0005 キコ・コスタディノフ:Stussyコラボレーション

 しばらく期間が空いたが、また2053のメモから少しずつ書き出して行く。今回は画像を多めに、文字量はいつものように3000字を目安として書いた。今後はよりコンスタントに、より手軽に書いていく習慣を身に着けていければと思う。

キコ・コスタディノフ:Stussyコラボレーション

 一番最初の記事「0001 キコ・コスタディノフ:アイトア・スループとアクロニウムの系譜 1」ではキコ・コスタディノフ(Kiko Kostadinov)の生い立ちからセントマーチンズ入学までの経緯を大まかに書き記した。今回はCSM入学後の活動にフォーカスを当てて、キコ・コスタディノフというデザイナーを掘り下げていく。

 キコ・コスタディノフの名をファッション界で一躍有名にしたのは何と言っても、Stussyとのコラボレーションだろう。スウェットパーカーTシャツをカットし再構築したアイテムは数量限定で発売されるやいなや完売したという。元々は2013年にキコがアシスタントしていたステファン・マン(Stephen Mann)の元にSHOWstudioから「Stussyのロゴを使って何かできないか」という話が来て、そこにgimme5のマイケル・コッペルマンの提案でキコが加わったという。その後、2015年に行われたStussyとのプロジェクトはキコが先導して行い、即完という偉業を達成した。この時キコはいちセントマの学生であったが、i-Dをはじめとするメディアでも取り上げられ、一躍名を知られることとなった。このキコ先導の裏にはステファンやマイケルらのある企てがあるのだが、それについては追って触れるとする。

 というわけでStussyとキコ・コスタディノフのコラボレーションは計2回行われている。最初の作品は2013年にSHOWstudioがステファン・マンに依頼したCLASH magazineのエディトリアルのために製作したピースである。この時、キコはステファンのアシスタントとしてStussyのスウェットをリメイクしている。

 その後、2015年のStussy 35周年アニバーサリープロジェクトに伴い、Stussyサイドから正式にSHOWstudioに前回のリメイクアイテムを販売したいという話が来て、マイケル・コッペルマンがキコにパーカーとTシャツのコレクションをやらないかと持ちかけたという。この時キコはセントマのBA卒業後にマスターコースに進学するか悩んでいたが、マイケルをはじめプロジェクトに関わっている人たちが提案した「StussyのコラボコレクションでキコのMAの学費を稼ぐ」というアイデアのおかげで、そのほとんどの学費をまかない、無事進学できたという。

 最初のアイテムはStussyのロゴを壊すというコンセプトのもと即興で再構築されていたが、このコレクションではキコ自身の興味に基づいた「信じられる(believable)」なテーマを盛り込まないといけないと考え、その当時気に入っていたリチャード・セラ(Richard Serra)ローレンス・ワイナー(Lawrence Weiner)の作品を参考にデザインを考えたという。

 写真を比較すると分かるように、円形の切り替えはリチャード・セラの作品「Torqued Ellipses (1996)」をモチーフにしていると思われる。

 またこの作品を見た人の中にはコム・デ・ギャルソンの青山店を思い浮かべた者もいるのではないだろうか。川久保玲がこれをインスピレーションとしたかは定かではないが、このようにファッションや建築を読む行為もそれらを楽しむ方法の一つだと私は思う。

 次にロゴやタグが付いた生地がテープ状に裂かれ、縫い合わされている様子はローレンス・ワイナーのタイポグラフィー作品の影響が見られる。服を縦に裂き、ロックミシンで縫い代を外にして縫い合わせる手法は2013年に製作したアイテムから引き継いで行われている方法で、初期のキコ作品の代名詞ともなっている(他に友人のためにカスタムしたcav emptのロングスリーブシャツなどがある。作って貰った友人がGRAILEDに出品してしまうのはどうかと思うが…)。

 また、Hyukohのボーカル、オ・ヒョク(Oh Hyuk)がセカンドシーズンのTシャツと共に着用しているパンツはキコが特別にDickiesを同様の手法でリメイクした作品である。

 2015年のコラボレーションコレクションはStussy 35周年記念プロジェクトの一貫として発表され、ロンドンのMachine ADover Street Market New YorkDover Street Market Ginzaの3ヶ所で順に販売された。それぞれ展開するアイテムは異なり、ルックも店舗ごとに別のものを撮影している。

Machine-Aバージョン
 ロンドンのセレクトショップMachine-Aでは2015年1月9日にこのプロジェクトの第一弾が発売された。モデルを務めるのはキコとステファンのアシスタントを務めていたメンズウェアのファッション学生/モデルのレイ(Rei Delos-Reyes)である。

DSMNYバージョン
 こちらは2015年6月4にDover Street Market New Yorkにて発売開始され、10セットの双子というコンセプトのもと(10種類を2つずつで計20ピース)製作された。

DSMGバージョン
 こちらはDover Street Market Ginzaにて発売されたコレクションで、写真はthem magazineエディトリアルとして撮影され、掲載されたものである。とあるサイトによれば2015年11月15日発売とあり、3店舗のうち一番最後に製作されたこのバージョンは、他と違いブリーチ加工が施されているのが特徴である。木枠に服を巻き付けタッカーで固定しランダムにブリーチする手法はキコが当時リサーチしていたもので、後に自身のブランドのセカンドコレクションでも同様の手法が使われている。木枠とタッカーを利用したのは内装業を営む父の仕事を手伝っていた馴染みからだと予想できる。

 このようにキコ・コスタディノフはストリート側から名前を知られるようになり、MA卒業コレクションとそれに続くワークウェアスタイルで新たなアイデンティティを獲得してメンズウェア界に現れたと言える。ここ2シーズンはワークウェア寄りのアイテムも出しつつ、Asicsとのコラボレーションを通してアウトドアに適したスポーティなアイテムが増えてきた印象がある。実際、00052018 "Obsecured by Clouds"(AW1819)は山登りや川下り、ブルガリアで見つけてきた伝統的な壺などをインスピレーションにコレクションを制作し、00062019 "Interviews by the River"(SS19)ではMartin Kippenbergerの作品「The Happy End of Franz Kafka's America」における多種多様な就職面接の場面とガンジス川のイメージを(タイトル通り)かけ合わせ、エスニックとスポーツの要素を持ったコレクションを作り上げた。そのテイストの変化には毎度驚かされるが、この話はまたの機会を設けるとしよう。


参考資料:
GRIND 2018年4月号
https://i-d.vice.com/en_uk/article/8xnx53/central-saint-martins-student-kiko-kostadinov-on-collaborating-with-stussy-to-fund-his-masters
https://www.highsnobiety.com/2015/06/07/stussy-kiko-kostadinov/
https://hypebeast.com/2015/1/kiko-kostadinov-x-stussy-2015-35th-anniversary-capsule-collection
http://www.inventorymagazine.com/features/kiko-kostadinov-for-stussy.html
https://www.theartstory.org/artist-serra-richard.htm
https://tenpomap.blogspot.com/2015/11/dsm-ginzadsmg-x-stussy-35th-anniversary.html

 今回はキコのStussy関連プロジェクトを中心に、アート作品の参照にも注目して書いてみた。この文量だとアート作品の方は紹介しきれないので、今後個別に詳しく書いてみようと思う。「何かに対して興味を持った人がそれを調べていく過程で別の知識を身に着けてしまう」。そのような体験が増えることを願いながら、私は今日もリンクを紡いでいる。今の所、キコ・コスタディノフの記事しか書いていないが、ある程度吐き出したら他のことについても書いていこうと思う。

つづく。


キコ関連記事のリンク
0001 キコ・コスタディノフ:アイトア・スループとアクロニウムの系譜 1
0002 キコ・コスタディノフ:アイトア・スループとアクロニウムの系譜 2
0003 キコ・コスタディノフ:アイトア・スループとアクロニウムの系譜 3
0004 キコ・コスタディノフ関連文献

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yuri

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