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対談企画 第一回目 高槻市の地域振興を考える

こんにちは

高槻市議会議員の西村ゆみです。

高槻市の教育、福祉、地域振興など、その道の第一線で活躍するプロの方々と高槻市はどうしたらもっとよくなるのか?について対談をしていきます。

いろんな障害を持つ方にも情報が届くよう、文字媒体で読めるnoteや音声はボイシーにて発信をしていきます。

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記念すべき第一回目は、高槻市における地域振興を考えるです。

地域振興とは、地域(地方)が、経済力や人々の意欲を(再び)向上させる、人口を維持する、また増やすためなどに行う諸活動のことです。地域活性化、地域振興、地域づくりとも呼ばれています。(※Weblio国語辞典より抜粋)日本で進行する超高齢化社会と人口減少が引き起こす課題に対して、高槻市はどう施策に取り組んでいくべきなのでしょうか?

大妻女子大学で全国の地域振興プロジェクトや中小企業再生プロジェクトのコンサルタントとしても活躍している群馬大学名誉教授でもあり、大妻女子大学キャリア教育センター教授の寺石雅英語先生にお話を伺ってきました。

プロフィール

埼玉県生まれ。一橋大学商学部、一橋大学大学院商学研究科博士課程をそれぞれ卒業・修了。名古屋商科大学講師・助教授、群馬大学社会情報学部助教授・教授を経て、2011年より現職。この間、郵政研究所、日本資産流動化研究所、建設経済研究所、道路経済研究所等の客員研究官や研究委員、国際ベンチャー企業協議会監事、実践経営学会理事などを歴任。2001年には、国立大学教官として日本で初めてJASDAQ上場企業の社外監査役に就任(株式会社エスイー)。さらに、日本一の店舗数を誇るカラオケチェーン(まねきねこ)の持株会社・株式会社コシダカホールディングスの社外取締役を経て、現在は、世界最大のフィットネスチェーン(Curves)を国際展開する株式会社カーブスホールディングスの社外取締役を務める。全国の地域振興プロジェクトや中小企業再生プロジェクトのコンサルタントとしても活躍中。
専門はファイナンス論、価格決定論、営業心理学、観相統計学。主著に、『現代経営学』(同文舘)、『ベンチャー創造のダイナミクス』(文眞堂)、『ザ・統計学』(ファズボックス)、『金融工学のエッセンス』(ファズボックス)、『留学生の日本就職ガイド』(論創社)、『創造への感知力』(ファズボックス)等がある。

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中核市である高槻市は2022年度、「本当に住みやすい街大賞」にて第5位を受賞しました。(※1)

新快速が停まるJR高槻駅は大阪と京都のどちらの中心部にも行きやすいエリアに位置しながら、医療機関等の高いインフラ設備や、大規模公園をはじめ自然が豊富で、子育て世代も住みやすい環境ですと言われています。大阪のベッドタウンとして人口増加を続けてきた高槻ですが、近年、横ばい傾向にあります。今後、想定される人口減少や高齢化などの対応として今後高槻市に人が集まるために考えるべき地域振興のポイントについて対談しました。

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西村:高槻市で令和3年から令和13年までの10年間に、産業・観光振興ビジョンを掲げています(※2)市長はその中で、高槻市の産業・観光がさらに発展していくために「働きたい、訪れたい、にぎわいあふれる街」を基本理念に掲げ、商業・工業・観光関係者・支援機関・市民党の連携を深め、産業・観光の振興と、にぎわい創出を図って参りますと宣言をされています。

寺石先生:地域振興における街づくりの難しいところは、死の谷、valley of deathがあることです。死の谷とは、新規事業やスタートアップ企業が直面する製品化から事業として発展させる事業化へと進む段階に立ちはだかる障壁のことです。地域振興も同様に、有望なアイデアがあり計画検討段階で威勢よく進むも、実施段階にまで到達せず議論だけで終わってしまうことがほとんどです。

西村:地域振興の案やプロジェクトそのものが、良い悪いかではなく、そもそも実行段階までいかないということですか?

寺石先生:そうです。これまで私は群馬県前橋市の地域振興や温泉地での地域活性化に携わってきました。旅館再生と合わせて街づくりにも携わってきましたが、どうしても成功しません。

<地域再生が成功しないいくつかパターン>

レベル1 地域の人々が地域再生の必要性を感じない
レベル2 必要性は認識しているものの、地域再生プランの選定まで至らない
レベル3 地域再生プランは策定したものの、実行段階に移行できない。
レベル4 実行段階には移行したものの、本格的な実行段階に入る前の助走期間のうちにプロジェクトがフェードアウトしてしまう
レベル5 本格的な実行段階に移行したものの失敗してしまう

レベル5の「本格的な実行段階に移行したけど失敗した」であれば、まだ頑張った、実行したことによる学びがあるからいい。しかしほとんどが、レベル2や3なのです。どれだけ素晴らしいコンセプトやアイデア提案したとしても、そのほとんどはスタートラインに立てていません。これでは100戦100敗になるのは当たり前です。だから、「いかにしたら成功でさせることができるか?」で考えるのではなく、「いかにしたら本格的にスタートさせることができるか?」が大事です。スタートラインに立ってこそ、「いかにしたら成功できるか?」の意味を持ってきます。

西村;なるほど。是が非でもこのアイデアを成功させようといった強いモチベーションなど、様々な立場の関係者が関わる中で醸成するのは難しそうですね。

寺石先生:そうなんです。街づくりとか地域振興とか、自治体や大学、企業、銀行、市議会議員の先生もですが集まって審議会や協議会をつくりますよね?

西村:はい、高槻市にも産業審議会委員があります。

寺石先生:みな集まって検討するのはいいのですが、みな心の中で思っている事は別です。大学は国から予算がおりたらいい、PRができたらいいな、企業は自社が儲かればいいなとか。みんな口では頑張って市をもりあげていきましょうと言うけれど、心の中はそうじゃない。そうなるとみんなフリーライドしようとなってしまう。ただのり精神のため、活動のモチベーションが欠如、組織の一体性が欠如していきます。

西村:組織の一体感ですね!
確かに誰かが号令をかけてみんなをひっぱるようなリーダーがいるのか、いないのかによっても変わりそうです。企業や官僚などは組織やヒエラルキーがしっかりしているのと違い、街づくりは水平なネットワークなイメージがあります。

寺石先生:その通りです。トップマネジメントを頂点とする垂直方向の権限関係や階層関係は街づくりにおいて非常に弱い。結果、通常の組織には備わっているはずのメンバー間の共同体意識や情報共有が有効に機能しにくいのです。

西村:産業振興審議会で関係者が集まり、提言書等をまとめても、そのあと本当に実行するのか?誰がやるのかが課題ですね。先生のお話を聞いていると、おっしゃるように私自身も「高槻市において、最もいい地域振興のものはあるのか?」と考えてしまっていたのですがそもそも違うような気がしてきました。

寺石先生:はい、そんな最善のもの、市にあるわけありません。

西村:先生、言い切りますね(笑)ではどのように考えていくのがいいのでしょうか?

寺石先生:街づくりはエンタメの世界と似ています。つまり「数うちゃあたる」でしかありません。例えば、吉本興業とかエイベックスなど、スカウトをする人は、その人が絶対に当たるか当たらないかは分からないと言います。でも当たらない人は分かる。だから、当たらない人だけ足切りをして、あとは吉本なら全国47都道府県にて存在する小劇場で、1講座500円でみんなに漫才をやらせて、当たった人間、つまり、消費者が選んだ人間と正式契約をする。つまり、小さくかけて当たったらでかくやる、これを「数うちゃあたるモデル」といいます。地域振興も同じです。地域の魅力というのは「良い⇔悪い」「優れている⇔優れていない」という尺度で判断されず、「好き⇔嫌い」「面白い⇔面白くない」で判断をされるからです。

西村:消費者の価値観はかなり多様化していますよね。この商品は面白いから買うとか、韓国が好きだからコスメは韓国製がいいとか。

寺石先生:はい、マーケット感覚を取り入れることが必要だと思います。街づくりは日本企業の衰退とも似ています。昔の日本企業はとにかく理詰めで考えることが得意でした。技術力、組織力、計画力など、他国より優れていたからこそ、強い時代がありました。しかし今の時代、技術力で優れているからこれを買おうという買い方をしません。街づくりに話を戻しますと、高槻市が好きとか、高槻市が面白い!など人の数だけ価値観が存在する中で、我が市において最善のものはありません。だから小さくやって当たれば大きく育てるのです。大学生が出した案などで、10パーセントくらいの確率で成功しそうなものはやってみたらいいのです。

西村:小さく始めて当たったものを大きく伸ばす、数うちゃ当たる理論。
確かに1つのプロジェクトに市の予算をすべてつぎ込みどうなるか分からないものよりも、10個のプロジェクトに分配をして、当たったものを育てるほうが、成功確率が上がりますね。

寺石先生:そうです。あと忘れてはいけないのが、官の依存を期待してはいけない事です。市の予算や補助金が2年3年とつくうちは人が集まってきますが、予算が切れた瞬間に人がいなくなる事態をこれまで見てきました。これは本当におそろしいです。

西村:イージーマネーですよね。依存すると、成功のために何とかして工夫や努力を重ねようとする意欲やエネルギーが大きく低下しますよね。

寺石:ここまでいろいろお伝えしてきましが、結局どうすればいいのか?それは地域振興、街づくりに参加するすべて人と、リスクとリターンを共有するしかないです。成功するとある程度のメリットが関係者にはある、失敗をしたら痛みを伴う。だからこそみんな一生懸命頑張ることができます。隣で見ていても、あいつは絶対裏切らない、だっていくら投資しているからだ!など、関係性ができることが大事です。そのためには、政府のお金だけでなく民間のお金をまぜるしかありません。もちろん、外の力を利用すると、外にのっとられる可能性もあります。だから地元の人間が、外の人間を牛耳れる力をもたなければいけません。機動力が重要なので、高槻市の手動が大事です。市があるスペースを借り切ってその家賃くらいは市がだす。最小限のコストでいろいろやってみることです。

西村:高槻市すごいね、面白いね、移住しようかな、遊びにいこうかなと思ってもらうためには、当たるかもしれない種をまき続けていかないといけないですね。いろんな住民の方々の力を借りて、できる事から小さく始めること。今後、市議会議員として考えていきたいと思います。有難うござい
ました。


<参考文献>
※1 https://www.aruhi-corp.co.jp/cp/town_ranking/kansai/
※2 https://www.city.takatsuki.osaka.jp/soshiki/58/4249.html

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