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ヒュプノスの呪縛を逃れる

長い間、悩まされてきた悪癖があります。
寝坊と、居眠り。
これはかなり根深く、私のコンプレックスを形成してきています。

小学5年生の頃、知人のアマチュア本因坊の先生のところに、囲碁を習いに行っていました。
ところが、対局中どうしても居眠りしてしまうのです。
先生はとても優しい方でしたので、何も言わず私が目覚めるまでじっと待って下さいました。
はっと我に返った時の、気まずさといったら!
今度は絶対寝ないようにしよう、と手を抓ったり座り直したりするのですが、しばらくするとまたウトウト。
本当に毎回毎回、自己嫌悪に陥りました。

中学校くらいから、夜更かしが酷くなり、授業中もよく居眠りするようになりました。
高校生の時などは、一年のうち三分の一くらいは、寝坊して遅刻していました。
もちろん、クラスでの遅刻回数はトップ。
授業の途中で教室に入るのが気まずいので、ピロティにあるベンチで昼休みまでの時間を潰していました。
高台にあった高校でしたので、遠くの山並みや富士山が見渡せて、ぼーっとするには最適でした。

大学は小田急線で通ったのですが、朝のラッシュ時に座れることは稀です。
吊革に捕まって立ったまま眠ってしまい、ガクガク崩れ落ちるのを見かねて、乗客の方が席を譲って下さったことも、一度や二度ではありません。

この頃の父の習慣が、近くの運動公園や時には海岸で、朝日を眺めながらジョギングし、お湯を沸かして珈琲を飲むというもので、私も一緒に行きたかったのですが、何しろ起きられません。
父はドライなので、「待って」と言っても支度が遅れると、さっさと行ってしまいます。
何度悔しい思いをしたことか・・・。

卒業してアルバイトを始めても、状況は変わらず。
自分は社会人として失格だ、という劣等感は、常に付きまといました。
睡眠障害を疑って調べてはみたのですが、「重要な予定があって絶対に起きなくてはならない時でも寝坊してしまう」という項目に、当てはまらないのです。
つまり、起きられないのは気の弛み、ということになります。
しかも、睡眠時間を十分に取れば起きられるので、単なる寝不足、で片付けられてしまいます。
仕事の時はそれでも無理やり起きますが、休みの日が本当に起きられません。
折角の休みに朝から遊びに行こう、と楽しみにしていたのに、昼過ぎまで起きられなくて、悔しくて悲しくて泣いたりもしょっちゅうでした。
睡眠不足が続いていたりすると、休みの日に12時間以上寝てしまうこともざらにありました。

朝型生活がずっと憧れで、毎年お正月の抱負に「今年は朝型になる」と言っても、どうしても夜の方が元気になってしまう。
ぎりぎりまで寝ているので、普段仕事に行く時はほぼノーメイクです。

そんな生活に、去年変化が訪れました。
週に一度、倫理法人会のモーニングセミナーに出席するようになったのがきっかけです。

最初は辛くて、一日ふらふらでした。
でも「来てね」と言われると行かなきゃ、と義務感に駆られるタイプの私は、毎週ではないものの出来るだけ顔を出すようにしていたところ。
いつの間にか、朝起きる習慣が身についてきたようです。

それ以外にも、食事や運動などの生活スタイルを見直すようになった為か、なんと最近では4時間くらいの睡眠時間でも、朝起きられるようになってきたのです。
休みの日に「今日はたくさん眠れる」と思って寝ても、6時間も寝ないで眼が覚めてしまいます。
私にとっては、実に画期的な出来事です。

ショートスリーパーになった副作用なのか、最近眼の焦点が合いづらくなるという不具合が現れました。
眩暈のような状態になり、眼を開けているのが辛いので、眼科に行って診てもらったところ、左右の視力が違うのと涙の量が少ないのが原因かも、と言われました。
それは以前から分かっていたことなのですが、眼を休める時間が少なくなったので、症状として現れるようになったのかも知れません。
それでなくても、仕事でPCやスマホをずっと見たり、暗いところや変な姿勢で本を読んだりするのですから、眼に負担がかかって当然です。

象徴的にも神の全能性を表している眼は、人体の中で一番好きなパーツです。
これからは今まで以上に、眼を労わることを意識して生活していこう、と思います。

撮影:麻由
モデル:由良瓏砂

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