ISTQB CTFL2018年度版をちょっと紹介

突然ですが、ソフトウェアテストの資格認定試験であるJSTQBのFL試験を知っていますか? ソフトウェア開発をするときのテストフェーズに関する基本的な知識に関する資格ですが、テスト担当者だけでなく、ソフトウェアテストに関わる人全部(開発者、デザイナー、プロジェクトマネージャー、運用関係者、システムに求められる要求を出す利用者)が最低限知っておくべきテストの基礎知識が理解できていることを認定する資格です。テストに関する他の資格もたくさんありますが、FL試験はその中でもいちばん初級レベルの資格です。

このnoteを書いている今日現在では、日本でこの試験を受験したは28,846人いて、合格して認定資格を取得した人は16,252人います。

この試験は、日本だけでなく、世界100カ国程度の国々で行われていて、現時点では、約60万人が資格を取得しています。日本ではこの試験をJSTQB FL試験と言いますが、JSTQBはISTQBというグローバルな組織の日本支部です。JSTQB同様、たとえばイギリスならUKTB、アメリカならASTQBといった感じで世界各国にISTQBの支部があります。(写真はGAという、ISTQBの加盟組織が集まって色々なことを決める会議の様子です。)

この試験のベースとなるISTQB CTFLシラバスは、今は2011年に発行されたバージョン(これはマイナーバージョンアップなので、おおもとは2005年に作られたもの)を使っていますが、今年の6月に、初めてのメジャーバージョンアップとなる2018年度版シラバスがリリースされました。

英語版のダウンロード

私はJSTQBにて技術委員をしていますが、今回、この2018年度版シラバスの翻訳リーダーをしていて、絶賛翻訳中です。

日本語版を1日でも早くリリースするつもりで頑張っていますが、まずはちょっと一言で言うと何が変わっているか書いちゃいます。

CTFL2018 in a Nutshell

今回のシラバスの基本的なコンセプトは2011年度と変わっていません。不変だと思います。ただ、変わったこともあるのでどんなことが変わったか書いておきます。ベースはISTQBのシラバスに書いてあることなので、以降の変更点の見出しもシラバスに書かれているそのままの英語を使います。

Fewer K1 Learning Objectives (LO) in general

K1の学習の目的が減っています。いままでは27でしたが 15 になっています。

Less focus on chapter 5 Test Management,

いままで5章のテストマネジメントでは24の学習の目的がありましたが 15 になっています。たとえば構成管理の説明がなくなったりしています。

More emphasis on review, a K3 LO has been added to chapter 3

3章はレビューに関する章ですが、だいぶボリュームが増えました。いままではプロセスのことしか書いてませんでしたが、レビューテクニックの種類についてちゃんと記載するようになりました。たとえばパースペクティブベースドリーディング、ロールベースドレビュー、シナリオベースドレビューといった方法を紹介していっます。また、静的解析について、特にツールに関しては他のシラバスで扱うということで、無くなりました。

 More emphasis on test techniques in chapter 4

テスト技法について書かれている4章も構成がかなり変わりました。テスト開発プロセスとして、テスト条件の識別からテストケース実装するところまでの解説は、1章にマージされ、4章からはなくなりました。その代わり、技法の説明が充実しています。FLで扱うカバレッジ基準も明確に記載されるようになりました。いくつかを具体的に書いちゃっときます。

同値分割

有効同値と無効同値についてちゃんと書かれるようになり、無効同値クラスは独立させてテストしないとある故障が他の故障をマスクしちゃうよ、なんてことがちゃんと記載されるようになりました。

境界値

2値の境界値分析が例も入れて具体的にどう値を取るかが記載されるようになりました。またポールジョーゲンセンの3値の境界値についてもちゃんと記載されています。

デシジョンテーブル

条件部分はブール値か離散値でとるってことや、簡単化(圧縮とか言う人もいますが、JSTQBでは簡単化と呼びます。英語だとcollapsedです)の解説がちゃんとされていたり、表記のルールなんかも書かれるようになりました。

状態遷移

状態遷移モデルのガード条件やアクションについて書かれていたり、グラフでは無効遷移は書かないのが通常だから状態遷移表を使うってことがちゃんと説明されています。カバレッジ基準に関してはTAを参照してね、って感じでS0が対象であることがわかるようになりました。

Agile is mentioned in the content of the syllabus.

今時の開発事例で説明をするってことで、なにかしら、例えがでるときにアジャイルの例が多くなりました。例えば2章の開発プロセスへの言及部分では、スクラムやカンバンについての紹介もあります。あとIoTの例も増えました。ただ、学習の目的にはアジャイルやIoTは含まれていません。

White-box techniques are downgraded.

ホワイトボックステストについてはかなりボリュームが減りました。TTAなど他のシラバスに任せるようにするってことになったためです。

K4 and K3 removed – they will be covered in other syllabi.

全部ではないですがK4とK3が減りました。K4はゼロになったと思います。レビューの所のように新しいK3もあるのでバランスは取れてると思います。

NewTerm

用語がいくつか変わっています。結構大きいことだとおもうのは、インシデントと言う用語が出てこなくなりました。インシデントと同等のレベルの言葉としては「不正(anomaly)」がたまに使われていますが、基本的にはエラー、故障、欠陥です。もう一つ大きいのは、テスト設計技法はテスト技法と呼ぶようになりました。なんでだろうと思ってFLのリーダのクラウスに会った時に聞いたら、テスト分析でも使うから設計技法と呼ぶのは誤解を招くから、ってことです。ふーん、って感じですが。

あとは、テストプロセスの定義がちょっと変わりました。「テスト分析」と「テスト設計」「テスト実装」「テスト実行」は完全に別のものとして扱われるようになりました。「テスト計画とコントロール」も分離されました。また、「終了基準の評価とレポート」と「終了作業」がマージされて「Test completion」となりました。

私が読んでていいなと思ったこと

テストとQAが違うと言うことを明言している

これは短い文章ですがわかりやすくちゃんと書かれていてとてもよいです。

4章のテスト技法が詳しく解説されている

今までは具体的なことが書かれていなくてシラバスだけでは勉強にならなかったけど、これならシラバスだけでも最低限のことはわかるので安心です。

リファレンスが新しくなっている

シラバスのベースになる参考文献を新しくしました。テストの標準であるIEEE 829は1998年の標準でしたが(古い!)、最新の標準であるISO/IEC/IEEE 29119に置き換わりました。 品質の標準であるISO 9126もISO/IEC 25010に置き換わりました。レビューの標準もIEEE 1028が ISO/IEC 20246になり、やっと全て2010年以降に発行されたものになりました。

最後に

英語になりますがレックスがインタビュー形式で新しいシラバスについてコメントしている動画がありますのでリンクしておきます。JSTQBは、2005年にレックスをJaSSTの基調講演に招待した時にレックスから「資格を日本でもやらないか?」って声をかけられたところから始まりました。懐かしい!

なるべく早く皆さんの手元に日本語版をお届けするように頑張っていますが、英語であればすでに読めるので、語学の勉強がてら読んでみるのもいいと思いますよー。ではでは。

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Tsuyoshi Yumoto

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