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TUNIC:良くできたメタ構造と崩壊したゲーム

みなさん、こんにちは。いかがお過ごしでしょうか。今年も残り二ヶ月ほどという噂が巷で流行っていますが、自分は信じることができません。たぶん虚偽です。

最近のゲームプレイはというと、Starfieldを遊ぶために加入したゲーパスのタイトルを消化する毎日を送っています。Potion Craft: Alchemist Simulator(途中で挫折)やCocoonなんかをプレイしました。そんなこんなで今回感想を書くのはゲーパスのラインナップにある「TUNIC」です。Steamでは圧倒的好評を獲得しており、何かと評判なタイトルです。

それではお付き合いください。

メタ構造のあるゲームは面白い

TUNICの感想に入る前に、メタ構造のあるゲームについて考えます。自分の中でメタ構造のあるゲームというのは、ゲーム本体に対してそれより上位のメタ的レイヤーの情報を活かして、ゲーム本体を遊ぶゲームと考えています(そもそもゲームというコンテンツがプレイヤーというメタ構造があるんですが、それは置いておいて……)。例を挙げるとInscryptionなんかが分かりやすいです。Inscryptionは本体であるカードゲームとメタ的レイヤーである山小屋の探索を交互にすることでゲームを進めていきます。ほかにも、Outer Wildsなんかはプレイヤーの経験と知識というメタ構造を特に活かしているゲームだと思います。

では、そんなメタ構造のあるゲームのどこが面白いのかというと、それは没入感とアハ体験だと思います。メタ構造はこっち(プレイヤーのいる世界)とあっち(ゲームの中の世界)の境界を曖昧にし、得もいえない感覚を味あわせてくれますし、メタ的レイヤーの情報の追加によって生まれるゲーム本体の景色の変化、という名のアハ体験はかなり気持ちいいです。

TUNICのメタ構造は良くできている

では、TUNICのメタ構造はどうなのかというと、かなり良くできています。きつねちゃんの謎解きアクションという本体に対して、ゲームの説明書という形で上手くメタ構造を表現しています。

最初は説明書の一部しか持っておらず、マップを探索することで残りの説明書を手に入れることができます。これによって、段々とTUNICというゲームの操作やルールを理解していくことができ、これまで見えていた景色の意味が分かるようになります。景色は同じなのにその意味が変わっていくアハ体験はめちゃくちゃ興奮しますし、面白かったです。

特に最終盤は良かったです。これまでの読み方を変えて「黄金の道」に従って説明書を読むことで謎が解けます。「こんなものよく作ったな!」と思いましたね。

TUNICのゲームは崩壊している

本作のメタ構造はかなり上手く表現されていました。しかし、メタ構造の元にあるゲーム本体、つまり「きつねちゃんの謎解きアクション」は厳しい書き方ですがロクな出来ではありませんでした。

まずアクションですが2Dゼルダ風に、ソウルライク風な高難易度を混ぜたようなデザインになっています。しかし、操作のレスポンスがひどく、ガードやパリィは使い物になりません。敵の動きは機敏で延々と距離を取ってくる敵がいたり、ロックしても攻撃が当たらない敵が多いです。ソウルライクで重要な駆け引きという要素はまるでありません。

一応、無敵モードやスタミナ無限モードがあるのですぐに利用しましたが、それで面白くなったかと言われれば全くそんなことはありませんでした。

謎解きもなんともいえない微妙さがあります。謎解きのギミック自体は面白いものもあったんですが、説明書を読み解いてから実際にゲーム本体で再現するまでのラグが長すぎます。説明書を読み解いたときの興奮や驚きを冷めさせるには十分でした。

特に魂を集める下りは苦痛でした。というのも、謎をどうやって解くのか、どのようなモチーフを見つけるのかわかっているのに、そのモチーフを見つけるために見慣れたマップを何度も行き来しないといけないんですよね。移動も軽快とは言い難いのでしんどかったです。

謎の解き方はやたら長い上、どこまで入力したのかわからないため、何度もやり直しました。総当たりで解かせない工夫なのかもしれませんが、流石に長すぎます。正気を疑いましたね。流石に。結局、ある程度謎が解けたら攻略サイトを見て正解を入力していました。

本作が仮にコンピューターゲームではなく、リアル脱出ゲームやボードゲームのようなスタイルだったらもうちょっと楽しかったかもしれません。崩壊しているのはコンピューターゲーム部分ですからね。

TUNICは感想に困るゲーム

本作は大変微妙なゲームです。説明書というメタ構造はかなり良かったですが、ゲーム部分のアクションと謎解きの復元作業部分が壊滅的にダメです。メタ構造やゲームデザイン、ストーリーテリングのどれもが高水準だったOuter WildsやInscryptionはすごかったんだなあと思いました。本作はその影すら踏めていません。

Steamで圧倒的好評だったので相当期待していましたが、残念な結果になってしまいました。砂場の中に一粒のダイヤがある感じです。ゲーパスで遊んだのでお財布的には大丈夫だったのが、せめてもの幸いですかね。では、また。

ゲーム代やお供のお菓子やドリンク代にかわります