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杉並区議会〜機能不全議会〜


皆様、こんにちは、こんばんは。
杉並区議会議員の小林ゆみです。

本日は、私が所属している
文教委員会(教育系の議案や陳情・請願を審査する委員会)

災害対策・防犯等特別委員会、
給食費無償化の予算を含む補正予算を取り上げた9月26日の区議会本会議
の議論の内容を、一部ご報告いたします。

9月22日(金)の文教委員会は、陳情審査から始まりました。
委員会で取り上げられた陳情は、
【5陳情第24号 校内の居場所「サポートルーム」の設置に関する陳情】
です。
サポートルームとは、学校の教室に行けなくなった子供たち、通常学級で周りの児童生徒との集団活動に馴染めない子供たちのための、学校内の居場所です。

https://toyokeizai.net/articles/-/582768より。

杉並区の不登校児童・生徒数は、令和4年度は897名。
前年度である令和3年度は704名であったことを考えると、杉並区の不登校児童・生徒数は増加傾向にあることがわかります。

通常学級に馴染めない子供、感覚が敏感で周囲の音や声に抵抗がある子供たちにとって、サポートルームのような場の存在は、個に合った教育の場を提供するためにも重要です。

しかしながら、こうした場を新たに設置するとなると、当然ながらより多くの教員の配置が必要となります。
補助的な意味でボランティアの助けを借りるとしても、やはり教員は配置されていなければなりません。
また、教員だけでなく、学校内の教室の数が足りないという問題もあります。
すぐに人員、場所を確保することは困難なため、教育現場としても、できることから始めていくしかありません。

今回委員会で取り上げた陳情には、「支援教室を校内に設置する」こと、「教育委員会主導での人員の配置」をお願いします、と陳情者の方が明記されており、即座に実現することは難しそうです。
こうした陳情に対して「議会として現時点でそこまでは確約できないが、陳情の趣旨には賛同する。(今後その取り組みの実現に向けて努力していきたい。)」という意味で、陳情を「趣旨採択」するという選択肢があります。
議会で単純化してマルバツで表すと、「採択…⚪︎、趣旨採択…△、不採択…×」と表現されます。

本陳情の審査結果として、
おおつき城一、宇多川ゆうじ、鈴木ちづる、倉本みか、木梨もりよし、矢口やすゆき、小林ゆみ
以上7名の委員(敬称略)が趣旨採択を主張し、文教委員会においては本陳情を「趣旨採択」とすることに決定しました。
これから杉並区において「個に応じた指導」を更に充実させるべく、私個人としても、自民党・無所属杉並区議団としても、学校現場における人員不足・教室不足解消のために区に提言を続けてまいります。

9月26日(火)は、午前は災害対策・防犯等特別委員会が開かれました。

議員(委員)は、自身が所属する委員会で使用される資料を事前にポストインで受け取るのですが、今回の災害対策・防犯等特別委員会の資料を事前に見ていると、以下のようなものがありました。

杉並区議会 災害対策・防犯等特別委員会の資料より。
資料左上に、「非侵入窃盗 680件」と書いてあります。

「非侵入窃盗」とは、ひったくり、すり、自転車窃盗、車上狙いなどを指します。
この資料を見た時、「共産党の小池めぐみ議員は以前ご自身のブログで常習的な自転車窃盗を告白していたから、委員会ではきっとこの資料に触れないだろうなぁ。」と思っていました。 
https://megalodon.jp/2023-0217-0400-02/https://web.archive.org:443/web/20230215065602/https://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:degViECBIcEJ:https://ameblo.jp/may-tachibana/entry-11557565985.html&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp

小池めぐみ議員(日本共産党杉並区議団)の
過去のブログより。常習的な自転車窃盗を告白している。
(ただ、全体を読みましたが、文体や言葉選びは
センスがあり、個人的に好きでした。)

しかし、26日に災害対策・防犯等特別委員会が開かれると、小池めぐみ議員(委員)が「自転車窃盗をこれ以上増やさない為の取り組みは?」という趣旨の質問を杉並区に対してしていたため、「えっ!?」と耳を疑い、苦笑してしまいました。

自転車窃盗、もし自分がされたら、とても困りますよね…。
私も学生時代に2度、自転車窃盗の被害に遭ったことがあり、買い替えるお金も無く、毎日何十分も傾斜の多い道を歩く生活を強いられたことがあります。
杉並区としても、犯罪発生を未然に防ぐための啓発活動を更に充実させてほしいところですね。

午前中にそんなことがあった9月26日ですが、午後からは区議会本会議が開かれました。
議案第74号 令和5年度杉並区一般会計補正予算(第4号)の議決(議員が賛成・反対の意思を示し、)があったからです。
通常、第3回定例会に付託された議案については、第3回定例会の最終日にまとめて議決が為されます。
今回は、補正予算第4号の中に岸本聡子区長の重点施策である「学校給食費無償化」の予算が入っていたため、中間議決(議会最終日を待たずに議決)となりました。

本会議では議決に先んじて、議案第74号の補正予算第4号についての討論があり、まずはじめに我が会派の脇坂たつや議員から反対討論がありました。

脇坂たつや議員、そして我が会派の主張を以下に纏めます。

《杉並区による給食費無償化の問題点》
・国立・都立・私立校は対象外!→不公平。
・不登校の子供は対象外!→不公平。
・杉並区と我が会派がそれぞれ行った「希望する教育施策に関するアンケート」では、給食費無償化ではなく人員配置などが上位に来ていた。→杉並区が他の教育施策より給食費無償化を優先する意味が不明。
・事業を継続する場合、毎年17億円以上かかる。→他の教育施策に予算を回すべきでは。

要するに、
「施策の優先順位が違う。
実際に区民の求めている教育施策は他にあるのに、区民の声に耳を傾けておらず、対話を重視しているとは言えない。
毎年17億円以上もの税金を使ってやることなのか?」
ということです。

今年、杉並区と自民党・無所属杉並区議団がそれぞれ行ったアンケートの結果の一部を以下に載せます。
これを読むと、区民が本当に求めている施策は、給食費無償化よりも他にあるということがわかります。

杉並区が保護者に対して行ったアンケートより。
「人的措置の充実」が、2位以下に大きな差をつけて1位。
自民党・無所属杉並区議団が行ったアンケートより。
杉並区が行ったアンケート結果通り、人的措置の充実や
体験機会の充実を行うべきとの声が多く寄せられている。

この結果を無視し、区長選挙時の区長の公約である給食費無償化を何としてでも進めることに、「政治的な意味」以外に何があるというのでしょうか。
せっかく区民の声をアンケートで拾い上げることができたにもかかわらず、アンケート結果を無視して区長のやりたいことをやるというのであれば、区民にアンケートを取った意味がありません。
「区政がより良くなるかもしれない」と期待を寄せてアンケートに答えてくださった区民の方々の気持ちと労力と時間を、杉並区は軽視していると言わざるを得ません。

しかも今回の給食費無償化施策は、令和4年度の杉並区決算の執行率がコロナ禍ゆえ92%と低かった(予算の92%しか使わなかった)ため、決算剰余金(余ったお金)を使って行うというものです。
平たく言うと「コロナで予定通り区の事業等ができずにお金が余ったから、その分を給食費に回そう!」というものであり、たまたまこの年度は余ったお金があるからできるぞ、という偶発的な産物です。
それ故に、来年度以降の継続性も見通すことができません。

しかも、仮に毎年給食費無償化をするとなると、年間最低でも17億円の税金がかかるため、確実に他の教育施策に皺寄せが来ることになります。
例えばこの記事の冒頭で紹介した「校内サポートルーム設置」なども、区の予算には限りがあるため、より実現が遠のいてしまうことでしょう。
我が会派は、給食費無償化よりもまず、現に不足している教育現場での人員配置等を優先すべきという立場です。
先述したアンケート結果を見ても、本来であれば実際に区民から求められている施策を優先すべきであったと感じます。

また驚いたことに、「身を切る改革」でお馴染みの維新の会ですが、松本みつひろ議員(杉並維新の会)は9月25日の総務財政委員会で杉並区の給食費無償化施策に賛成し、26日の本会議でも賛成していたのです。

維新の会は、国政では
「行財政改革により財源を作り出し、給食費無償化に充てる」
ことを主張しており、松本みつひろ議員も令和4年の定例会一般質問ではそのように主張していました。

しかしながら、今回の杉並区の給食費無償化は
「杉並区が努力して節約した結果お金が生まれたのではなく、蓋を開けたらたまたまお金が余っていてラッキーだったので、給食費に使う」
というものであり、杉並維新の会がこれに賛成したことにはたいへん驚きました。

私は政党無所属であり、維新の会を特別に応援しているということはありませんが、「努力して節約してお金を生み出してから政策に充てる」という政治姿勢は、責任感があり個人的に好きな考え方であったので、今回の杉並維新の選択には単純にショックを受けました。
財源を生み出す努力をせずに税金をばら撒くような施策を行っているようでは、「左翼」と言われても仕方がありません。

(↑少し前の記事で、杉並区の話ではありませんが、維新がアピールする『改革によって作り出した財源で無償化』したわけではないという例。)

そこでふと杉並区公式ホームページの「区長の日程表」を見てみると、補正予算審議直前の9月22日に、杉並維新の会が岸本聡子杉並区長に面会しに行ったことが記載されていました。

https://www.city.suginami.tokyo.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/077/287/nittei20230927.pdfより。

「杉並維新は区長に対して是々非々の立場かと思ったけど、左派寄りの区長にどんどん寄っていってしまうのかな?」と、なんだか寂しい気持ちになりました。

そして本会議では、もう一波乱ありました。
田中ゆうたろう議員が素晴らしい反対討論をし(是非、録画中継を見ていただきたいです!)、奥山たえこ議員の討論の時間になりました。

(↑9月26日本会議の録画中継。杉並区公式ホームページより。)

奥山たえこ議員は事前に議会事務局へ、議案に反対の立場で討論するとの通告をしていました。

それにもかかわらず、冒頭に、
「議案第74号に対して、反対と賛成の意見をそれぞれ申し述べます。」
とふざけた発言をし、議場にいた議員や理事者たちは耳を疑いました。

9月26日の本会議録画中継より。

杉並区議会の会議規則の第6章 第44条では、
「会議において発言しようとする者は、開議前、あらかじめ議長に発言通告書を提出しなければならない。…(中略)… 2 前項の通告書には、質疑についてはその要旨、討論については反対・賛成の別を記載しなければならない。」
と定められています。

『杉並区議会会議規則』より。

そうでなくても、一般的な意味で「討論」というものは「ある事柄に対して意見を出し合ってたたかわせること」なので、「賛成かつ反対」などという討論は存在しないのです。 

先ほど紹介した動画を見ていただけるとわかりますが、議席からは
「議会規則違反だろう!」
「賛成・反対を同時に述べるなんてあり得ない!」
「議長、注意して!」
と野次が飛びました。

(※『議会での一切の野次を禁止すべき』という主張が世の中にあるようですが、仮に野次を禁止すると、このような『議会の機能不全や議長の職務怠慢に対する注意の野次』をも発言できなくなってしまい、ルールを破る者にのみ有利な議会となってしまう為、小林自身はこの主張には反対の立場です。)

そして、藤本なおや議員から「休憩動議!」との声が上がりました。
しかし杉並区議会会議規則に則ると「議事進行上の動議は無視できない」にもかかわらず、井口かづ子議長はその声を無視して議事進行し、強行採決をしようとしました。
まさかベテラン議長が、議会の最低限のルールも知らないのでしょうか。

議席からの再三の動議の声に、見かねた区議会事務局が動きました。
井口かづ子議長に対し、区議会事務局次長が「議事進行上の動議は無視できないんですよ。…」と隣で口頭説明して、やっと理解した様子の井口かづ子議長は「暫時休憩」と発言し、議会は休憩に入りました。
奥山たえこ議員によるルール違反の発言をどうするか、議会全体で考えて結論を出す必要があったからです。

休憩中、各会派の幹事長が集まって話し合い、最終的に、奥山たえこ議員が討論の中で「議案に賛成」と言った部分を議事録から削除する必要があるということになりました。

ただ、本来であれば奥山たえこ議員が登壇して発言した冒頭、「反対と賛成の意見をそれぞれ申し述べます。」と言った時点で、議長が注意していればこんなことにはならなかったはずです。
井口かづ子議長は、今年の5月に杉並区の共産党や奥山たえこ議員をはじめとする左派系の議員たちから「これまで公正公平な議事進行に取り組んできた」と評され、左派系の議員たちに祭り上げられ、それまでお世話になった自民党を裏切り、議長のポストを勝ち取りました。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/e9ab7cdb0b2444b9ed0d9553471e232151b8d15eより。
春の議会で、それまで20年間所属しお世話になった自民党を
裏切り、左派系の区議たちと手を組んだ井口かづ子氏の
議長就任を、共産党の小池議員が喜んでいる。
井口かづ子氏の一体どこが「公正公平」なのだろうか?


井口かづ子議長は議会で平然とルール違反する左派系議員を見逃すために、議長に就任したのでしょうか。
それとも単純に、杉並区会議規則が全く頭に入っていないまま、議長職に就いているのでしょうか。

お世話になった人を平気で裏切るような人の思考はわかりかねます。
ただ、区民の声を代弁すべく、きちんとルールを守って議論を進めようとするまっとうな議員が逆に損をするような「機能不全議会」…現在の杉並区議会を作ってしまっていることの責任を負うべきです。

井口かづ子議長には、宿題として次回の議会までに「杉並区議会会議規則」をしっかり読み込み、公正公平な議会運営ができるようにトレーニングしていただきたいと思います。

さて、休憩が明け、議会が再開しました。
奥山たえこ議員より議事録修正の依頼が出された後、補正予算案の議決に入りました。
その結果、給食費無償化を含む補正予算第4号は、賛成多数により可決されました。

「行政は、一度施策を始めたらやめられない。」
その性質を考えると、今回給食費無償化をして良かったのか?
その点に疑問が残ります。

月3,000〜4,000円の給食費が0円になったところで、杉並区の言う「少子化対策」になるのでしょうか。
「給食費が0円になったから子供を産もう!」と思う人が、この世に居るのでしょうか。
私は、そうは思いません。
仮に杉並区がそう思っているのだとしたら、「子育て当事者を馬鹿にしているのかな?」とすら思えます。

私はかつて予備校講師をしていましたが、私の1コマ80分間の授業に対して、2万円以上の受講料を保護者の方は払っていらっしゃいました。
教育にかかる費用が高い現代において、仮に「質の高い教育」を「格安で」受けられる環境があるのであれば、保護者はこの上なく喜ぶでしょう。
それが杉並区立の学校で受けられるのであれば、杉並区民は迷わず我が子を区立学校に入れたいと思うはずです。
私も子供を持つ親なので、子供たちの豊かな学びのためにも、そのような環境を望んでいます。
多くの保護者が行政に望んでいるのは月数千円の食費ではなく、「教育の質向上」や「その為の人員配置」ではないでしょうか。

私は、教育の質向上こそが少子化対策に繋がると信じています。
今回の杉並区の給食費無償化は、「区長選挙の公約だから」、「他の区もやっているから」、「たまたまお金が余ったから」という単なる外向きのパフォーマンスにしか見えず、「子供たちの学びを支援しよう」、「少子化対策をしよう」という気持ちは一切見えてきません。
杉並区には、本当の意味での子育て支援、少子化対策、教育支援を行ってほしいと切に願います。

来月2日からは、決算特別委員会が開かれます。
議会と杉並区とでしっかり議論を重ね、杉並区が真の意味で区民の方を向いて区政運営を行うことを願うばかりです。

長い文章となってしまいましたが、本日もお読みいただきありがとうございました。

自民党・無所属杉並区議団の控室にて。
矢口やすゆき議員も一緒に写ってくれました。

令和5年9月29日
杉並区議会議員 小林ゆみ

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