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ヒプマイ楽曲が引用・オマージュしてる洋楽ネタを検証してみた vol.4

※10月28日23:30追記あり

こんばんは、東京ディズニーランドのスターツアーズが「スカイウォーカーの夜明け」特別版になったら空いてる日にアフター6パスポートで閉園まで周回しようと考えてるナカジです。乗り物酔いに強い体質に産んでくれた母に感激感謝。

これまではヒプマイ曲1曲に対し元ネタ1曲という解説をお届けしましたが、今回はちょっと趣向を変えて曲の中から一部分を抜き出しての解説にいたします。
今回もごゆるりとお付き合いください。

●Division All Stars「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-+」名古屋パート/The Clash

今回は6ディビ版になったオールスター曲から、ナゴヤディビジョンことBadass Templeのパートについて解説します。上の動画はナゴヤパートが始まるところから聴けるようにリンクを貼っております。

今回の解説のメインとなるのは、一番手にしてナゴヤのリーダー、波羅夷空却のパートです。トラックやリリック、キャラクター設定を見ると、空却は1970年代半ば〜80年代半ばにかけて活躍したイギリスのパンク・バンド、The Clashにインスパイアされていることがわかります。

まず一番わかりやすいヒントが、空却パートの一番最後の「London Callingみたく釈迦堂に降臨」というリリックです。「London Calling」というのは、The Clashが1979年にリリースした3作目のアルバムのタイトルです。「London Callingみたく」というのは、おそらくこのジャケットのような構図を指していると思われます。

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もしかしたら、なんとなくこの構図を見たことがある方もいるかもしれません。ロック界ではめちゃくちゃ有名なジャケの一つであるこのレコードは、なんとディズニー公認でミッキーマウスのパロディイラストTシャツやフィギュアまで作られています。

ちなみにこのジャケ、壊しているのはギターだと誤解されがちなんですが、被写体の男性が叩きつけようとしているのはギターではなくベースです。The Clashのベーシスト、Paul Simonon(ポール・シムノン。トップで使用している写真の左側)(はちゃめちゃに顔がいい)(ぶっちゃけ顔ファン)がライヴ中に演奏がうまくいかず苛立って楽器を叩きつけようとした瞬間を、ツアーに帯同していたカメラマンがステージ袖から撮っています。
さらにこのジャケット自体が実はパロディで、この「LONDON CALLING」というフォントと文字の配置はエルヴィス・プレスリーのレコードのパロディ……という話は脇道に逸れすぎるのでやめときましょう。

次にサウンドについて解説します。ディビジョンの名乗りがあって、空却のパートが始まった瞬間に曲の雰囲気が変わりますね。ビートが打ち込みではなくパーカッションになり、裏拍で「ズンチャッズンチャッ」とリズミカルなギターが鳴っています。これはレゲエ特有のサウンドで、The Clashのサウンドの特徴の一つでもあります。

パンクというと「安全ピンいっぱいで破けてる服」とか「とにかくテンポが速くてギターがうるさいロック」というイメージが先行しがちです。実際、The Clashにもそういう曲はあります。例えばこれとか。

が、実はThe Clashはレゲエに多大な影響を受けているバンドなんです。ちょうどこの頃、イギリスの若者の間ではジャマイカ発祥の音楽であるレゲエがとても流行っていて、The Clashもその影響を自分たちのサウンドに取り込んでいます。例えば「London Calling」には、レゲエ・ソングのカバーであるこんな曲も収録されているんですが、ギターやリズムの雰囲気が空却のパートに似ていることが伝わるでしょうか?

そしてですね、これが空却がThe Clashのリスペクトの元に作られているキャラクターだと私が確信した事実なんですけど。
空却の誕生日、The ClashのボーカルだったJoe Strummer(ジョー・ストラマー、トップの写真でポールのすぐ隣に写ってる人)と同じ8月21日なんですよ!!!!
このサウンドとこのリリックで誕生日まで一緒ってことは、もう365分の1の偶然の一致なんかじゃねえわ!!!!と声高に叫ばせてください。

お茶の間的にはThe Clashと言えば日産の車のCMにも起用されたこれが一番有名だと思います。20代後半くらいなら聞き覚えある方いるかも。ていうかこの時期のPaulの髪型、空却と似てんな?

あと個人的にThe Clashで一番好きな曲はこれ。パンクバンドだけど、こんなにおしゃれで踊れる曲も作ってるんですよ〜!


四十物十四はV系出身ってことで、私ももともとV系育ちなんですけど洋楽元ネタ解説なんで今回は飛ばします(ごめん)。

あと天国獄についてはこれだ!と確信するには至ってないのですが、彼はBrian Setzer(ブライアン・セッツァー)のスタイルを参考にしているのではないかと疑っています。Brian Setzerはロカビリーやブルース、カントリーといったジャンルを取り入れたロックンロール・アーティストで、アメリカのミュージシャンです。
この曲はスタンダード・ナンバー「Gettin' In The Mood」のカバーですが、テレビなんかでもよく使われるので聞き覚えある方もいるかと。

Brian Setzerのトレードマークといえばリーゼントにレザーのライダースジャケット、そしてセミアコースティックのギターです。このリーゼントとライダースジャケットが獄のスタイルとソックリなんですよね。以下の動画は比較的最近のものですが、彼は若い頃からずっとこのスタイルです。


それから、Brian Setzerはビッグバンド(トランペットやサックスなどのホーン楽器隊)を率いたBrian Setzer Orchestra名義でも活動するのですが、獄のパートのホーンが入った華やかなトラックは、Brian Setzer Orchestraのサウンドを連想させます。

ただ、ヒプマイ公式サイトに載ってる獄の座右の銘「月に手を伸ばせ、たとえ届かなくても」ってジョー・ストラマーが残した格言なんですよね。ジョーストラマーも時期によってはリーゼントとかライダース着てたので、空却と獄の両方がThe Clashオマージュのキャラなのかなとも考えられるんですが。獄パートについては、なんか決定的なオマージュポイントを掴めたらまたお伝えしますね。

【※10月28日23:30追記】
獄の職業設定について気付いたことを追記します。
獄の仕事は弁護士=法律の専門家ですが、英語では法律=Law、弁護士=Lawyerです。
彼の仕事は、先にThe Clashの代表曲として紹介した「I Fought the Law」になぞらえて設定されたと考えられます。
「I Fought the Law」の歌詞には、「I fought the law and the law won(俺は法律と戦って法律が勝った)」という箇所があります。
この曲で「勝者」とされる法律を取り扱う者=弁護士という設定も、おそらくThe Clashへのオマージュの一つでしょう。
え〜めっちゃ細かくネタ入れ込んでくるやん……すき……。

次回ネタは未定ですが、オオサカかナゴヤのディビジョン曲またはメンバー各自曲が出たらそこから何かやりたいな〜と思ってます。リリース楽しみですね!

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あとトップに使用しているThe Clashの画像ですが、こちらの本から引用させていただいております。シンコーミュージック・エンタテイメント刊、赤尾美香著「ロックンロール・フォトグラフィティ 長谷部宏の仕事」です。私も制作をお手伝いし、巻末にクレジットしていただいております。初めてザ・ビートルズを撮影した日本人カメラマンというレジェンド、長谷部宏さん。The Clashほか、めちゃくちゃ貴重な大物ミュージシャンの写真をたくさん撮られています。取材時のエピソードも満載。ご興味ありましたらぜひ。

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