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ウィンドウショッピングはもうこりごり

最近はあまり聴かなくなった気がしますが、「ウィンドウショッピング」という言葉があります。もちろん窓を買いに行くことではなくて、ショーウィンドウに飾られた品物を見て回り、情報収集をしたり、それ自体を楽しむ行為のことです。ふつうの「ショップピング」との違いは「買わない」こと。お金がなくてもたのしめる時間の使い方として、昔はよく女性の「趣味」の欄に登場していました。(最近は「情報収集」をネットでするので、この言葉の出現頻度が下がっているのかもしれません)

ぼくはこの4ヶ月ほど、ネットでずっとウィンドウショッピングをしていました。誰に見せるでもない「欲しいものリスト」に、ただただ買いたいものを入れて行く作業。それはあくまでいつか「買う」ための行為であり、それ自体をたのしむような気持ちにはなれませんでした。

だって、本当にお金がなかったから。

6月に独立をすると決め、前職の関係者を中心にその旨を伝えて回っているころ、3人に1人ぐらいの割合で「仕事をくれそうな人には、独立することをいちはやく伝えておいたほうがいいよ」というアドバイスを受けました。あんまり言われるのでもちろん頭の片隅にはあったのですが、「そりゃその方がいいに決まってるよね」程度の認識でその意味を深く考えることなく過ごしていました。後にそれが、死活問題になるとも知らず……。

結論から言うと、独立することを公にしてから4ヶ月の間、ぼくの収入はほぼゼロでした。

「納品月〆翌末払い」という言葉をご存知でしょうか? ぼくが経験してきた広告・出版業界では割と一般的な言葉で、「お代金は、仕事を完了してもらった月の翌月の末日にお支払いします」という意味です。たとえば8月1日に納品した仕事の代金は、9月30日に振り込まれることになります。こうやってペースをまもることで、経理処理をわかりやすくしているわけですね。

「はらう側」としてこのシステムの内側にいたにもかかわらず「もらう側」としての理解が足りなかったぼくの身に起きたのはこんな事態でした。

6月6日
独立宣言をみてFacebookやTwitterで「お仕事したいです!」といったリプライをくれた方々に速攻でDMを送る。しないさせない、社交辞令!

6月中旬
各所で打ち合わせがスタートするも、実績がないためなかなか話は具体化しない。

7月初旬
各社担当者が社内調整がんばってくださって、正式な発注がぽつぽつときはじめる。

7月下旬
具体的な案件の打ち合わせ。うれしい。たのしい。ありがたい!

8月初旬
取材! 取材! 取材!

8月下旬
納品! 納品! 納品!←納品月〆

9月29日(30日が土曜日だったので前倒し)
8月〆分のお代金お支払い←翌末払い

という、「約束されたタイムラグ」が発生することとなったのです。ばっちり想定できたよね、これ。我アホ也。

正直貯金ぜんぜんなかったので、限度額いっぱいまでカードつかって、auのキャリア決済もめっちゃ使って、メルカリで大学生のときに買ったモンクレールのダウンジャケットとか売って、(身内にお金を借りて)、なんとか乗り切りました。気を使って短納期の仕事を振ってくださる人もいたりして……。ほんと、人のやさしさが身に染みる4ヶ月間でした。

「独立初任給」をもらった先週金曜日は、街がキラキラして見えました。あれもこれも、買おうと思えば買える喜びったらもう! 「この街はぼくのもの!」まさにそんな気持ち。

14年前、地元のマクドナルドでもらった初めてのバイト代3万円を持ってCDショップに行き「アルバム10枚買えるとかヤバすぎ!!」とテンションのあがったあの18歳のときの気持ちを思い出しました。そういやくるりの『図鑑』を買ったのもそのときだったなあ。

解放感は素晴らしかったですが、もうウィンドウショッピングはこりごりです。ここからきちっと稼いでいけるよう、がんばりたいと思います。押忍。