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ウェストチェスター慈善団体が強硬派親パレスチナ団体への資金援助を管理

The Jerusalem Post 2024年2月2日の記事の翻訳です。記者:LUKE TRESS/JTA
写真:イスラエルとパレスチナのテロ組織ハマスとの紛争が続く中、2023年11月11日、ベルギーのブリュッセルで、ガザ地区のパレスチナ人を支援する抗議活動に参加する人々。
(写真提供: YVES HERMAN/REUTERS)

親パレスチナ団体にとって、資金援助とは、税控除の対象となる寄付金や助成金を受け取ることができることを意味する。

金曜日にコロンビア大学で「インティファーダのグローバル化」を求める集会が予定されているが、これはWithin Our Lifetime(我々の世代で)と呼ばれるグループが、支持者をキャンパスに連れてきて、同校による親パレスチナ団体の活動停止に抗議する為のものだ。

このグループはここ数ヶ月、ハマスの10月7日のイスラエル侵攻を支持し、イスラエル抹殺を求めるデモ行進や破壊的な抗議活動を頻繁に行なっていることで知られている。

この団体は、現在コロンビアで活動停止中のStudents for Justice in Palestine(パレスチナ正義のための学生運動)の元リーダーが共同で設立したもので、その全国組織は10月7日の侵攻を "歴史的勝利 "と称賛している。

10月7日以降の数ヶ月間、両団体はニューヨーク市内外において、公の場で最も目立つイスラエル反対派のひとつとなった。しかし、目立つ存在であるにもかかわらず、その財政や内部活動を追跡することは難しい。

何故なら、両者とも、数十年前にイスラエルで暮らした経験もあり、現在の反シオニスト的見解を持つに至った左翼ユダヤ人活動家、ハワード・ホロウィッツ(Howard Horowitz)が会長を務めるウェストチェスターにある、知名度の低い小さな非営利団体を通じて全ての寄付を行っているからだ。

ホロウィッツは『the New York Jewish Week』紙に、イスラエルは「私が信じ、大切にしているユダヤ人の価値観に従えば対等に受け入れられるはずの人々を、追い出し、財産を奪い、人間性を奪い、そして今や絶滅させている」と語った。

10月7日のガザ地区のハマステロリストによる致命的な攻撃の後、イスラエル南部のキブツ・クファル・アザで家屋が破壊された。(2023年11月2日撮影、ロイター/エブリン・ホックスタイン撮影)

そして、ホロヴィッツは10月7日のテロを非難しながらも、彼が大量虐殺と呼ぶイスラエルの対応に対する恐怖はすぐに怒りに変わると付け加えた。

10月7日の虐殺後の怒り

「10月7日は恐ろしく、精神的に打ちのめされるような出来事だった。」と彼は質問に対する長いメールに書いた。「ハマスが犯した残虐行為に恐怖を覚える一方で、なぜパレスチナの戦闘員達がゲットーの壁から抜け出したのかを理解することが重要だと思う。ハマスの残虐行為に対する私の怒りは、イスラエルがジェノサイドの実施を発表し、実行に移すとそちらへと向いた。」

ホロウィッツは市場調査員であり、ウェスパック(WESPAC=the Westchester People’s Action Coalition Foundation)として知られるウェストチェスター人民活動連合財団の理事長を務めている。1974年に設立されたウェスパックの指針は、"不正義、差別、戦争、気候変動の原因に対する非暴力抗議 "だと彼は言う。

このグループはまた、Within Our Lifetime、National SJP(パレスチナ正義のための学生運動)、その他の親パレスチナ団体の資金援助のスポンサー(非営利団体が、非営利団体としてのステータスを持たない他のグループに代わって寄付を集める取り決め)を務めることで、その財政的支柱としての役割を静かに果たしている。ウェスパックの収入は2019年以降、2倍以上に増加している。

親パレスチナ団体にとって、資金援助は、税控除の対象となる寄付金や助成金を受け取ることができることを意味する。また、非営利団体に求められる、運営予算、総資産、支出などの税務書類を提出する必要もない。同様に、資金援助をするスポンサー側は、資金を集めている団体の詳細を説明する必要もない。

ウェスパックは資金援助を公表していない。National SJPとWithin Our Lifetimeの場合、(ウェスパックとの)関係を示す唯一の証拠は、オンライン寄付ページの下にテキストが一行あるか、寄付金の領収書にウェスパックの事務所の住所が記載されているだけである。両団体はコメントの要請に応じなかった。

ホロウィッツは『the New York Jewish Week』紙に、今回の資金援助はウェスパックの目標である "戦争、不正、環境破壊の犠牲者として認識されていない人々 "を支援することに合致していると述べた。また、この団体の「平和と正義の使命は我々の使命と一致している」また、「非暴力の原則は我々の原則と一致している」と述べた。

ウェスパックの事務所はホワイトプレーンズにあり、グループのルーツは反ベトナム戦争と公民権運動にあるとホロウィッツは言う。彼はエルサレムやキブツでの暮らしを経て、1970年代にこの活動に参加した。ニューヨーク出身の正統派ユダヤ教徒の家庭で育ったホロウィッツにとって、世俗的なイスラエル人の中で暮らしたことは大きな転機となり、ホロウィッツの考え方に新たな変化をもたらした。当時右傾化が進んでいたイスラエル、特にパレスチナ人に対する政策に幻滅したのだ。

「私のシオニストとしての信念は、歴史的事実によって打ち砕かれた」と彼はメールに書いた。彼がイスラエルに反対するようになったのは、ユダヤ人とパレスチナ人の別々の国家に分割することを勧告した国連の投票に従ったイスラエルの建国までさかのぼると説明した。

「分割計画は、パレスチナ人から家、生活、土地を奪った。パレスチナの人々がイスラエルの誕生を指して使う「大惨事」を意味する言葉を使って、「これがナクバだった」と付け加えた。

ホロウィッツの親パレスチナ的スタンスは、ウェスパックの専務取締役で唯一の従業員であるナダ・カデルと同様である。カデルはパレスチナ人のルーツを持ち、ヨルダン川西岸とイスラエルに親戚がいると、地元紙『Lohud』が伝えている。ウェスパックは以前からパレスチナ人や、BDSとして知られる反イスラエルのボイコット(Boycott)・投資撤退(Divestment)・制裁(Sanctions)を支持するキャンペーンを展開してきた。

カデルは10月7日の攻撃を非難し、10月10日の声明で、ハマスとイスラエルの両方による「人道に対する罪」を非難した。彼女はイスラエルを「民間人に対する無差別かつ意図的な爆撃」と非難したが、イスラエルはこの非難を激しく否定している。彼女は「ガザからの攻撃には背景がある。」とも述べている。

「私達は民間人への攻撃やいかなる暴力も容認しません。私達は、抑圧、不正、アパルトヘイトにその根本原因があることを認識しています」とカデルは書いている。

ウェスパックが親パレスチナ活動を支援する主な手段のひとつは、資金援助である。The Anti-Defamation League (名誉毀損防止同盟)は2022年の報告書で、ウェスパックはイスラエルとパレスチナの紛争に関連する合計15のグループを後援しており、これは他のどの運動よりもはるかに多いと述べた。全部で何団体を後援しているかは不明である。

他の団体の中には、US Palestinian Community Network(米国パレスチナ人コミュニティー・ネットワーク)、International Jewish Anti-Zionist Network(国際ユダヤ人反シオニスト・ネットワーク)、Palestinian Feminist Collective(パレスチナ人フェミニスト集団)、Palestine Freedom Project(パレスチナ自由プロジェクト)、Adalah-NY(アダラー・ニューヨーク)があり、これらは全てウェスパックを通じてオンラインで寄付を募っている。ウェスパックは、アーカイブされたウェブページによれば、少なくとも2019年からNational SJPを、2020年からWithin Our Lifetimeを後援している。

「ウェスパックは反イスラエルだけの団体ではないが、同団体が財政的に支援する団体やプロジェクトの多くが、反ユダヤ主義を繰り返し広めたり、イスラエルに対する暴力を呼びかけたりしていることは、非常に憂慮すべきことだ」と ADL の報告書は述べている。「ウェスパックがこれらの団体を行政的に支援することで、左翼の言論空間で扇動的で時には反ユダヤ的な言語が問題となり続けている。」

しかし、その管理支援はウェスパックのウェブサイトや税務書類からは明らかではなく、同社が幅広い親パレスチナ活動家への寄付金を受け入れ、分配していることを示すものは何もない。ウェスパックは、財務情報が公開されている最新の年である2021年に107万ドルの収益を上げており、これには寄付金と助成金75万ドルが含まれている。また、資産は105万ドルに上る。

この収入には、ウェスパックが資金援助のスポンサーシップをする事で得た収入も含まれている、とフィランソロピー・アドバイザーであり、非営利団体に関する5冊の著書を持つダグ・ホワイトは言う。資金援助のスポンサーシップは、法的には「多くのグレーゾーン」を残す、と彼は言う。関係する組織は関係や取引の詳細を明かす必要がないためだ。

「パレスチナのグループの手に渡るお金を追跡する法的な方法は実際には存在しない。」「その結果、ベストプラクティス(最善慣行)に委ねられる。」資金援助者には活動について透明性を保つよう推奨しているとホワイトは述べた。

彼は、世界がイスラエルとハマスの戦争に注目し、親パレスチナ団体への注目が高まっている今、ウェスパックにとって、そのような透明性は特に必要だと語る。

「仮に私がウェスパックの責任者で、パレスチナの団体、あるいは複数の団体に資金提供しているとしましょう。そのことと、その理由を明確にします。」「年次報告書などに載せる時間がない場合は、ウェブサイトに、私達は、これが今、大きな話題になっていることを理解しています。私達が何をしているのか、そしてなぜそうしているのかを理解してもらいたいのですと載せます。」

資金援助のスポンサーを務めるユダヤ系非営利団体ジャンプスタート・ラボのジョシュア・アヴェドン最高経営責任者(CEO)も、広く受け入れられている最善慣行のガイドラインによれば、資金援助者と支援を受ける団体は、その取り決めを公表すべきだと述べた。

「資金援助者が何をすべきか、何をすべきでないかについての厳格なルールは実際には存在せず、少々無法地帯のような状態だ。ベストプラクティスはある」とアヴェドンは述べ、「透明性の欠如は危険信号だ」と付け加えた。

非営利団体であることを明示せずに資金を要求する団体や、スポンサーとして活動しているが誰のためのスポンサーなのかを言いたがらない団体は、どちらも業界のベストプラクティスの範囲内で活動していない兆候です」と彼は言う。

National Students for Justice in Palestine(パレスチナ正義のための全国学生運動)とPalestinian Youth Movement(パレスチナ青年運動)の寄付ページには、団体への寄付はウェスパック財団を通して行われると書かれている。Within Our Lifetime の寄付ページには、アーカイブされたウェブページによると、2022年5月までウェスパックの財政的スポンサーであると書かれていた。Within Our Lifetimeは現在、寄付のページにもウェブサイトにもウェスパックについての記述はない。

税務書類によると、ウェスパックの収益は2019年以降急増しており、同年の収益は40万ドル強だった。また、最新の税務申告書によると、経費の大半を占める事務所経費に60万ドル以上を費やしており、事務所ビルの他のユニットの家賃をはるかに上回っている。非営利団体会計の専門家であるアーサー・アレンは、IRSのガイドラインに反しているにもかかわらず、非営利団体によく見られる不適切な経費の合算が行われている可能性があると述べた。

ウェスパックへの最近の寄付者には、Jewish Voice for Peace(平和のためのユダヤ人の声)にも資金を提供している進歩的擁護団体エリアス財団、環境保護団体グラスルーツ・インターナショナル、バージニア州を拠点とする慈善団体キブラウィ財団などが含まれる。ニューヨークの非営利団体であるスパークプラグ財団は、2022年にウェスパックを通じて「正義のための全国学生運動」に2万ドルを寄付したと報告しており、カリフォルニアのバフラユング基金は同年、ウェスパックを通じてパレスチナ青年運動に2万ドルを寄付している。また、カリフォルニアのBafrayung Fundもウェスパックを通じてパレスチナ青年運動に2万ドルを寄付している。

ホロウィッツもカデルも、ウェスパックの財政スポンサーに関する追加質問には答えなかった。

このグループは他の進歩的な組織や政治家とつながりがある。この地域を代表するジャマール・ボウマン下院議員は先週、アレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員と共にカデルを選挙運動開始集会に招いた。

ホロヴィッツにとって、このグループは唯一のボランティア活動ではない。彼はまた、反シオニスト団体Jewish Voice for Peace(平和のためのユダヤ人の声)の地元支部のメンバーでもある。そして彼は、イスラエルを支持する地元のユダヤ教団体の少なくとも2つで活動している: ニューロシェルのテンプル・イスラエルは最近「イスラエル国防軍にチャラ*を寄付」と題したイベントを開催した改革派の会衆で、10月7日から避難したイスラエル人とハマスの人質を支援しているウェストチェスター移民ユダヤ人連合である。
*安息日に食べる特別なパン

彼は長年にわたり、主流派のユダヤ人団体にイスラエルへの支援を放棄するよう呼びかけており、2018年の時点では、イスラエルはジェノサイドを犯していると書いていた。

「イスラエルによる暴力に反対するラビはどこにいるのか。ほとんどいない。それどころか、大多数が『私はイスラエルに味方する』という宣言を繰り返し、現地の恐ろしい事実を無視している」と彼はメールに書いた。「これはガザというゲットーの清算であり、完全な残虐行為だ。今この瞬間に起きていることを見るには、それ以外に方法はない。」

彼は更に、「今こそ『トゥシュバ』、つまり悔い改めの時だ。実際、ユダヤ人の未来はパレスチナの正義にかかっていると私は信じている。真実と和解だけが前進への道だ」と付け加えた。


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