時は不確かな存在だ.しかし、確実に歩みを進める.一歩一歩、僕らの意識無意識に関わらず同じ歩幅でゆっくりと何も考えず前進する.ただ僕はその感覚に奇妙さを覚えていた.僕だけがカメラによって瞬間の存在になったかのように.

　世界は何も考えない.僕の苦悩とは別に,世界は回り続ける.ここでない世界のどこかでは喜びのあまりに声をあげる人々もいれば悲嘆に暮れ咽び泣く人もいる.世界は自転する.人々の希望と絶望を内に秘めて,この瞬間も廻る.

 　言葉は何も産まない.言葉は既に説明し尽くされている.それなら僕は今,何を生んでいるのか.言葉は編まれることで受肉する.言葉よ,人ととも共にあれ.かくて言葉は言葉たらん.

　制度の愚かしさは人間の愚かしさだ.しかし人類の愚かしさではない.政治家の腐敗が政治の腐敗でないことと同じように.僕らは後世に何を残せるのか.醜い制度か、美しい制度か

　人間の美しさは心の美しさ.人間の醜さは,心の美しさ.全ては心から発露される.なら心はなんだ.心は常に制度と経験に依っている.

　人よ,醜くあれ.それ即ち,美しさである.