2.国風文化
浄土の信仰
摂関期の仏教は、天台・真言の2宗が圧倒的な勢力を持ち、祈祷を通じて現世の利益を求める貴族と強く結びついた。神仏習合の風もますます盛んで、在来の神々を仏と結びつける本地垂迹説❶も生まれた。
また、怨霊や疫病の災厄を逃れようとする御霊信仰❷も盛んであった。
現世利益を求める様々な信仰と並んで、来世での幸福を説いて現世の不安から逃れようとする浄土教が新たに流行してきた。浄土教は、阿弥陀仏を信仰し、来世において極楽浄土に往生することを願う教えである。その思想は早くから伝わっていたが、10世紀半ばに空也が京都の市中でこれを説き、少し遅れて源信(恵信僧都)が「往生要集」を表して念仏往生の教えを説くと、末法思想❸によって一層強められた。
盗賊や暴力が横行し、災厄がしきりに起こった世情が、仏教の説く末法の世の姿によく当てはまると考えられ、来世への望みが一層強まった。そして、慶滋康胤の「日本往生極楽記」を始め、めでたく往生を遂げたと信じられた人々の伝記を集めた往生伝が作られた。