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対談企画 第9回 高槻の認定子ども園の副園長先生と語る保育現場について

こんにちは

高槻市議会議員の西村ゆみです。

ボイシーでいろんな方と対談をしております。
こちら

発信しました内容、耳が不自由な方にも読んで頂きたいので、noteからも同時に発信しております。
※一部視覚で読みやすいように、表現を訂正しております。

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西村:是枝さん、自己紹介をお願いします。

是枝さん:高槻認定こども園にて副園長を、またJACPA world companyの(以下、JACPAと略)代表を務めています是枝杏奈と申します。JACPAでは、未来に希望が持てる保育業界にしたいという思いから、プロの保育士を育成するための活動と、保育から日本の教育を見直すために職員のメンタルヘルスと子供の発達についての勉強会を開催しています。宜しくお願いします

西村:自己紹介、ありがとうございます。
是枝さんが保育士になったきっかけを教えて頂けますか?

是枝さん:きっかけは、私が保育園児の時、担任の先生が大好きだったことや、小さい子供たちの面倒を見るのも大好きだったので、そこからずっと保育士に憧れていました。本格的に目指したのは、私が高校生の時にいとこが事故で亡くなってしまったからです。
いとこが1歳の時、棒を持って歩いていたら、こけて、喉に棒がはいってしまい動脈を切って亡くなるというすごく悲しい出来事がありました。その時に留学に行くか、保育士になるのを迷っていたのですが、こういう子を作らないために、またいとこの死を無駄にしたくない、お母さんたちにも命の大切さを伝えていきたいと思いもあって保育士を本格的に目指すようになりました。

西村:是枝さんは、24年間ずっと保育現場で働かれていますよね?昔と今と何か保育現場に大きな変化はありますか?

是枝さん:そうですね・・・
時代の流れと共に、少子化で保育園がいらなくなっていくのでは?と言われている一方で、保育園に入れない待機児童の問題が増えているかなと思います。また、不適切保育も問題になっていますよね・・
この24年間、保育士が学ぶ専門的な知識、学ぶ環境など、非常に乏しいのが現状です。もちろん国は、いろいろキャリアアップ研修とか工夫をしてくれていますが、「現場に見合ったもの」という点では課題が多いと感じます。

西村:保育士が学ぶ環境が乏しいところをもう少し詳しく教えて頂けますか?

是枝さん:はい。例えば短大を卒業したら20歳で現場を任され担任をもたされる方もいます。先輩保育士さんを見ながら頑張っていく中で、職員同士の人間関係に病んで辞めていく先生もいます。保育士になりたいとせっかく夢をもって入ってきた若者が、夢が崩れていく。そんな現状を見たときにすごく残念に感じます。いい環境の循環を作っていくにはどうしたらいいのか?それには保育士さんのメンタルヘルスケアがすごく大事になってきます。心に余裕がある保育士さんでないと子供も心も体も健やかに育つのはたどり着かないと思います。
大人の人間関係は、保育士同士で投げかける言葉に影響し、その言葉を子供たちは常日頃しっかりと聞いています。保育士の置かれている状況が、子供の育成にすごく影響してくるのではないでしょうか?

西村:是枝さんの保育に対する熱い思いやモチベーション、その強さはどこからきていますか?

是枝さん:うーん、もう見ててもどかしいからなのかもしれません。みんな目指しているところは絶対一緒なのに、なぜかお互いが敵になってしまう。子供の自立に向けてみんな一生懸命しているのに、保育のやり方が違っていたりとかで相手を否定してしまう。特に、メソッドをもっている園などは、独自で勉強面や運動面を重視していることがありますが、遊びの中から学ぶを大切にしてきた園からすると、机に座って勉強している保育を批判します。その逆ももちろんあります。
だけど大切なことはそこではないと思います。
モンティソーリーとか、シュタイナーとか、ヨコミネ式とか、いろんなものがありますが、どれもできる人、結果を出せる人は何をしても結果をだせます。一番最初にやってきた人のやり方がよくて、それがメソッドになっているからです。でも本当に、そのメソッドの根底を理解して、その保育ができる人はなかなかいないのかなと。子供に寄り添っているように見えて、自己満足な保育をしているような保育士さんも残念ながらいます。時代の流れによっていろんな価値観が変わってきている中で、「これから多様性を受け入れないといけない」と保育士さんたちは口では言っているますが、自分は受け入れられていないため、職員間の意見を尊重できていない。人間関係が崩れていき、結果的に離職します。いろんな施設で発生している保育士さん不足に繋がっている問題ではないかと思います。

西村:子供たちの多様性も、先生たちの多様性も受け入れないといけないですよね。

是枝さん:はい。チームワークが成り立っていない場所では離職が常に発生してしまいます。どれだけいい人材が入社しても、バケツの底に穴があいている状況では抜けていってしまいます。まずはバケツの底を修復して土台を作る。そのためには相手を変えるのではなく、それぞれが自分はどうか?と自分を振り返っていく、見つめていく必要があります。

西村:ありがとうございます。

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西村:保育現場のことで先生たちのことをお話下さいましたが、子供たちの様子や状況はどうですか?私が調べた中では、近年、保育園には障がい児が増えているような印象を受けています。

是枝さん:確かに、発達障がいの子供たちは増えています。ですが、大切なことは大人が子供の興味を広げる環境を整えてあげる事です。
「グレーな子」とか、「でこぼこ」とか、そんな呼ばれ方をしているのは残念です。実際診断されたりするとお母さんたち落ち込んだりしますが、人と比べる必要はありません。特性をもった子たちが生きやすくなる社会をつくっていくためには教育が大人も子供も大切です。大人側の考え方や思いとか、かける言葉によって子供たちが変わってきます。自閉症の子といっても100人いたらみんなそれぞれ個性は違います。同じ子は一人もいません。私たち保育士は、誰かの子と比べることはしておらず、そのお子さんの4月からこれまでを振り返った時にどれくらい成長しているのか?を見ています。見ると必ず!!!!成長しています。

西村:お母さんたちから相談される事多いと思いますがどうやってお母さんたちと杏奈さんは関わっていますか?

是枝さん:最初は、「うちの子いろいろこうで」や、入園前の見学前の地点で、「療育に通っているんですけど」と相談を受けますが、「全然大丈夫ですよ」と言ってます。言うといつも、「えっ」と驚かれ安心されます。
一人のプロの保育士として、これまでいろんな症例のお子さんを見てきました!お医者さんから「この子は一生歩けません」と、どこからの保育園でも断られているお子さんが、私の目の前ではしっかりご飯食べれるようになったり、勉強できるようになったりをこれまでたくさん見てきました。
子供の可能性無限大と言いますが本当にその通りです。
環境とその子に関わる大人の視点とか視座とかを変えるだけで環境も変わってくるので、環境さえ作ってあげれば子供はできることだったらどんどん手を伸ばしてチャレンジしていきます。それが自学自習となり、自分でできるから楽しいとなり、やったら上手になり、上手になったら飽きるけど、またこちらが新しい環境用意すると、手が届くところだったらまたやり始めます。手が届かないところであれば諦めてしまいますが。お母さんを安心させるというよりは、現状をちゃんとお話してそこの課題を一緒に考えていく姿勢が大事なのではないかと思います。

西村:環境を用意する、大人側の視点でどういう風に醸成させたらいいのでしょうか?

是枝さん:私も過去に療育の施設で働いたことがあります。自閉症のお子さんが紙をみたら破るから本をとれないようにしていたり、カーテンをひっぱるお子さんがきたらカーテンをひっぱられないようにずっとあげておくとか、最初はいいと思いますが、その子はカーテンを見つけたらひっぱります。生きていくうえですごく困ることなので、こちら側もたくさん失敗させて、これはよくないと伝えていけば伝わるんです。トイレにものを投げ込む子も、投げ込んだおもちゃを一緒にだして洗って、帰りたそうにしていましたが、次の日また投げて私が後ろで立って見ているとびくっとしたりして、あぁダメなことだと分かっているんだと気付いたことがあります。だから1か月したらもうやらなくなるんです。

西村:まさに保育力が求められますね

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西村:今までのお話を聞いていると、先生たちの教育と子供たちの環境というところの両方が大事だと分かりました。今後、どういうことをしていくと保育の現場はよくなっていくと思いますか?

是枝さん:それぞれの園がメソッドを持つのはいいと思います。保護者も選択できます。しかしそこで、働く人の環境を整えるのは、施設庁とか国とか行政とか、もっと考えていかないといけません。保育士は未来に可能性をもつ子供たちの命を預かっています。子供には臨界期があります。幼児期は上顎の発達、脳は90%できあがると言われています。教育できる環境を作る側の法整備は国とか行政が力をいれてやってほしいです。施設単位ですと、職員の育成、しっかり学んで本気で子供中心でできるプロとしての自覚と自立が必要ではないかと思います。地域も巻き込んで、多様性を受け入れられる環境を作っていかないといけません。保育園だと男の子は青とか、女の子はピンクとか、決まってしまうこともあります。もっと選択していい、そういう環境づくりは大切です。

西村:そのために何が必要ですか?

是枝さん:自立したプロの保育士の育成が必要です。現場を知らない人の講演を聞くのではなく、現場を知っている人同士が交わえる場所、コミュニティがあったらいいなぁと思います。保育園、幼稚園、子ども園と枠をこえてみんなで集まって本当の主体性とは何か?語り合えたり、多様性とはどういうものが受け入れられていないものか?など、現場だけでなく国とか行政も含めたコミュニティがあればいいなと思って、JACPAを作ったんです。
保育の専門的なことだけでなく、まずは自分と向き合う、自分のスキルを学ぶスキルを身に着ける。保育の歴史を知ることだったり、子供の発達、障がい児のこと、施設のこととか、施設の建て方だったり。保育士は専門職なのでどうしても視野が狭くなってしまいます。異業種の人と関わることで、もっと視野を広げてほしい。いろんな人たちと繋がっていけるコミュニティを作りたい。自分のまわりからでも環境を作っていけたらいいなと思っています。

西村:園をこえて、民間も行政も一緒に高槻市の皆さんと横のつながりを持つこと大事ですね。

是枝さん:保護者地域を巻き込んで「みんなで育てる」を合言葉に園を超えた対話ができるといいなぁと思っています。

西村:優しい街につながる視点を今日はたくさん伺いました。キーワードは「横の繋がり」私にできることを考えていきたいと思います。
今日はありがとうございました。

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