お金を出すとは、最高純度の自分と向き合うこと。〜五番街のCHANELが教えてくれたこと〜

「ゆりは、NYで自分の人生の象徴になるモノを買ってきたらいいね」


それは、尊敬する友人Eの言葉だった。
私は、鑑定業で行くところまで行く!世界に羽ばたく人の背中を押せる人になる!と決め、その覚悟の証として、それまでに自分の稼いだ鑑定料をドバーーっと使って、NYに一週間の一人旅に行くことを友人Eに報告したのであった。


「ゆりが今、一番欲しいものは何?」

「・・・CHANELのチェーンウォレット・・・」

「じゃあ、それだ笑❤️決まり!!」


私は、即答出来ず、マジかーマジかーー、と言って唸ってしまった。
そのときの私は、ちょうど一ヶ月前にBVLGARIの財布を新調したばかり。
そして、CHANELのチェーンウォレットとは、少し大きめの財布にチェーンがついている代物で、まるで小さなバックのように使える財布であり、
現金とカードの他には、スマホ、鍵、電子マネーくらいしか入らなさそうである・・・
死ぬほど可愛いけど、全く使いこなす自信がない・・・。



電車の中で暇だと困るから~と文庫本を持ち、
喉が乾くと困るから~と水筒やペットボトルを持ち、

そんな私が、
その全てを捨てた生活が出来るのだろうか・・・

その思いをEに伝えると、彼女は、真っ直ぐな瞳で私を見据えた。

 

「ゆりは、なんでCHANELのチェーンウォレットが欲しいの?」


「ココ・シャネルの生き様が素敵なの。彼女を尊敬していて、私も彼女のように潔く生きていきたいから、いつかシャネルのバッグ、その中でも私が一番可愛いと思っているチェーンウォレットが欲しいの」

「それなら、ゆりにとって、そのウォレットは、ココ・シャネルへの尊敬と追悼の象徴じゃないの。その自分の気持ちに大金を払えない、そして、自分がココ・シャネルのように生きたいと願う気持ちにも大金を払えない、そんなゆりに、一生ココ・シャネルなんて無理だよ」

「・・・(絶句)。これだけ大金払って使いこなせなかったらどうしよう泣」

「あはは笑!使いこなすゆりになればいいだけ。そのチェーンウォレットに入るものしか持ち歩かない、そのウォレット一つでどこにでも行けるゆりになったら、きっと新しい世界が広がるよ。楽しみだねーーー」



毎度、毎度、Eには敵わない・・・なんて素敵な友人なんだろう。
そう思いながら、その日もEの家を後にし、
すぐに渋谷のデパートに直行してCHANELのチェーンウォレットをチェックした。



か、可愛い・・・
そして価格は約25万。
NYで買ったらもっと高いな・・・(当時は円安)
っていうか、1ヶ月前に買ったBVLGARI勿体無いー・・・
無駄ーーーー!!泣



私の心臓はバクバクしながらも、
すでにNYでCHANELのチェーンウォレットを買う決意を固めていた。





「NYに到着して朝一番、五番街のCHANELでチェーンウォレットを買う。そして、それを使いこなす私になる。」






私は、NYに飛び立った。
真冬のNYの朝は快晴だった。
早く目が覚めた私には、もう恐怖はなく、ワクワクだけで朝一番の五番街のCHANELに乗り込んだ。
さぁ、買うぞ!!!




・・・あれ、チェーンウォレットが無い・・・



えーーー、嘘でしょ!
ここまで来て、嘘でしょ!!
こんな覚悟までして、嘘でしょ!!!






慌てながら、店員に尋ねると、
「チェーンウォレットはこちらです」
と、見たこともないチェーンウォレットを数点出してくれた。




なんだこれは、、、
見たことない。
でもチェーンウォレットだし・・・



片言の英語で、
日本に展開しているチェーンウォレットは無いのか、
このシリーズは何なのか、
と質問すると、


「日本に展開しているチェーンウォレットは、たまたま今日の五番街には在庫が無い。
今日あるのは、その上のラグジュアリーラインね。」



ラグジュアリーライン・・・
頭がクラクラした。
値札を確認すると、びっくりするような数字が印字されていて、
こっそりiPhoneの計算機能で円に変換すると、
「45万円」
と表示された。


ちょっと、ちょっと落ち着こう・・・
外のカフェでコーヒーでも飲んで、ちょっと考えよう・・・




店の出口に向かうと、
体格のよい男性のガードマンがドアを開けてくれた。
NYの街には陽が差し込み、積もった雪がキラキラと反射していた。
私はその景色に踏み出そうとして、
どうしても、最後の一歩が出なかった。






「NYに到着して朝一番、五番街のCHANELでチェーンウォレットを買う」






日本でそう覚悟した自分の気持ちを反芻していた。
私は日本で展開しているチェーンウォレットが欲しかったのか。
少しでも安いチェーンウォレットが欲しかったのか。
私のチェーンウォレットは、ココ・シャネルのように生きたいと願う私の人生の象徴じゃなかったのか。
私は、自分の人生の象徴に45万円すら払えないのか・・・





外に出て落ち着くのを止め、
私はその場でラグジュアリーラインのチェーンウォレットを買うことに決めた。




お試しなのだ、何もかも。
私が本当に本当に本気なのか。


一ヶ月前にBVLGARIの財布を新調したのに、それでも買うのか?
日本で買えばちょっとは安いのに、それでもNYで買うのか?
五番街にはたまたまラグジュアリーラインしかないけど、それでも今日買うのか?





あなたはそれでもやりますか?
その覚悟、ありますか??





私は、私に試されている。
私が、私の本気を本気で試している。
ここで、私が楽な道に逃げたら、
きっと
「私は、私に見限られる」



その感覚が内側にぶわーーっと浮き上がって来た。
それは恐怖ではなく、愛だった。
それでも自分を愛せるか。
お金よりも自分を愛せるか。
自分自身を信じて、大切なお金を一気に払えるか。





私がNYの五番街で向き合ったのは、
CHANELのチェーンウォレットではなく、
自分自身だった。





ラグジュアリーラインの中から、
同じデザインのネイビーとブラックで30分悩んだ。


店員さんに、
「どっちが私に似合う?」
と聞いても、肩をすくめて、
「どっちも」
と答えるだけだった。


この店員さんは、
プラダを着た悪魔のメリル・ストリープみたいな人で、
完全にタダ者ではない店員さんだった。
日本から来て片言の英語しか喋れない小娘が、
全身CHANELのメリル・ストリープに食い下がってアドバイスを貰う余裕はなく、
一人で悶々と鏡に向かった結果、
私はブラックを選んだ。



震えながら、
「・・・私、これ買うわ」
と告げたとき、
メリル・ストリープはクールな笑顔で、






Your choice is perfect.






と一言放った。
私はそれを聞いた瞬間、全身に鳥肌が立って、
もうしばらく店内で放心していた。





何分経っただろうか、
大きなCHANELの袋を抱えたメリル・ストリープが帰って来た。



「この子はね、今朝の開店前にたった一つだけ届いたのよ。
ネイビーは何個か在庫があったけれど、ブラックは今日届いたこの子だけ。
結局、店頭に出してすぐにあなたが手に取ったわ。
この子は、きっとあなたを待っていたのね。おめでとう」



メリル・ストリープの破壊力は最高だった。
私は言葉につまりながら、



「ありがとう。私はきっと、この子に相応しい持ち主になります」



とお礼を伝え、
メリル・ストリープは、そんな私の腕をさすってくれたのだった。






五番街のCHANELにいた時間は1時間足らずだったけれど、
外に出た時に見える景色は全く違っていた。
私の人生は1時間で変わったのだった。




たった1時間で人生は変わるのだ。
それは大金を払ったからではなく、
ギリギリまで純度を高めて、自分と向き合ったからだった。
あのとき、1回お店を出ていたら、
私の人生は終わっていたし、
この子も違う人の手に渡ったかもしれない。




私は、
あの日五番街のCHANELで最高純度の自分と向き合う体験を、
自分に45万円で買ってあげたのだ。
CHANELのチェーンウォレットを見れば、
あのときの体験をいつでも思い出せる。
体験だけではなく、愛すべきチェーンウォレットの形をして、
こうして私を見守ってくれる。
これがお金を出して買うということ、
これが自分にお金をかけるということ、
その真の意味がハラに落ちた1時間であった。






あれから1年。
今でも、私はあのときのチェーンウォレットを肌身離さず身に着けている。
この子に入る以上の物は持たず、
この子一つでどこにでも行ける私になった。
この子を経由して、あの日支払った45万円以上のお金が軽く循環していった。
お金はただ出せば入るのではなく、
愛を乗せて出すと、加速度をつけて回るのだと、
この子が教えてくれた。




あのとき、
一人でNYに飛び、
一人、五番街のCHANELで自分自身と対峙した自分を、
私は誇りに思う。
近い将来、この子を手放すとき、
私はあの日の自分をまた瞬間で越えていくのだろう。
今から、その瞬間が楽しみで仕方がない。


*余談だが、1ヶ月しか使っていないBVLGARIの財布は、愛すべき友人Nにプレゼントした。私の人生の転機を共に過ごした財布、あの日の五番街のCHANELを共に生き残ったBVLGARIの財布には何かスペシャルな力が宿っているとしか思えなかったから。
Nはキョドりながらも、財布を快く貰ってくれ、

「このお礼はお金じゃなくて、私にしか出来ないことで、私の才能を使って、いつか、この財布とゆりの想いに見合うもの以上のものを返す・・・私はそんな私になる!」

と語ってくれたのであった。
本当にもう!!
私の友達とは、なんて愛すべき存在なんだろう!!
人生とは、本当に素晴らしい。

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yurihestia

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コメント3件

読んでて鳥肌たちました。
すごいですね…!
ぐいぐい読んでしまった。ストーリーと覚悟のある消費、すごくかっこいい。こんな買い物してみたい。
自分の理想に飛び込んで、向き合って、そして現実のものにされたんですね...
私も理想の姿から逆算して身につけるものを選んでいこう!それに相応しい自分でいよう!と決意してしまうような文章でした。
ありがとうございました。
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