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【小話】魔女ラーニャとマナの『恋愛論』(長続きする恋愛って?)


「窓辺からね、空を何気なしに見上げてるとね、ほら、青い空に白い雲が流れていくことってあるでしょう?
そうするとね、たまにはまるで別世界の架空の世界にね、飛んでいってもいいかな、なんて思うことがあるの。」
「別世界?」
三毛猫のマナ🐾は聞いた。マナは魔女のラーニャの相棒。だから猫のマナとお話できるのは極々普通のこと。
「そうよ。別世界。」
🐾「ふぅん。わたしは、美味しいもの食べれて、あったかい毛布があったら、それでいいわ。」
「それだけ?」
🐾「それだけ、なんて失礼ね。そこにどれだけの至福を感じているかなんて、人間にはきっとわからないわね。あ、一応いっとく。あと、ラーニャが傍にいたらね。」
「ふふ。」
🐾「それで、ラーニャが行きたい世界はどんな世界なの?」
マナは、前脚をペロペロとなめながら聞いた。

「えっとね、わたしが生きたい世界は・・・、
わたしが普通と違うからって、それを隠したりしなくてもいい世界。ほら、わたしが魔女だってこと、普通の人とは違う能力が開いてるってことが分かったら、あの人は変人だ、なんて言われるだけならまだしも頭がおかしいだの、異常だの、しまいには人間じゃないだの言われたりもしたわ。ときにはね、みんなと違うからってときの支配者に目を付けられて追放されたり、人が恐怖をあおう噂を流して、その場所にいれなくなった。ほら、恐怖をあおう情報は、瞬く間に流れるものなの。」

🐾「フェイクニュースが人の恐怖を導火線にして広がるわけね。」


「そうね。それにね、仲良くしてきたはずの人も掌を返したように去っていく、そんなこともあったわ。それは流石にこたえたわね。集団でかかってきたら、人は大抵ひとたまりもなく潰れるものだから保身のため、仕方がないんだけどね。痛い思いはしたけれどわたしは、誰も責めてないのよ。だって、人はそういう生き物。
残って傍にいてくれるのは、いつも猫ね。ありがと、マナ。」
そう言いながら、魔女のラーニャは三毛猫のマナをなぜた。マナは猫らしくニャーとないた。
「長く生きてきてると、色々あるのよ。」
ラーニャは溜息をついた。
🐾「寿命、長いもんね。」
「長いけど、れっきとした人間なのよ。」
🐾「それは知ってる。人が100歳前後が寿命っていうのは、単なる常識だから。常識は、10年もあれば変わるもの。」
「そうね。容易に常識に振り回されるのも人ね。そうじゃない目の覚めた人もいるけれどマイノリティね。」

🐾「マジョリティーが信じてるから”常識”っていうんだから、常識に疑いをはさめて、常識から自由な人って、少数にきまってるんじゃない?」

「それもそうね、マナ。じゃぁ、みんながみんな自分の心の奥に秘めた価値観に沿って生きることがあったのなら、”常識”って言葉はなくなるのかしら?」

🐾「さぁね。社会のルールとは別物よね。」

ラーニャは、依然空を見つめている。今日は春にしては風があまりふかない穏やかな日。雲もゆったりと移動する。

「人ってね、自分とは異なる才能があったり性質があったりすると、それだけで警戒したり不安を抱いたりする生き物なの。
肌の色、信じる神様、それから、違いならなんでもよ。
だからね、それが人だって諦めてきてずっと能力を隠して今に至ってる。だから、わたしは自分が人とは違う能力があるからって、疎外されない世界に行きたい。堂々と、ってうより、当たり前に『魔女のラーニャです。』って言えるような世界。」
🐾「それって、魔女がマジョリティーの世界に行きたいってこと?」
マナが聞いた。
「違うわ。そうじゃないの。どんな人も同じ人はいない。『違いを尊重し、認めあうことの大切さ』、それをね、人は頭ではわかっていはいても実際は、頭だけでわかってるだけ。肌が白だの黒だの、宗教が違うだの、そんなことだけじゃなくて、隣人との違い、恋人との違い、兄弟姉妹との違いにさえも認め会えずに、敵意を感じることがあるのが人。敵意が育つと分かれになったり、その小さな一人ひとりの敵意が集団になると戦争にも繋がるって見る事もできるの。」
🐾「人って仲のいい支え合うような兄弟姉妹もいれば、ずっといがみ合う人たちもいるもんね。」
「そうね。共通点があるからひきあうのに、違う点が大きいとその苦のほども大きいそうよ。血肉の争いってのが違いが原因のこともあるわね。片方が違いを尊重しあうタイプの人でも片方が違えば、うまくはいかないわ。」

🐾「ほら、でも肌の違いや世代差を超えて仲良く暮一緒にらす人もいるよね。」

「それは、見た目や年齢差の違いに価値を置かないか、それを超える似たところがあるからじゃないかしらね。」
🐾「ふぅん。」

マナは心地よさそうに毛布の上で丸くなり、しっぽの位置を調節しながら話した。

🐾「人間は、集団同士でやり合うからこわいよね。ほら、人は集団になると、他の集団を疎外して追放したり、規模が大きくなって集団同士になると攻撃しあったりしてきたわ。戦争っての。一人ひとりの小さなものが集まるととんでもないことにもなるね。」
「だから、わたしが行きたいのは、違いを個性として本当に尊重しうことが隅々まで行き届いた世界。隅々までよ。そんなの、わたしたち人間には、難しいかもね。」

🐾「どうして?」

「だって、そういう脳にできているんだから。違いを怖れたり警戒することでわたしたちは生き残り進化してきた生物だから。より楽しく実りある関係性を長い間培っていきたいのなら、似ている人の傍にいるのが一番なのよ。これは、まぁ人である限りほぼ間違いないわね。周囲をみても結局のところ、何かでご本人たちにとって重要なパーツで共通点がある人たちがいっしょにいるものね。当たり前っていったら当たり前だけど。」

🐾「だから、ラーニャはわたしといるのね。ラーニャは、猫みたいなところ多いから。」
「まぁね、そういうこと。違うところもおおありだけど。」
魔女のラーニャは、マナの方を向いて溜息をした。

「🐾逆もあるんじゃない?違いが人を結びつける力になること。ほら、支配欲が強い人には服従心や依存心が多い人が集まる。搾取する人には、搾取される人が集まる。」

「それは、そうね。逆の力も人が引き合う力よね。う~ん、なんていうのかしら、繋がりの満足度の観点からすると、どちらかに犠牲的なものがあると関係性に実りは少なさそうよね。」

🐾「自己犠牲って、人間だけだよ。変なの。」

「ほんと変よね。人によっては相互に繁栄できる関係性を選んでいく力を人身につけていく必要がある人がいるわね。そういう人ってそもそもいい人が多いから、自分にも与えることができるようになったら、ご本人だけでなくて周囲も日々の歓びがますわ。自分を幸福にしてこそ、周囲を幸福にできるんだから。」

🐾「人間って、ばかねぇ。技術だなんだ、スマホだ何だ、賢いつもりでいるのに、自分たちの扱い方もわかっちゃいない。」

「それ、認めたくないけど、認める。こういうわたしだってね、魔女として3千年ほど生きてきたから、自分の脳が考えたり行動することをコントロールできるようになってきただけ。人ってばかなところがあるのよ。人は自分がばかだって気が付いたらときが始まり。」

🐾「ふ~ん。それで、今さコロナでしょう?つながり渇望症になっている人も結構いて、それで恋愛しようかとか、結婚相手探そうかみないな動きが水面下であるよね。長続きしてハッピーな人たちってどういう人なの?共通点がいいっていうけど、違いが人をひきつけあうことって結構あるんじゃない?あの、例えば、育った環境が大きく違う、とかほら、おとぎ話とか、映画なんかではよくあるストーリー。現実的にもあるんじゃないの?」

「ふふ。打ち上げ花火の恋愛、ね。違いは、誰でもあって、それを自分にないものだから、と補う意味で付き合うのと、自分とはこういうところが違うから、憧れる、そういうきもちで付き合うのとで、違いの扱い方が変わると思うわ。補う意味で付き合うと、そうね、大体2,3年もすれば、違いへの魅力が色あせて、今までは違いが吸引力として働いていたのが、今度は、逆に働くようになるってことが多いわね。」

🐾「要は、2,3年経って恋の魔法がどこかいってしまったときに『お互いの違いを尊重したり憧れをキープできているか』ってこと?」

「そうかもね。はっきりいって双子でもクローン人間でも同じなんて人はいなくて、違う。いずれにせよ、違いを大きく問題化したり、違いに敵意を覚えるようなつきあいだったら、続かないわね。」

「🐾人間って、そもそも違いに不安とか敵意とか覚えるものなんでしょう?」

「そういうように進化してきてはいるわね。だから、誰だって、似たような人と友達になるし、似たようなところが多い職場を選んだりしてるんじゃない?そちらの方が、余計なストレスがかからないから。それに、似たような能力は力を合わせるとより勢いをつけるわ。まぁ、当たり前のことだけど。」

🐾「当たり前でもないんじゃないの?
ほら、ママ友とかって、歓びよりもストレス感じるのに付き合いだからって一緒にいたりとかする人、結構いるじゃん。」

「それもそうね、心地よさよりも別の価値観を優先させてしまってストレス抱える現代人って結構いる。ママ友もほっんと不可解よね。ほんとは付き合いめんどいなーって人もなかには結構いるんだけど、女性っていうのは個体差はあっても生物的に日常的なコミュを重んじたりするように、コミュニティに属することを重んじるように造られているから、ストレスを感じながらも付き合いをするって人も結構いたりなんかして。」

🐾「わたしは、猫でよかった。自分の心地よさに素直に行動できるから。」


「『自分の心地よさに素直に行動』。ふふ。だから、猫といるのが好きなのよ、マナ。でもね、ママ友だって”友”ってつくように、お互いに励まし合ったりするような繋がりを作る人たちだってこれもいるんだから。兎に角、人って共通点で結びつくことが多いわね。カップルだって、長く続いている人は共通点が多いってもの。無駄な脳の警戒や不安を解除できるから、よりストレスレスに過ごせる。人といるっていう人間の本来的生物的欲求もみたせるし、長いこと過ごせば過ごすほど、愛情ホルモン分泌促進のような幸福感情やお互いの能力を増しあう関係性を築けるわってものなのね。」

🐾「それでさ、ラーニャが行きたい世界って、実現不可能なことでもないんじゃない?」

「そうなのよね、マナ。今思ったんだけど、わたしマナとはそういう関係を築いてる。猫だけどね。」

「🐾そうじゃなくって、本当にリアルな世界でも実現可能なんじゃないの?」

「まっさか。人は違いでいがみあい、生来的な優越感に裏打ちされたような差別心をおこし、あまつさえ戦争してきた生き物。今だって、大戦こそ2回でおさまってはいても小さな紛争や差別による争いは絶えないわ。」

🐾「『平和は家庭から。』なんて昔っからいうけど、うまくいく二人がいるのなら、それって大袈裟にいったら、世界平和の始まりだし、それにそれはラーニャが言う世界に近づくんじゃない?

そういう人たち結構いるよ。わたしたちもそうだし、そういう人がけっこういるんだから、あながちそんな世界を見ることも不可能じゃないかも。」

「そうかもね。希望ってやつね。それには、『己を知る』必要があるわね。人としての自分、そして、この地球上でたった一人の自分を知ることね。

人間という生き物が、違いに対して差別心や排他性を伴う優越感をもちやすいか知ることが先。お互いを認め合う誇りの持ち方っていうものをしることも大切。

それに自分がどんな人間か知らなくっちゃ、他者との共通点や違いもわからないもの。ま、わたしもね、こんなに生きてきたのに、まだまだわからないことだらけよ。人のことも自分のことも。」

「🐾わたしには、どうでもいんだけどね。美味しいものと、温かい毛布と、それからラーニャが傍にいてくれたらね。」

「だから、マナが好き。自分を幸せにできる術を知ってるから、傍にいる人を幸せにするのよ。」



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