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SS三列目で月組公演「応天の門/Deep Sea」を見てきた話

さんざんTwitterで自慢したので恐縮だが、eプラスの貸切公演で月組公演のSS席(センターブロック3列目)という良席を見事引き当てた。

https://twitter.com/yuri__full/status/1625377983853912065

マンションの共同ごみ捨て場で他人のごみを整理するなど日ごろから徳を積んできたが、ここでこうなるとは思わなんだ。(CV.光月るう)

三列目で間近に見る月組生について記憶を残しておくべく、感想を列挙したい。なお、うすうす気が付いていたが、私は演目そのものについて深く洞察したり自らの知識と併せて解釈したりといったことがどうも苦手のようだ。記憶力が悪いのに併せて、平安朝にもカーニバルの歴史にも特別な知識がないので、特段読んで面白い解釈を書くことができない。演目そのものの解釈や感想はほかの方のを参考にしてもらいたい。

トップコンビと二番手を見て感じた平和と安寧

無意識に「平和だ」「安寧だ」「ドキドキしないで見ていられる」と思ったことに、自分自身でびっくりした。自分の意識の奥深くで、やはりこの体制になる前の月組に対して、そわそわしたり不安や悲しみがあったり、何かを感じていたのだなあと思った。

れいこさん(月城かなと)

れいこさんはトップ就任して大劇場作品3作品目とは思えないほどに、どこからどう見てもトップスターで真ん中力をますます増していた。

かつて休演が長引いた時にはそわそわしたが、元気いっぱいでとてもうれしい。元気いっぱいどころか、休演を経て、クソデカボイスの筆頭に躍り出た感があってますます驚く。美貌や「魅せてくれる力」に圧倒されながらも、思慮深いこまやかな演技や声量、うたの力でも驚きをくれて、本当にありがたい。

何度も何度もこれを思う。

かの天海さんが当時の理事長(たしか)に音楽学校面接の際に「よくぞ生んでくれた、お母さん」と言わしめたのはヅカオタにとっては基礎知識のひとつだが、れいこさんに対しても劇団はそんな期待をかけているように思う。

カーテンコールのちょっとした間だったり笑顔だったり、おふざけが本当にあたたかくて人柄がよい。れいこさんのご両親に何度も心の中で感謝してしまう。

ショーでこんなにはじけるれいこさんは久々に見たきがする。近年の月組のはじけとび系ショーといえばクルンテープだった気もするが、あれはなかなか複雑な経緯があってれいこさんの笑顔を無心で見守った記憶がないのだった。私が初めて肉体に触れた(言い方)タカラジェンヌはれいこさんだが、クルンテープの客席降りでハイタッチして間近で見たれいこさんの瞳には数パーセントの遠慮と戸惑いのようなものがあって印象的だった。(なおその2日後くらいに休演なさった)

お芝居もそうだが、ショーのお化粧が秀逸で本当に好きだと思った。額の生え際のラインも髪の色もアイシャドウの色もトータルでとても現代的で美しく、天性の美にセンスと技量と相まって、感謝の気持ちでいっぱいになった。たぶん世が世なら裸眼で見ることはかなわないお人であった。

ちなみにれいこさんは、りょうちゃんもそうだったが、銀橋に出てくると「ありがとうございます!」という莫大なオーラで観客を包んで、誰か特定の人を視線でもてあそんだりはしない。公正公平第一!という感じがしてトップスターとはこういうものかと毎度思う。

ちなつさん(鳳月杏)

息を吐くように耽美。手足の動かし方、目線、歌うときの口元の優雅さ、声量と美声とビブラードの国の天使。こりゃすごいや、という感じだった。

私は桜嵐記もSS三列目で見たのだが、ちなつさんが間近にきたときの、濃い煙るような紫のオーラがなんともいえなかった。羽根を背負っていなくてもそれに相当するくらいのオーラがモワワワーと出ている。

ふだんは赤ちゃんみたいなほわほわした人なのに、こんなに濃いオーラをまとえるのは積み重ねてきた鍛錬と研究心とセンスと、複合的なものなのだろうなとひたすら放心している間に終わってしまった。見る人を圧倒させる力が群を抜いている。

ちなみにちなつさんは、銀橋にきたときに観客を視線でもてあそぶようなことはなく、ちょっと眩しそうな目をしていた。観客に指をさすようなシーンでも、いたずら心みたいなものが見えない。本当は照れながらやっているような感じがしてかわいい。

私はちなつさんが真ん中に立つ宝塚歌劇団月組の舞台が絶対に見たい。いままで一万回くらい思ってきたけれど、改めてそう思った。本当にすごい人だと思う。れいこさんとちなつさんの組み合わせが、こんな相乗効果を生むとは思わなかった。ちなつさんはれいこさんより上級生だけど、お互いをすっごく尊重して、尊敬して、認め合って、それで気が合って仲良しで大好きなんだろうなというのが透けて見えてよい。

長くなったが、ちなつさんが女役、れいこさんが男役で組んだデュエットダンスは本当にすさまじかった。

https://twitter.com/yuri__full/status/1625435818763632640

「固唾を飲んで見守る」空気が大劇場いっぱいに満ちて、それまで我慢していた一列目の観客も、抑えきれない衝動に身を任せるように、オペラを構えた。

あれだけのためにお金を払えると思った。

海ちゃん(海乃美月)

海ちゃんは努力の人、というイメージがある。生まれつきの資質にあわせて、この美しい体型を保つのには相当努力をしていると思う。

海ちゃんはまじめで、芸達者で、でしゃばらず自分を出さず、一歩下がって男役さんを盛り立てて……というイメージだった。とても好ましいのだけど、ちょっと物足りないようなときもあった。

アンナカレーニナのような狂気や覇気がギンギンにくるようなお役が見たいなと思っていた。ロマンス劇場や今年の元旦の鏡開きのあたりから「海乃美月=実はお転婆で気が強い」のエッセンスが出てきて、非常に良い。

そこにきて今回のお役、芝居もショーも大変に似合っていてよかった。芝居で去り際のせりふが毎回似通っていた点は脚本家の先生に少々説教をしたい気分でもあるが、間近で見る海ちゃんは、とにかく想定外の顔の小ささと長い手足、白い肌で段違いの美女だったので、すべてを帳消しにしてくれた。

宝塚歌劇団は海乃美月のおへそに過大な信頼と好感を寄せているようで、ダルレークに引き続き、今回も美しいおへそを披露してくれている。マーメイドのシーンはストッキング地のトップスのおなか付近からおへそが透けて見えるのだが、薄く細すぎるウエストと美しいおへそが相まって、すごい!すごい!と脳が過剰反応し、三列目なのに迷わずオペラを構えた。ご本人はきっと気づいて、嫌だっただろうと思う。

歌ってもよし、踊ってもよし、安定感があってドキドキしないで見ていられる。ありがたい。ドキドキしないので集中して放心できる。銀橋でのデュエダンは勢いとスピードがあって間近で見ると「!?!?!??!」というかんじなのだけど、海ちゃんなら大丈夫、という謎の安心感で見ていられるのもすごかった。(のちに、終演後レポートでも自分自身で「意外とこわくない」とおっしゃっている)。間近で見る、鍛えられた美しい人たちのデュエットダンスは大変に素晴らしかった。「ああ、これを見るために私は今まで頑張ってきたんだなあ」と、謎に自分を褒める気持ちが湧いてきて感無量だった。

海ちゃんが放つ安心感が、トップと二番手の技術を集中してみていられる基盤のようなものを生み出していて、うまいことこの三人が並んだよなあ、この時代に宝塚を見れていてよかったなあとまで思う。

思った、思った、でワンパターンな日記になってきたので、そろそろここで終わりにする。長くなったので、ほかの記事はまた別でエントリーしたい。


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