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説明上手な歯医者さんと『ディストラクション・ベイビーズ』

歯医者が嫌いでした。こどものころから虫歯になりやすい体質だったり、前歯全部差し歯にする(高校の球技大会で折れた)大手術を受けたことがあったりで普通の人より多くの時間を歯医者で過ごしてきた人生だと思うのですが、いっこうに慣れませんでした。

上の文がすべて過去形なのにはワケがあります。いま、歯医者嫌いを克服しつつあるからです。いま通っている歯医者さんには、あまり「こわい」という感情を持ちません。もちろん何度も行くのめんどくさいなとか、あの匂いが嫌なんだとなとかは思うのですが、恐怖までは感じない。なぜそんなに安心して治療を受けられるかというと、説明してくれるからなんですよね。あなたの虫歯はどこにどれぐらいの深さで出来ていて、その治療にはAとBの選択肢があって、今回Aをおすすめしたいのですが、いいでしょうか?という感じで。

そう。「わからない」は「こわい」んです。

そういう意味でつい先日観た映画『ディストラクション・ベイビーズ』は、超こわい映画でした。柳楽優弥さん演じる主人公が、ただひたすらなんの恨みもない道行く人に理不尽な暴力を振るっていく物語なんですが、共感できる登場人物が誰もいません。
(実話ベースというのもおそろしい)

なぜ殴るのか、なぜそこで調子にのるのか、なぜそんな嘘がつけるのか。ぜんぜんぜんぜんわからない。なのにおもしろい。柳楽優弥さんの怪演はもちろん、菅田将暉さんのクズっぷりもひかる秀作でした。あと、小松菜奈さんはクズ役をやってもうつくしい。

つい最近Amazonプライムビデオにも追加されたので、ぜひご覧になってみてください。