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第二章 入院費用はいくら

一人暮らしの独身の弟が意識不明で入院した。その時、家族は何を、どんな順序で、どのように手続きしていけばいいのか。遠方に住む場合はどうすべきか。そんな時の手引き。(第3回)
第1回はこちら

家族にとって、容体の次に心配なのはお金の問題だ。

20代に入っていたはずの生命保険はがん保険にかけかえられており、保険会社に問い合わせたものの、当然使えなかった。貯金もほとんどない。果たして治療費を払えるのか、払い続けていかれるのか不安でたまらなかった。

病院の窓口で、支払額が安くなる「限度額適用認定証」(第三章②参照)を提出するように説明を受けた。少し安心したが、それでもやはり負担は大きい。

しかし、さらに払いすぎた医療費は取り戻すことができる。「高額療養費」(第三章参照)や「確定申告の医療費控除」(第三章参照)の申請を面倒がらずに行えば、数カ月先にはなってしまうが、払い戻される。

弟の会社は入院した日から有給扱いにしてくださったので、11月と12月は通常通り給与が支払われ、年末のボーナスも支払われることになった。当座はしのげると胸を撫で下ろしたが、1月以降の治療費や、退院後のことも考えなければならない。

長い治療になるだろうという見通しから、12月末でアパートを退去し、ローンの残っていた軽自動車を売却して大きな出費を抑えた。
2022年1月からは健康保険組合から傷病手当金(第三章参照)を受給している。

◆入院費のおおよその内訳

入院費は退院・転院時と、入院が月をまたぐ場合は月末に請求される。基本は窓口での現金払いだが、クレジットカード対応の病院も増えている。私は病院から遠方在住のため、最初の病院、現在お世話になっている転院先の病院ともに、入院の翌月10日頃(6月分なら7月10日頃)弟名義の請求書が私宛に郵送され、病院の口座に振り込んでいる。

《かかる費用》
医療費 + 専門業者に支払う費用(レンタルパジャマやオムツ代 + シャンプーなどの日用品や衛生品など)

《必要なときにかかる費用》
散髪代、介護タクシー代、病院から購入して届けるよう求められる備品など

◆医療費

(*は保険適用外で全額自己負担、☆健康保険適用外だが確定申告では控除対象)

 ①手術や治療等の入院費
 ②歯科代
☆③入院時食事療養費(食事代、栄養点滴も含む)
  標準負担額 1日460円×日数(住民税の非課税世帯は210円など)
*④保険適用外の検査代
*⑤差額ベッド代
*⑥診断書作成料

限度額適用認定認定証を病院に提出すれば、保険適用される医療費は、医療機関ごとに、自己負担限度額までで済む。金額は収入によって違うが、例えば健保の場合、標準報酬月額28万~50万円なら87,430円。4カ月目からは1カ月 44,400円(多数該当)だ。

ただ、この額には食事療養費、保険適用外の検査、差額ベッド代、診断書作成料などは入っていないし、月途中で転院したら、それぞれの病院で自己負担限度額を支払わなければならないので注意が必要だ。

弟が入院した最初の月は、集中治療室に入院し手術を受けたが意識が戻らず、病名も付かないため、保険適用外の検査をいくつか提案された。一回につき数万円の検査を全て行っていたら、全額自己負担の検査だけで結構な額になってしまう。全ての検査を受けさせたいが、検査代で入院費が支払えなくなっては本末転倒だ。
急な事態で弟の経済状況がわからないこと、代わりに負担することも難しい事情を医師に説明し、必要性と価格について丁寧に説明を受けた。私の態度を面倒がることなく、医師は辛抱強く対応してくださった。結局、麻薬検査や男性の罹患率が極めて低い病気などの検査は受けないことを選択した。

◆専門業者から請求されるもの

(全額自己負担、☆は健康保険適用外だが確定申告では控除対象)

 ⑦レンタルパジャマ、オムツ 
  一日1000円(税別)前後
 ⑧日用品
  シャンプー、ボディーソープ、ハミガキ、ガーゼなど
 ⑨散髪代
☆⑩転院時の介護タクシー代
 
病院によって価格は異なるが、弟が入院している公立病院ではレンタルパジャマやオムツ代が1日約1000円×日数分で3万円ほど。なお、パジャマの着替えやオムツ等を安く購入して持参できる場合は、この費用は発生しない。
差額ベッド代やパジャマ等のレンタルサービス代は病院によってかなり額が違い、国立病院は安く、大学病院、私立病院などは高額の傾向がある。

転院で介護タクシーを利用する場合もその費用がかかる。介護職員初任者研修の資格をもったドライバーが乗務しており、車いすやストレッチャーに対応しているので、一般のタクシーより高額になる。自治体によって、介護保険が適用になったり、割引制度があったりするので、確認しよう。

◆必要時に購入して届けるもの

(全額自己負担)

衛生用品、電気カミソリ、体交マクラなど

治療に必要な用品などを病院の売店で購入し、病室まで届けるよう求められる場合もある。
現在、弟がお世話になっている病院には、レンタルパジャマを病室に届ける時に、日用品や衛生用品も届けてくれ、一括請求してくれるサービスがあり、大変助かっている。
体交マクラを届けるよう求められた時は、病院に許可を取り、送付先を弟の病室にして通販で購入した。

◆月ごとの支払総額は

「限度額適用認定証」を提出して、実際に支払った額は以下の通り。

2021年
11月      計 約22万円
医療費約18万円、パジャマレンタルや衛生用品など約3.5万円。 

12月      計 約17.5万円 
医療費約14万円、パジャマレンタルなど約3.5万円       

2022年
1月      計 約28万円
医療費 A病院 約11万円+2万円 B病院 約8.8万円
パジャマレンタルなど3.5万円 体交枕 1.7万円 介護タクシー1万円   
                                     
2月      計 約18.9万円
医療費 A病院 約5.6万円 B病院8.8万円 
パジャマレンタルなど 3.5万円 介護タクシー 1万円      

3月      計 約12.2万円
医療費 約9.2万円(当初約12万円支払ったが、障害者認定日以降分は自治体に申請し、助成金の払い戻しをうけた)
パジャマレンタルなど 約3万円 

1月はA病院からB病院へ転院したが、1週間後に救急搬送で再びA病院に入院。
2月は症状が落ち着き、再度A病院からB病院へ転院となった。
3月末に身体障害者手帳1級が交付され、障害者認定日以降分の医療費は自治体に申請し、助成金の払い戻しをうけている。

4月以降は保険適用外の医療費と業者へ支払うパジャマレンタルなどの費用のみで、3万円強。             

◆社会保険料

入院していても、健康保険、介護保険、年金などの社会保険料、税金は支払わなければならない。

◆入院費用を取り戻そう

「限度額適用認定証」で窓口で支払った医療費が減額されていても、まだ払いすぎているかもしれない。「限度額適用認定証」については、病院の入院用パンフレットやホームページにも記載があり、窓口でも提出するように言われるが、以下の2つについては説明を受けないし、自ら調べて申請しなければ受給出来ない。「受け取れるかも」と思ったら申請しよう。仮に申請し忘れていても、高額医療費は2年確定申告医療費控除は5年以内ならさかのぼって請求できる。

①高額療養費を申請 (健康保険組合)

「医療機関ごとに」自己負担限度額を支払わなければならないので、転院すると、双方の病院で限度額まで支払う必要があるため、高額になってしまう。その場合は「高額療養費」を健康保険組合に申請すれば、限度額を超えた分は払い戻される。
また、「限度額適用認定証」が間に合わなかった場合は必ず申請しよう。

組合によっては「付加給付」があり、さらに限度額が低い場合(支払う医療費が安くすむ)があるので、加入している健康保険組合に確認されたい。

恥ずかしながら、この記事を書きながら、弟の場合も当てはまると気づき、(診療日の翌月初日から2年間は申請ができる)現在手続きをしている。申請が通るのか、通った場合いくら払い戻しがあるのか、後日加筆する予定。

②確定申告の医療費控除 (税務署)

「限度額適用認定証」を利用しても、翌年の確定申告の医療費控除は面倒がらずに行った方が良い。一世帯当たり、年10万円以上医療費を支払ったらほとんどの場合、所得税が戻ってくる。弟の場合、単身世帯で2カ月に満たない入院だったが、還付があった。


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