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銭湯という世界に行く話。

たくさん働いて、やっとたどり着いたお休み。疲れ果てて、でも家にこもりたくなくて。思いついたのは、銭湯。近場の小さな銭湯もいいけれど、たまには少し遠出をして大きなスーパー銭湯に行ってもいいじゃない。

新しい手ぬぐいを握りしめて、電車を乗り継ぎ、せっせと向かいます。そのスーパー銭湯は、小さいころ家族でよく来た思い出の場所。でも今日は一人。もう大人だから、自分で券売機でチケットを買うんだ。

休日なので、家族連れでいっぱいでした。子供の笑い声、親子のお喋り、おばちゃんの世間話。皆んなの声が湯気と混ざって、暖かくて、なんとなく楽しい。

お湯の中で足を伸ばす。とっぷり浸かって、いい具合に茹で上がって、出て行くと、また新しい人がその場所にゆっくり入りに行く。お湯も人も、ゆるゆると流れて、疲れも流れて、いい気分。

しばらくすると夜も深くなって、家族連れや友達同士のお客さんは帰っていきました。飽きもせず私はお湯に浸かっていたのですが、ふと周りを見渡すと、皆んな一人で浸かっています。

広いお風呂にぽつんぽつんと、各々でのんびりする皆さん。お互い知らない人。でも同じお湯に、裸んぼで浸かって、ゆったりとしている。他の人にぶつからないように、なんとなく丁度いい間をあけて。小さな地元の銭湯なら誰かが「いい湯だわねえ、」なんて話し出すけど、そんな感じはなくて、皆んな気をつけながら静かにくつろいでいました。

…皆んな、なにを考えているのかな、どんな人なのかな。

ふとそう思うと楽しくなってきます。皆んな一人一人温かいお湯で心もゆるゆるになって、明日のこととか、仕事のこととか、誰かのこととか、将来のこととか、考えているのかな。いや、なにも考えてないかもしれない。

この中にもしかしたらめちゃくちゃ偉い人がいるかもしれない。喋るとめちゃくちゃ面白い人がいるかもしれない。ちょっと奇抜なファッションの人がいるかもしれない。気難しい人、お気楽な人、しっかりした人、ちょっと抜けてる人。。関わったら色々な化学反応が起きるかもしれない。。。

でも、今は黙って銭湯。

一人一人が別世界。みんなそれぞれの宇宙を頭の中に抱えて生きている。普通なら人と人は、少しずつ心の扉を開いていって、長い時間をかけて、お互い安心出来るようになる。でもここでは、全く関わらないからこそ、みんな安心していて、なんと、すっぽんぽんになっている!ルールは静かにのんびり近くに居るだけ。そして、気づいたらいなくなってる。

お湯から出れば、皆んなそれぞれの世界に帰っていく。ビールを飲んだり、誰かと話したり、仕事をしたり、笑ったり怒ったりする。お湯に浸かってるとき考えてたことなんて忘れてしまう。

銭湯って、不思議な世界!

そんなことを考えていたら、茹で上がりましたので、私もここからさよならします。湯気の中を、出口に向かってスタスタ歩いて、ガララと扉をあけて、戻っていく。

ふう、いい湯だった。

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