ココロの排泄機能 恋の終わりお約束の膀胱炎

そして、恋の終わりお約束の、膀胱炎がやってきた。
あの尿道を突き抜ける、つんとした痛み。
恋も結婚も、終わりの記憶は、つねにこの痛みとともに残っている。


仕事でも家庭のことでも、膀胱炎は追い詰められるとやってくる。
うまくゆかないときは、うまく言い出せないときだ。
ココロの排泄機能がはたらかなくなると、カラダまで呼応するように。
吐き出せない思いを、まりかの中に閉じ込めるように。

膀胱炎を治すには、悪さをする雑菌を尿と一緒に流してしまうしかない。
さっきから水分を半リットル以上飲んだけれども、まだ1滴も出やしない。
4年前、歯医者さんでもらった抗生剤、効くかな。
言えなかったことばたちを駆逐する薬もあるといいのに。



彼は病気だから
発作起こしたらことだから。
追い詰めたら可哀想だから。
いつだってそうだ。

まりかの中からとっとと追い出したいのに、出てゆかない。
言ってしまえばきっと楽になるのに、言うことができない。
だって、彼のことが好きなのだもの。
だって、彼のことを傷つけたくないのだもの。
そのもどかしさがさらに、まりかを追い詰める。
出そうとすればするほど、痛みは激しくなる。
もがけばもがくほど、ジレンマは大きくなる。

まりかだって病気だよ。
なぜ、ぶつけることができないのだろう。
いえ、相手を守るふりをして、自分のココロを守っているのだ。
相手を痛ぶることで背負う、罪悪感から逃れるために。


思えばいつだって、肝心なことが言えない。
明るく元気なまりかちゃん、実は暗く陰気なまりかちゃんと表裏一体だ。
これを言ったら相手が傷つくだろう、とか、いまこれを言ったらばがしらけるだろうとか。
本当は裏腹なことばかり考えているのに。
もっと自分を大切にしたい。最優先にしたい。
まりかは苦しい。辛いんだ。
でも、辛いのひとことを言い出せない。
だって、相手はもっと辛い思いをしているのだから。


抗生剤で雑菌を叩くと、今度はカンジダが暴れ出す。
猛烈なかゆみがやってくる。
かゆみが落ち着くころには、ココロも落ち着いていることを、ここまで書いてやっと思い出した。
そうだ、こいつらにもいつか終わりがやってくる。


膀胱炎とカンジダ、まりかの敵であり仲間である。
これはきっと、ココロの痛みをカラダの不調で紛らわせるための生存戦略に違いない。
生命の神秘である。

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