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#小説
(tw300ss)「一緒にゴール」
Aはattention pleaseで、Bはbe careful──生徒がふたり並んで、先生が開いたカードの文字の英単語を先に云った方が勝ち。そういうゲーム。
佑と私が接戦だった。何度カードを捲っても私たちは同時に答え、また引き分け、とクラスに笑いが起きた。
「じゃあ次の問題が同時だったらふたりとも優勝」
痺れを切らした先生が云ったとき、佑は私の手を一瞬握った(同時に答えよう)彼女は囁いた。
twitter300ss「影絵の子」
影絵がすきなの。
ゆぅちゃんは云う。
きつね?
うん、きつねもあるけど。ほかにも出来る。
「私、かに、出来る」
私たちは暗い部屋に居た。西日が射して、ゆぅちゃんが指を折り曲げて襖にかざした。
「はと」
「ほんとだ」
「白鳥」
「すごいね」
「オオカミ」
「へえ」
「やかん」
「……やかん?」
「やかん。……へん?」
「や、ううん。うん、やかん、ね」
ゆぅちゃん以外に薬缶の影絵を知って
twitter300ss「新学期」
ねえ、今日一緒に帰ろう。
ただの、そんなことが、怖かった。
お弁当をひとりで食べていることについて、何も動じていない筈だった。〝ぼっち〟という解りやすい痛みに心を仕立てる軽薄さを、見くだしている、筈だった。
中学校からバス停まで徒歩、バス停のあちらこちらで、言葉を交わす同じ中学の生徒たち。俯くわたし。
夜。
ふいに涙があふれる。
誰も一緒に帰ってくれない。