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小さな読む絵本『鐘』800字未満


『祝福を祝福の鐘を僕らにしゅくふくの鐘がなる
満ち満ちよ 僕らの胸から脳髄へと骨から足のつま先へと木々の梢から天頂へと葉脈から大地へと
祝福の泉よ湧き上がれ』

「ぼうやどうしたんだい?」
「じいちゃん、ぼうやはよしとくれ、僕には名前があるんだ」
「あぁそうだったよ、かわいいぼうや」
「まったく」
「それで何をよんでいるんだい?」
「詩だよ。読めば読むほど幸せの鐘がなる詩」
「そうかい、そうかい言葉は魔法だからな」
「魔法?」
「そうだよ、ぼうや、人間は魔法使いでな、誰でも使える魔法が言葉なんだよ。知らずしらずのうちに、使って言葉に込める魔力によってはまるでそのとりになっとるが知らずしらずなんだよ」
「ふうん」
「ひとついいことをおしえてあげよう、効果を知ったら途端その威力を増すんだよ」
「そっか。呪いをかけられたらどうするの?
効果を知ったら強くなってしまったら、困ったな」
「そうかい?」
「じいちゃんが動けなく魔法をかけられたら、僕は困る」
「いつか人は動かなくなる」
「そんなのいやだ」
「じいちゃんがしゃべれなくなる魔法をかけられたら、僕は困る」
「わしはいつか何もいわなくなる」
「そんなのいやだ」
「だからおぼえておいで、呪いをかけられたら祝福をすればいいんだよ、するすると呪いの魔法が解ける。
ほれ、『祝福を 祝福を 祝福の鐘をそなたの頭の上に そなたの目に そなたの口に足に手に』」
「そなたなんて、じっちゃん、僕には名前があるんだ」
「そりゃぁそうだ、ぼうや」

「じっちゃん、死なないで、僕をきらっても好きでもずっと生きていて。『じっちゃんに不死を!』」
「ありきたりだけれどな、心の中でずっとそばにいるよ」


『祝福を祝福の鐘を僕らにしゅくふくの鐘がなる
満ち満ちよ 僕らの胸から脳髄へと骨から足のつま先へと木々の梢から天頂へと葉脈から大地へと
祝福の泉よ湧き上がれ』

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