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こわくてやさしいハンバートハンバートについて

ゴールデンウィークも終盤になったこどもの日の深夜2時。オフィスから帰宅するなり、いそいそとウイスキーをソーダで割り、それを片手で持ったままリビングにあるキャンプ用の椅子に深く腰掛け、テレビをつけて、録画しておいたある番組を一言一句聞き逃すまいとみる。ちょっと泣きそうになりながら。

ハンバートハンバートという大好きなミュージシャンが、NHKに出たのだ。

ハンバートハンバートは、佐藤良成(りょうせい)と佐野遊穂(ゆうほ)からなる男女デュオ。曲を作るのは主に良成さんで、主に歌うのが遊穂さんだ。2人は、3人の子を持つ夫婦でもある。

こんなことを言うといやらしいのだけど(知り合ったときよりずっとずっと有名になった人との関係性を嫌味なく他人に説明する筆力が欲しい)、彼らと、彼らのマネージャーさんとは、ちょっとした付き合いがある。

10年前、一緒に音楽のイベントをやっていた友人(すごくセンスがいい)が「めちゃくちゃいいから聴いたほうがいい。ていうか、呼ぶべき」とすすめてくれて、ライブを観に行った。心斎橋のクラブクアトロだったと思う。たしかに「めちゃくちゃよかった」ので、お願いしてイベントに出てもらった。

お三方はそのことに必要以上の恩義を感じてくれていて、今でもライブに誘ってくれたり、新譜を送ってくれたりする。ほんとうに律儀な人たちだなと思うし、正直、めちゃくちゃうれしい。

そんな人たちがNHKの有名な番組に出て、ナイツと対談しているのだ。これをニンマリしながらみないでいられようか。

ハンバートハンバートは「こわい」

「夫婦デュオ? どうせあれでしょ、日常についてほんわか歌うんでしょ」と思ったあなた。ハンバートハンバートの雰囲気・曲調にダマされてはいけない。

ハンバートハンバートの曲はのんびり聴けるが、ボーッとさせてはくれない。

たとえば番組中でも触れられた『ひかり』という曲は、こんな歌い出しではじまる。

練炭ひとつ買ってきて
車の窓目止めして
あと睡眠薬を飲んだら

そうなるはずだったのに
気がついたら生きている
白い天井に蛍光灯

 痛くも痒くも寒くもないけど
指ひとつ動かせないのだ
意識はこんなにちゃんとしてるのに
しゃべれないし匂いもないのだ

 『ひかり』

ときに吃音の苦しみを歌い。

あたまにきても
ことばがでない
く く く くたばれ
これじゃ勝てないね

『ぼくのお日さま』

ときに、(ぼくのような)わかった気になって何もわかっていない大人を批判する。

みんなが普通に使っている
そのコトバの意味がわからない
ねえ、オリジナリティって?
ねえ、クリエイティブって?
わからないくせに使うなよ

 『国語』

とにかく皮肉っぽくて、ときどきこわい。そこがいい。

ハンバートハンバートは「やさしい」

一方、雰囲気通りの歌をうたわせても天下一品で、そこもまたずるい。

この曲なんか、PVのよさも相まって聴くたび泣きそうになる。

よろこびにあふれた曲も。

「見た目通り」、カバーも素晴らしい。

ああ、どれも本当にいいなあ。

以上、10年聴いてきたぼくがすすめるハンバートハンバートでした。サラッと書こうと思ったのに、好き過ぎて、選曲含め2時間ぐらいかかってしまった。

あ、そうそう、今年はフジロックにも出るみたいです! 発表が早かったのでステージが大きいんじゃないかと期待しています。フィールドオブヘブンで聴きたい! そしたらたぶん、泣く。

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