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BROCKHAMPTONはいいぞ!vol.5 「iridescence」アルバム・レビュー

こんばんは、ジャパニーズBROCKHAMPTONヤクザことナカジです。
BROCKHAMPTONにとって通算4作目となるアルバム「iridescence」が2018年9月21日、リリースされました。
皆さんもうお聴きになりましたでしょうか。

彼らはリリース当日はニュージーランドにおりまして、かなり小規模な会場で一夜限りのショウを行ないました。
その様子はライヴ配信されていたのでご覧になってた方もいるかと思います。
ありがたいことに海外のファンがフルセットを上げてくれてますので見逃した方はこちらからどうぞ。
「あのパートはこいつが歌ってたのか!」などの発見もできます。
最初にアルバムほぼ全曲を曲順通りにやって、アンコールでその他の代表曲という構成です。

さて、この記事では各音楽メディアに掲載されているレビューや「iridescence」関連のインタビューを集めてみました。
最後に私の現時点での感想も書いておきます。

が、まだアルバムを聴いていないという方はまず何の先入観も持たず数回聴いてからこれらのテキストを読むことをオススメします。
「このアルバムを初めて聴く」という体験は1回しかできないからね。

●NMEレビュー

Ameer脱退のことも絡めた内容。
星4つ(5点満点)と、まずまずの評価です。

●Rolling Stoneレビュー

「WEIGHT」のKevinのリリックは2018年最高のヴァースの一つと褒めてますね。

ちなみにこちらの記事では《「iridescence」の中でクィアを感じるパート5つ》というのを解説していますが、これに対してKevinは「この記事は笑える、グループの中でガチのゲイなのは俺だけなのに」とコメントしています。

●VICE New Zealandインタビュー

BROCKHAMPTONはアルバム・リリース日にニュージーランドでドキュメンタリー上映と1日限りのライヴをやりました。
このインタビューは現地の若いラッパー2人が聞き手となった最新インタビュー。
同じ表現者として年下のラッパーに語りかけるメンバーの発言が読めます。

レビュー、インタビュー類は見つけ次第追加していきます。
特にバンドと犬猿の仲のPitchforkが何点をつけるのかは注目ですw


●ナカジの「iridescence」個人的感想

※リリースされてから15周くらいは聴きましたが、あくまでファースト・インプレッションとしての感想です

レディング・フェスティバルに出て観客からものすごいリアクションを得て、NERDのステージにも上がって、憧れのファレル・ウィリアムスとも交流できて、その勢いでスタジオ入ったんだからアッパーな感じになるのかなと思ったら全然違いましたね。

すごく感情的にはディープなところを描いてるし、トラックも想像してたよりキャッチーじゃなかったので、わーそうきたか!という感じ。Kevinが「SATURATIONシリーズとは違うから、ああいうのは期待するなよ」と言っていたのはこういうことだったのかと。

正直、ほとんどの曲を10日で作ったということもあって、作りの粗さを感じるところもある。特に「SWEET」とか「1999 WILDFIRE」みたいなシンガロング・コーラスのある曲がほぼない、というのはちょっと予想外だった。もっと時間をかけて曲の構成を磨いたり、プロダクションを改良していけばさらに幅広いリスナーにアピールする作品になったかもしれない。

でも、「時間的制約の中で自分たちのベストを尽くすには?」というやり方も彼ららしいし、短い時間で作る時には、余計なことは考えずに自分の中の核になる部分にアクセスしてガッとリリックを書かざるを得ない。だからこそ今回のような内容になったのかな、とも思う。

歌詞はまだそこまでじっくり読めてないんだけど、KevinだけじゃなくDomのリリックも素晴らしいのでぜひ彼のパートをじっくり読んでほしい。「SATURATION」の成功で名声を手に入れてもなお自分の内面と戦い続けているナイーブな彼らの率直な気持ちが綴られているので(とは言っても私もそこまで英語できない。ソニーさん、歌詞対訳つけて日本盤リリースお願いしますよー!)。

パフォーマンスに関してはvol.4で書いたように、メンバー全員「SATURATION」期から大きく成長しているので弱いところは特に感じなかった。今回はBearfaceもラップに歌にギターに大活躍だし、そして何と言ってもいろんな声色を使い分けるJobaの面目躍如。冒頭で紹介したニュージーランド公演でもJobaが前に出てくる度に歓声がすごくて、「iridescence」はJobaのためアルバムとすら思えるくらいです。

あとやっぱDomはすごいなと。1曲目の「NEW ORLEANS」で第一声を発するのがDomなんですが、彼のフロウで一気に曲の世界に引き込まれる。そして「HONEY」のどこで息してんだよっていう言葉の連打。さらに「WEIGHT」と「TONYA」のエモーショナルなリリック。今回のアルバムでますますDomのことが好きになりました。

逆に今回Mattの存在感がちょっと薄いかなと思ったんだけど、このあとまた2枚のアルバムが存在するなら、もしかして彼らはアルバムごとに2人ずつのメンバーを強めにフィーチャーする思惑があるのでは?と思ったり。つまり今回はDomとJoba。Mattや他のメンバーはまた別のアルバムで大フィーチャーされるたりするのかも。

総合すると、思ってたよりキャッチーなアルバムではなかったので、「1999 WILDFIRE」「1998 TRUMAN」「1997 DIANA」の3曲が好きな自分としてはちょっと物足りなさを感じた。でもメンバー個々のパフォーマーとしての成長とエモーショナルなリリックはとても好き。

ちなみに音楽ライターとして2018年の年間ベストを選ぶ時、「iridescence」を1位に選ぶかと問われたら答えはNo。トップ10には入れるけど。1位にするにはやっぱこうガツンと来るキラーチューンと、アルバム全体のバランス感覚が今一歩足りなかったかなという印象です。とはいえ「The Best Years Of Our Lives」はシリーズあと2枚あるそうなので、そちらがもっとすごい作品になっていることを期待してます。「SATURATION」シリーズもKevinは2がベストだと思ってるって言ってたし、商業的に一番成績がよかったのは3なので。

このマガジンを読んでくださってる方は「iridescence」にどんな感想を持ったでしょうか。
他の人の意見や解釈、感想大好きマンなのでnoteかTwitterで書いてたら教えてください。

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