見出し画像

Meanwhile at ROOFTOP

時々、というか私がDJMixを制作するほとんどの場合、先にMixのタイトルや、ストーリー、ヴィジョンが降りてくる。クラウドを目の前にして現場で奏でる時とはまた違うチャンネルで音楽と向き合う時間の始まりである。

ぼーーーーっとインスピレーションを浴びている最中に、直感的にそのMixにとって要となる曲が決まり、その前後に繋がっていく音楽を探すというのがお決まりのフロー。

この『Lockdown Escape Mix』を作った時もそうだった。

約2年前、突如世界にcovid-19が出現し、何がなんだかわからない内に私たちは外出して人に会うことができなくなった。

色んな人が色んなことを言いはじめた。
そしてそのほとんどが不安や恐怖に基づくものだった。

初期の段階で素人が色々考えたってわかることなんかたかがしれてる。
私は思い切り周りを無視してしばらく自分のバブルの中で過ごしていた。

ちょうどその頃、パフォーマーの友人から

「最近パルクール(以下パーコー)の人たちと動画の撮影をしたんですよ。」

という話を聞いていたので「パーコーって何?」と思い調べた結果、YouTubeで彼らを発見した。

イギリスのパーコー・チームSTORRORだ。

プロのアスリート集団で、Youtube チャンネルで動画を発表する以外にも映画などのスタントマンもこなしている。


彼らのチャンネルにアップされていた動画の数は多かったが、時間があったので、しまいには声を聞くだけで誰が話しているかわかるほど、全部観た。私自身もエクササイズやトレーニングをする時のモチベーションを上げるため、音楽を聴きながら映像だけを流したりしていた。

STORROR のメンバーが発揮するスーパー・ハイレベルの身体能力、ひるむことなく挑戦し続けるまっすぐなマインド、Go Proを口にくわえて、まるでゲーム画面のような視点で、だけど生身の人間が世界中の屋根から屋根をジャンプしてゆく映像がとても新鮮に感じられて、どっぷり浸からせてもらった。(東京編もあった)

もちろん失敗したら大怪我をするし、状況によっては常に死と隣り合わせ。
彼らですら大きなジャンプをする前には恐怖心と闘う。
そして世界中のビルの屋上に無許可で侵入して怒られまくる。

何なら許可を得ていても、ルーフトップを縦横無尽に、そして華麗に逃走していくストーリーの動画を撮影し公開している。

私が『Lockdown Escape』とミックスのタイトルにつけたのは彼らの『Rooftop Escape』というシリーズから拝借したものである。

日常とは全く違う視点の映像を見続けるうちに、自分の脳内でも何かが変わってきたようで、外に散歩に出かけても気になるのは常に屋根の上。
あそこからあそこへはジャンプできそう、とか、実際にやったら怪我をするだけなのでイメージトレーニング(?)として私は新たに得た視点を楽しんでいた。

「もし人間がみんなこのレベルまでいけたら、世界はどうなるんだろう???
免疫力上げようとか、もうそんな次元じゃないよね。」

と思い始めた時、頭の中に、ストーリーが降りてきた。

“ ー 突如出現した謎のウィルスは、脅威的なスピードで世界に広まり、アジアをスタート地点に各国が次々とロックダウンを開始する。人々の理解を超えた何かが発生している。

そんな中、パーコー・ピーポーは軽やかにジャンプし続け、ロックダウンしそうな国境を次々に超えていく。

彼らは素手でビルを昇り降りする。
地下鉄と同じスピードで距離を移動する。

人体のもつ最大限の可能性をフル解放した彼らに、今までの生活様式はもはや通用しない。

むしろ、人でごった返す地上で生きる必要もない。ROOFTOP (屋根の上)という新しいスペースで重力と調和した新しい地球生活スタイルを発見し、この大きな変化を受け入れ、それを安安と飛び越え、新たな希望へと向かっていくー ”

鮮明な映像と共に、少し暗い空気の中から始まり、軽やかな疾走感を引き連れて希望に満ち溢れた物語の終わりへとガイドされていく。そんな内容だった。

いわゆる「キター!」の瞬間である。

と同時にオートマチック脳内選曲が始まったので、私は実際の音源を掘りながらMix作りに勤しんだ。

STORRORが普段動画で使用する音楽と、私の選ぶサイケデリック・チルアルト系の音楽は、テイストがかなり違う。

けれど、BPM(Beats Per Minute: テンポ)は同じくらいだし、ダブステップ的な音源であれば、そこまで抵抗なく聴くことができるだろう。

エスニックな曲調が登場する頃には、彼らがジャンプし続けて、中東らへんまで逃走完了しているのをイメージ。

あれこれクラフトしながら、Mixは無事に完成したので、聴いてくれる方たちのステイホーム・タイムの彩りになればいいなと思って Music Clouds ( Soundcloud や Mixcloudなど)へアップロードした。

それから約2年。

おかげさまで世界中のたくさんの方に聴いてもらえているこのMixだけど。

実は私の中で

「肝心な本人たちにファンレターと共にMixのリンクを送りたい!」

という密かな願望があった。

しかし彼らの、例えばYouTubeチャンネルのフォロワーは734万人!!!(2022.03.24時点/ 2年前の時点でも確かこのくらいの桁数)とかいるので、きっと毎日物凄い量のお手紙とかくるだろうし、送ったところで見てくれないだろ…と思い込んでそのままにしていた。

「でもけどやっぱりダメ元で送ってみたい!」

というわけで、イギリス育ちの心友にアドバイスしてもらいながら、つい先日思い切ってメールを出してみた。

このMixを制作する時に降りてきたストーリーについてもお伝えし

「体に気をつけて。一生応援してます、また東京のルーフトップにも遊びに来てね!」

という内容にした。

なぜか超緊張したし、送ったことに満足したので後はもう知らない!だったのだけど、二日後にいきなりメンバーの一人から返事が届く!しかも「well done!」って音源聴いてくれてる!

というか返事早いな〜〜〜!

さすが世界一のパーコーピーポー!

それで懐かしくなって自分でMix聴いたら、良かった笑 エネルギー及びインスパイアの源が彼ら20代後半の前しか見てないガチアスリートだから、希望に満ち溢れたエネルギッシュなチルアウトMixになった。

いやあ、嬉しいな〜〜!

こういった面では人種、国境関係なく様々な人と瞬時に繋がれる本当に素晴らしい時代になったなあと痛感する。

私の受け取ったインスピレーションと彼らのエネルギーが織り混ざった音楽の錬金術。先の見えない状況下でも、信念と希望を持って進んでいく時の応援BGMとなれば幸いです!

もしご興味があれば是非、一聴してみてください!





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?