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赤い電車に、乗らなかった

くるりが2005年に発表した『赤い電車』という曲がある。

この曲は、京浜急行電鉄のテーマソングだ。東京の玄関口品川と、まぐろの美味しい三浦半島をつなぐ京急。神奈川の海沿いを南に蛇行しながらくだっていく赤い姿がかっこいい。

何しろくるりが好きなので、発売当時滋賀県に住んでいたぼくは「東京に行ったら、京急っていうやつに乗る」と思っていたし、東京に住むいまも、路線を選べるときはできるだけ京急線を使うことにしている。とりわけ大事なのが、「羽田から出るとき」だ。

赤い電車は羽田から 僕らを乗せてひとっ飛び

と歌われているこの曲を、羽田から都内に移動するときに聞かない手はない。

しかし今日、ぼくはこのマイルールをやぶってしまう。

沖縄から戻り、羽田空港に降り立ったのが16時頃。ぼくは、同行していた副社長と土日の動きについて確認し分かれたあと、秋葉原経由で神保町に戻るべく、電車乗り場へ向かった。

選択肢はふたつ。京急線で品川まで行って山手線に乗り換えるか、東京モノレールで浜松町まで行き、山手線に乗り換えるか、だ。

普段なら迷わず「赤い電車」なのだけど、この日は「沖縄から帰るまでに読み切る」と決めていた『裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち』を読みながらの移動で、これがいけなかった(本はすごく興味深い内容なのでおすすめです)。

歩くたび目線は上げているものの、心は沖縄の夜の街。ルーティンをはずしてしまったと気付いたときにはもう、電車が来ていた。しぶしぶ東京モノレールに乗り込み、人もまばらな社内の進行方向右側の窓を向く席に座る。

いきさつは不本意だったけど、金曜夕方羽田発の東京モノレールはすごくよかった。

大きな窓に、しずかな東京湾の紺色と、晴天の青が広がる。オリンピックに向けてなのか、未だ開発の進む東京の湾岸は活気にあふれていて、白いタオルを首から下げた職人たちが、汗だくだけどちょっと誇らしげな顔で今週の成果を眺めている。はじめて日本に来た人に、見て欲しい光景だと思った。

決めごとも大事だけど、たまに外すとそれはそれでいいことありますよね。