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甲斐みのりさんの生き方が素敵だった

甲斐みのりさんと渋谷直角さんのトークイベント(@手紙舎)に行った。

甲斐みのりさんのことは実はよく知らなくて「手土産特集」とかの雑誌でよく出ている方だなーくらいの認識だったけれど、初めてちゃんと話を聞いてみたら思っていたよりもずっと熱い人だった。トークイベントの中でも言われていたけれど、いわゆる「暮らし系」みたいな人(素敵な暮らしを作る素敵なものやライフスタイルを紹介するような人という認識で使ってる)と甲斐みのりさんは全然違った。

旅に行ったらその土地のものをとにかく食べまくるそうだ。それは「楽しむ」というよりもストイックという言葉が似合う気がした。「自然体で素敵な暮らしをしています」とかでは全くない。自分の好奇心や「好き」のための努力が尋常ではなかった。

一番感動したのは、甲斐みのりさんが言っていたのは、「私の本は正解を伝える本ではない」ということ。例えば今回の新刊『アイスの旅』はアイスがテーマだけど、「アイスならこれを食べれば間違いない!」ということを言いたいわけではないということ。

食べ物や旅先の紹介で「これを押さえれば間違いない!」という紹介の仕方をするようなものは信用できないと私は考えている。そういう扇動の仕方はわかりやすいけれど、そこには作り手側の都合、嘘がある気がする。人によって、何がいいかは違うはずだし、それは自分で考えないとわからないものだと思っているから。

甲斐みのりさんは、「自分が何が好きかを知るために、色々なことを経験することが大事」と言っていた。その時は食べ物の話だったので、「経験食」という言葉を使われていた。甲斐みのりさんが話されていたのは、「自分の価値観でものを見ること」の大切さで、「あぁこの人はとても誠実な人なんだな」と思いそこにとても共感した。自分が熱狂的に好きなことを紹介しながらも、それを押し付けない姿勢でいることを両立している人って、意外と少ない気がする。

トーク中は甲斐みのりさんが全国の色々なアイスを紹介されていて、それももちろん面白かったけれど、私はアイス以上になくて甲斐みのりさんの生き方考え方哲学みたいなものにいたく感動した。甲斐みのりさんのことを知って良かったと思った。

他に心に残った言葉は、「嫌いを自分の人生から切り離して生きる」ということ。批判に時間を割くことは昔から無駄だと思っていたけれど、最近それだけではなく、自分が合わないことや嫌なことに無理して(人の目線を気にして)合わせることはもうやめようと思っていた頃だったので、心に響いた。

あとは、「いわゆるグルメじゃなくても、地元の人が作ったものを美味しいと思う自分を作ってきた」というようなことも言われていて、「自分を作ってきた」と言い切るところにグッときた。私はお店やお菓子を選ぶ時、パッケージやデザイン、それがどういう人によってどういう風に作られたかみたいなストーリーを味と同じくらい大事だと思っている。そういうことをあまり重要視しない人にとっては、馬鹿らしいことなのかもしれないけれど、私は味だけでなくて全体のストーリーや雰囲気も含めて好きになりたいと思っている人なので、そういう自分でいていいんだ、そういう自分が好きな自分を「作って」いいんだ、と言ってもらえた気がした。

このイベントに行く前に、甲斐みのりさんのエッセイ『ジャーナル』という本を友達に借りて読んでいた。この『ジャーナル』は甲斐みのりさんが連載していたエッセイをそのまま1冊にまとめた本。ここに綴られている言葉がすごく心地よいというか水が合う感じがしていたので、イベントで実際のご本人のお話を聞いて、もっと好きになれて良かった。『ジャーナル』は本当に日常が綴られているだけのエッセイなのだけど、その目線や言葉の一つ一つが掛け替えのない嘘のない言葉で(少なくとも私にはそう感じられた)、今の私が読むべき言葉だと感じられるものがあった。初めて雨宮まみさんのエッセイを読んだ時と同じくらい、この本との出会いは感動だった。

私にとって本はビジネス書や自己啓発書のようにわかりやすい答えがあるかではない。何も解決していなくても、その時生きてる人の言葉が他の人の心を救う時が確かにあると改めて思った。

ここから先は余談。最近家の本棚にある本をひたすら読み返すのがブームで、いま村上春樹を読み返している。『羊を巡る冒険』『国境の南、太陽の西』『ねじまき鳥クロニクル』ときて『1Q84』が今私のバッグの中に入っている。梅雨で気分が鬱々するからか、最近本を読んでいる時間がシンプルに幸せすぎて(特に村上春樹は長いからなかなか終わらなくて良い)、結局好きな本を読んでいる時が私は一番幸せで自分にとって最上級の幸せは小さい頃からずっと隣にある読書だなぁと思った(メーテルリンクの青い鳥のような話)。





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