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カメラを買ったきっかけ

カメラを買ったきっかけは、高校の文化祭だった。

文化祭のオープニングムービーを担当することになり、地学の先生に監修してもらいながら、動画をつくりはじめた。

カメラなんてもちろん持っていなかったので、写真部の友人に頼んで貸してもらった。

はじめて触ってみて驚いた。見える景色が、ぜんぜん違う。

いつも見てる景色なのに、ファインダー越しの風景はまるで映画のワンシーンのようで。毎日飽きるほど居る場所なのに、シャッターを切ったとたん、目の前の景色が過去になって。「あ、いつか私はこの景色を懐かしく思うんだな」って急にしみじみとした気持ちになって。

手の中に感じるカメラの重みはまるで、子猫を抱えているような感覚だった。重たいような、軽いような。無機物なのに、なぜか温もりすら感じるような。

ムービーの準備が終わるころには、すっかりカメラが欲しくなっていた。

話がそれるけど、当時、普段の写真はすべてガラケーの中に入れていた。多くの人がそうだったと思う。だけど肝心のケータイは壊れて、データは飛んでしまった。だから、プリクラ以外に手元に残っている高校の記憶は、このときのムービー用の写真だけ。「きちんとデータを残さなきゃ」と思わせてくれるのも、カメラで撮った写真ならではの魅力なのかもしれない。


その後長い受験期間を経て、私がようやく自分のカメラを買ったのは、大学の合格発表の日だった。

ヨドバシカメラ博多店。なんども通いつめて選んだPENTAXのK-rという機種を購入した。

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はじめてカメラを手にした日からもうずいぶんと日が経つし、あまりの下手さに嫌気がさして写真から離れていた時期もある。それでもやっぱり写真が好きだし、10年前に初めてカメラをさわって感じた高揚感は忘れられない。

目の前のあたりまえの景色が、「いつか懐かしくなる」ものなのだと教えてくれるのは、いつだってカメラなんだ。


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