他の特別室。
- 教育、管理向けに必要な施設。
3.3 インフラの建設、賃借
- ベトナムにライセンス期間20年以上の開業登録を行った外資系機関は、インフラ建設計画を作成しなくてはならない。当該計画に基づき、人民委員会により土地取引或いは借地を承認される。
- ベトナムにライセンス期間20年未満の開業登録を行った外資系教育機関は、インフラ建設を行わなくてもよいが、少なくとも5年間、学校及び教室の賃借契約書を締結しなくてはならない。
3.4 教育プログラム
- ベトナム国内で使用される外国の教育プログラムは、外国において品質検定済か、若しくは教育センターのプログラムが外国管轄機関により品質を承認されていること。
- プログラムは教育を目的とし、国防、国家安全、ベトナム文化に悪影響を与えず、宗教勧誘を行わないこと。
3.5 教師
- 教師の資格は高等学校教諭資格相当またはそれ以上で、教育を担当する学科と適合する専門であること。
- 外国人教師は少なくとも5年間の指導経験を有すること。
4. 外国語センター設立手続き
- 投資登録証明書申請を行う。
- 外国投資家がベトナムに最初に投資する場合、企業登録証明書申請を行う。
外国投資家がベトナムにすでに企業を設立している場合(事業内容:日本語教育)、支店設立登録証明書申請を行う。当初の事業内容に日本語教育が含まれていない場合、支店設立の前に事業内容を追加する必要がある。
- 外国語教育センター設立決定申請を行う。
- 外国語教育センターの教育ライセンス申請を行う。
WTO条約に従って市場開放されたことにより、外国語教育センターの設立手続きは難易度が高くはないが、地域により計画投資省は教育省、建設省など管轄機関の意見を聴取することがある。その上で、計画投資省は外国語教育センター設立決定及び教育ライセンス申請に対して、条件を満たす説明書に基づいて承認し、教育センターに必要な交通安全確保、消防などについて検討する。
5. 終わりに
日本語能力が高ければ日系企業において条件の良い仕事を探しやすくなる。これは日本語学習者が希望することと一致すると言える。併せてベトナムは、日本語のみならず国際標準教育の普及へ前向きに努力する。日本語教育センター設立投資は、国内企業及び外国投資家にとって良好な投資機会となる可能性を秘めていると言える。
6. 参考資料
- 政府発行2012年9月26日付教育分野における外国の投資、協力に関する政令73/2012/ND-CP号 。
- Vtownニュース:ベトナムにおける日本語学習状況 (2014年1月9日)
http://vtown.vn/articles/tinh-hinh-hoc-tieng-nhat-tai-viet-nam.html
- Tuoitreニュース:日本語能力試験に受けるベトナム人ランキングが世界3位になっている
(2018年10月25日)
https://tuoitre.vn/nguoi-viet-thi-nang-luc-tieng-nhat-nhieu-thu-3-the-gioi-20181025093828232.htm
- Baomoiニュース:在ベトナム日本語学習者が増えりつつある(2018年8月22日)
https://baomoi.com/so-nguoi-hoc-tieng-nhat-tai-viet-nam-ngay-cang-tang/c/27393529.epi
- Vtvニュース:日本語を勉強するベトナム人が増加(2017年2月6日)
http://vtv.vn/viet-nam-va-the-gioi/gia-tang-so-luong-nguoi-viet-nam-hoc-tieng-nhat-20150317160724506.htm
- Xuatkhaulaodongnhatbanニュース:ベトナム人は日本語を勉強するのが好きになりつつある(2015年3月23日)
http://xuatkhaulaodongnhatban.com.vn/nguoi-viet-nam-ngay-cang-thich-hoc-tieng-nhat.htm
- 在ベトナム日本国大使館(2016年2月16日) 小中学校における日本語教育について
http://www.vn.emb-japan.go.jp/vn/culture/Hoat_dong_thong_tin_cu/vn_giaoductiengnhat20160224.html
- ベトナムへの日本投資額誘致状況(南部投資促進センター・海外投資局の投資計画部)
http://www.ipcs.vn/vn/tinh-hinh-thu-hut-von-cua-nhat-ban-vao-viet-nam-W1817.html
- ベトナムへの日本の投資が増加(2019年1月21日)
http://www.sggp.org.vn/gia-tang-dau-tu-tu-nhat-ban-vao-viet-nam-571996.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?