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初めてスピッツに会った日

10代最後の夏、スピッツに出会った。

私の18.19の頃は散々なもので、思うように身体が動かず、同級生達が各々の進路を選び、モラトリアムを楽しむ中、1人苦しんでいた。
その苦しみから逃れる1つの手段がスピッツの曲達だった。


私はとある漫画が大好きで、この漫画をもっと深く知るために過去の作者のインタビュー記事を漁っていた。その中で「主人公のテーマソングはスピッツの夜を駆ける」という一文を目にした。

忘れもしない、虫の声がまだ聴こえる、暑さを残した夏の日の夜。私はベッドの上でイヤホンを着けて「夜を駆ける」を聴いた。

聴いている間の記憶は無い。ただ聴き終わった後、涙が止まらなかった。


私の身体を動かなくしている鉛を溶かして、歌が身体に入り込んでくるような、自分がスっと軽くなり、ここには居ないような、そんな感覚に陥った。

私の中にある苦しみ辛さを涙で内から外に出してくれているようだった。


あれ以上の強い体験は人生に無い。



それから彼らの曲に魅せられるまではそう時間はかからなかった。


さわって・変わっての世界観が知りたくて天神まで行った日。
バイトの先輩から結婚報告を受けてスピカを流しながら帰った夜の街。
上京して1人の部屋で聴いた春の歌。

初めは哀しみだけだった。
だけどいつからか様々な感情を共有するようになった。

私の人生に、スピッツが囁かに彩りをつけてくれるようになった。



そして昨日

私は初めてスピッツに会った。

様々なアーティストのライブに行ったことがある。彼らも勿論最高の音楽体験をさせてくれた。

でも、スピッツにしかない「なにか」がそこにはあった。

私の人生と結びつき過ぎた彼らの曲は、またもや私の身体に入り込んだ。

涙が止まらなかった。


知らない曲も、あった。


でも、知っていた。


好きな曲が流れた。


辛かった。



色んな体験を共にしたそれらは、感情をぐちゃぐちゃに掻き混ぜ、涙になって流れた。



ただ私の人生の長さを感じた。

それだけ。





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