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インディアンコミュニケーション

私、インドカレー屋さんでウエイトレスのアルバイトをしています。

昨日、素敵なお客さんに出会いました。

お昼時を過ぎて、皆のんびりお会計を済ませて帰りだすころに彼らはやってきました。インド人らしき父娘です。

お父さんは、お父さんというよりおじいちゃん風。細くて茶色い肌で白いお髭の、いかにも現地人という感じ。
娘がこれまた美人さん。彫りの深い整った顔立ちで、歳は二十歳かもう少し下くらい。なんというか、海外の有名な女優さんの若い頃という感じ。

娘さんが、お冷やを注ぎに来た私に突然こう話しかけました。

「ねえ、その服はあなたのなの?」

私インドカレー屋さんのウエイトレスなので、制服がインドの衣装なんです。それで少しだけお話をしました。

「いいえ、店長さんに借りてます。かわいくて気に入ってるんですよ。」
「そうなの!私その服作れるわよ。」
「え!衣装作れちゃうんですか、すごい!」
「今日は衣装の布を買いにきててね、それでお昼はカレーってわけなの。」
「わあ、いいですねえ!」

すごく他愛ないですね。特に深い話をしたわけでも、いいこと言ったわけでもないのですが、私とっても感動しちゃったんです。

私ならきっと、服に興味があっても「それあなたのなの?」なんて聞かないで、こういう店の店員だからああいう制服なんだなあくらいにしか思わないです。

私ならきっと、服が作れても「それ私作れるわよ。」なんて言わないです。しかも全く知らない店員に言えないです。自慢かよって思われたら嫌だし。

私ならきっと、今日布を買いに来たことも聞かれない限り言わなそうです。別に、そんなこと言ったってしょうがないわと思いそうです。

でも、彼女はそれをなんの自慢も謙遜もなく、ただ元気にそう言ったんです。その姿がとても可愛くて綺麗でした。心になんの企みもない言葉。

私事ですが、只今就活真っ最中なのでいつも相手に気に入られるような文章しか書けない毎日でした。なので、ただただ、今日の出来事や自分のことをそのまま真っ直ぐ伝える姿が新鮮だったのだと思います。

だから私は、久々に全くスッキリしたお気持ちで「ほんとうに、すてきですね」とお伝えしたところ、彼女はほんとうにすてきなスマイルを贈ってくれました。いちばん嬉しかった。

新しい人に出会うこの時期、いつもよりまして「コミュ力」という言葉が飛び交います。誰もがこの能力を欲しがって、伸ばそうとします。ないと生きていけないと思うから。

残念ながら私は、話す力も、聞く力も、話を上手く広げる力もあんまりござらんです。相手にどう思われるか気にしすぎたり、協調したり、あえて主張したり、いろんな意識を張り巡らせてがんばって通り抜けてます。

でもたまには全部忘れて、
「ねえ、それなに?」
「私こんなことできるよ。」
「わあいいねえ」
と言いたい。

そして「すてきですね」と言って、静かなスマイルを返してもらう。たったそれだけのキャッチボールに心を動かされました。

インドありがと

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