子供も大人も考えさせられる本、『モモ』。自分の好きな本・読み方を見つける。
私が読書に触れる一番最初の機会に、この本を勧めてくれた父には感謝をしている。
元々父はよく本を読んでいたような気がする。家にも父の会社にも大きな本棚があって、1冊引っ張り出すともう二度としまえないのではと思うほど、余すことなく余白を埋めていた。
ゲド戦記からプログラミング言語C++、24人のビリーミリガンなどジャンルはバラバラ。
(パッと思い浮かんだのはなぜかこの3冊だった)
小学生4年生の夏休み、読書感想文を提出しなくてはいけないからと家族で街の大きな本屋へ行った。
色々と勧めてもらったような気もするけれど、その中で選んだのはドイツの児童文学作家、ミヒャエル・エンデ(Michael Ende)の『モモ』。
オレンジ色のケースに線画のモノクロイラストが印象的だったから。
あらすじは私がまとめるよりどこかのホームページで見てもらった方がわかりやすいけれど、少しだけ。
いつの間にか街の廃墟に住み着いたモモ。ボロボロの服でボサボサ頭で風変わりな女の子だけれど、みんなから愛されていて、困ったことがあったらモモのところへ!と言われる存在。
ある日、時間貯蓄銀行を名乗る灰色の男たちが現れる。将来のために時間を節約して貯蓄しましょうよ!と言葉巧みに持ちかけてくる。
街のみんなは次第にあくせくした生活を送るようになり、いかに時間を貯めるかばかり。でも実は灰色の男たちはみんなが貯蓄した時間を葉巻にして吸うことで生きることができる生き物だった。
モモだけがそのことに気付いていて、変わっていくみんなを見て悲しみ、助けるためにひとりで立ち向かう。
そんな感じだったような。
ファンタジーの世界だけれど、あくせく生きる現代人を揶揄しているようで、みんなと違うことで軽蔑されながら1人でも立ち向かうことの苦しさは現実にもあるでしょ?と言っているのではと考えたり。(当時はそんなこと考えてはいなかったけれど)
まあ当時と今とで異なる感想は色々とあるけれど、そんなことよりも周りが見えなくなって、その本の世界に入り込んでいるというのはなんだかとても気持ちが良くて。現実に戻ったときに、頭の中で鮮やかに映像化されていたことに気がついたから。
あまりちゃんと覚えていないけれど、読書感想文では何か小さな賞を取ったような気がする。
もちろん、同著者の果てしない物語も読んだ。物語の中でも出てくる、蛇が2匹描かれた赤い表紙の本がとても好きだった。
そこから表紙とタイトルでジャケ買いのようなことをしたり、好きな作家を見つけたり、出だしの1文や物語の結びのフレーズにぶわっと身体が熱くなったり、どうしても何度も読み返しても入ってこなくて前に進めない本に出会ったり。
たくさん読書をしている人からしたら100分の1も読んでいないけれど、私は本が好き。
ストーリーも、挿絵も、紙の匂いも、フォントも、言葉選びも、すべて。
ライトノベルしか読めなくたって、純文学ばっかりだって絵本だってエッセイだって良いし、毎日読んでいても1年に数冊でも良いと思う。
好きな本を好きな時に、「ここが好きだ」と思いながら読むことができたなら、もうそれ以上は何もいらない、と。
話が思いっきり逸れてしまったけれど、最初に私がお勧めしたい本は『モモ』。好きになるかそうでないかは良いとして、「自分の好きな本って?」を考えるきっかけになればと思う。
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