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私流バケーション メキシコシティ編

2月の中旬からずっと走り続けていたので、たまには休みを取ってもバチはあたるまい、とメキシコシティで1週間を過ごすことにした。

2006年に一度訪れたことのあるメキシコシティだけれど、2010年代中盤くらいから、メキシコシティがアツい、という話をちらちらと耳にするようになった。DIY文化方面(アートと音楽)と食の世界で動きがあって、自分のニューヨークの家をAirbnbに出せば、そのお金でメキシコシティでけっこういい暮らしができるから、長期滞在するクリエイティブ層が増えている、ということだった。リタッチャーとかグラフィック・デザイナーとか、どこにいても仕事が成立するタイプの人たちである。だから、なんとなく頭の中の「行きたいところリスト」に入れていた。

自由業なのでバケーションは、お金と時間さえやりくりすれば(おおむね)好きなときに取ることができる。これには夫婦間のセックスくらいと同様の厄介さがある。「いつでもできると思って結局しない」という事態に陥る危険性があるからである。40代頭くらいまでは、気がついたら何ヶ月も1日も休まなかった、ということもあった。当時は「遊びのような仕事なのだから休まなくても大丈夫」と思っていたし、計画性のなさがたたって「次の仕事が終わったら」と繰り返し続けるうちに時間が経ってしまった、なんてこともあった。今は、たまには休まないと精神がやられてしまうことに気がついたのと、バケーションがネタになる、ということがわかったので、何か旅の言い訳が目の前に現れたときは、その場でカレンダーをブロックしてしまうという癖がついた。

今、やっているプロジェクトに、旅のストーリーをzine(自費出版のリトルプレス)にまとめる、というものがある。去年、バンコクに遊びに行ったときに、書きたいことがありすぎたために、zineを作ろうと決めた。1度目は遊びだったから、誘ってくれた男友達のまわりのコミュニティのことを書いた。読み返したら女の声がない!と気がついたために、もう一回行って、男たちの物語(A面)と女たちの物語(B面)にまとめた。長嶋りかこさんにデザインをお願いして、二つの物語が真ん中で出会う、という本ができた。これはいろいろできてしまうではないですか、と考えた。500部刷ったバンコク版はあっという間に売れてしまったので味をしめ、2号目の沖縄/アリゾナ編を作った。2度やったら、趣味を作品にできる上に、一般流通の本より自分の利幅が大きいということに気がついた。いつも、後からこういうことに気づく。計画性というものはあまりない。なんでもやりながら決めていくし、途中でいろんなことに気がつく。

13年前には「絶対一人で出歩くな」と言われたメキシコシティに何が起きたのか、いつか確認したいと思っていたのだが、このタイミングで実現した理由は、友達のトリバくんが、銀座でやっているTokyo Music Barが、メキシコシティにオープンして、パーティだった。店を開ける前に、何度かメキシコシティを訪れていたトリバくんも、メキシコシティにハマった一人で、「パーティやるけど来ない?」と誘ってくれたのだった。

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