台所に立つと

台所は、昭和の主婦の孤独な戦いの場。

台所に立つと、私の大好きおばあちゃんがでてきて、私の胸の中で

「ごくろうさん」

リンゴの皮をむいてると

「あら、じょうずになったじゃない」

私が6歳のときに天国に行ったイケメンおじいちゃんがその隣にいて、

「こんなものも作れるようになったのか!」



以前「大好きおばあちゃん」というタイトルの記事を書いたが、
「大好きなおばあちゃん」では断じてない。

「大好きおばあちゃん」だ。
「な」は必要ない。

大好きなパンケーキ
大好きなニットワンピ
大好きな太陽のKomachi Angel

そういうのと違う。

ふんわりオムレツ、三角チョコパイ、大好きおばあちゃん だ。
ミセス大好きおばあちゃん。

切っても切れない。あとからついたもんでもない。
生まれたときから大好きおばあちゃん。


10年くらい前、TVショッピングで、「リンゴの皮むき器」というのを紹介していた。
リンゴを設置して、ついてるレバーをくるくると回すだけでリンゴの皮がむけるというものだ。

それを見ておばあちゃんは
「人間やめたほうがいいね」
と言った。

おそらく、人間の手があるならちゃんと包丁でむきなさいよ、レバーをくるくる回すなんて猿でもできるでしょ、という意味で言ったのだろうが、

台所に立って
野菜や果物の皮をむこうとするといつもその言葉を思い出す。
そして、時間があるときはピューラーでなく包丁でむくように心がけている。

SNSとか家電とかアプリとか、便利で効率的なものはなるべく生活に取り入れていきたいのだけれど、

台所に立つときだけは
大好きおばあちゃんと一緒に、人間くさい料理をする。

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