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人生を変える出会いだなんて言ったらおおげさだろうか

2018年、2月。就職で上京して3年、東京が嫌いだった。人が多くて、うるさくて、夜ちゃんと暗くならなくて、金曜の電車がお酒くさくて、地震が多くて、タメ口でしゃべれば「訛ってる」なんて言われて。

気づけば写真もほとんど撮らなくなっていた。人混みにカメラなんて下手に持ってって、盗撮扱いされたらどうするんだ。ビルばっかりで、知らない人ばっかりで、何を撮るっていうんだ。本気でそう思ってた。

そんなとき出会ったのが、きっちゃんだった。

きっかけはTwitter。お互いお出かけと写真が好きで、なんとなく年齢も近そうだったこともあって、「原宿でポトレ撮影してみましょう」ということで会ってみた。

月並みな言葉で申し訳ないけれど、実際に会ってみてびっくりした。

ほんとうにこういう人がいるんだ、と。

二人とも九州出身で、年齢もたったの1つ違いなのに。私から見たきっちゃんは眩しくて、「東京」に愛されてる女の子だった。

頭のてっぺんからつま先まで可愛くって、服もアクセサリーもおしゃれで個性があって、カメラを構えれば流れるような動きでポージングをする。キャットストリートをすいすい歩き、おしゃれなカフェをすぐに見つける。中身は好奇心のかたまり。人間の身体はほとんど水でできてるらしいけど、きっちゃんの場合は主成分は好奇心だ。間違いない。

美人なのに気取ったとこもなくて、お茶目な顔して「この指輪ね、安かったんよ?」なんて言うのだ。好きにならずにいられない。

初対面なことも忘れてて、気づけばたくさんしゃべってた。

その日からだ。私の目に映る「東京」の街が、だんだんキラキラしてきたのは。


富士山へ連れ出してくれたのも、きっちゃんだった。死ぬまでにいつか一度は・・と思いながらどこかめんどくさくて、ずっと先送りになっていたのだ。

がっしりした体格の男性たちが酸素不足でヘロヘロになっているそばを、一緒にガシガシと登った。ぜいぜいと荒く息を吐く人たちの隣で、「めっちゃきれい!」と目を輝かせてきっちゃんは写真を撮っていた。

日本一大きな山も、一歩ずつ一歩ずつ登ればほんとうにてっぺんまで行ける。当然の事実だけど、それを体で実感したのは生まれて初めてのことだった。いっしょに登ってくれる友達がいれば、どうやら私たちはずいぶん上まで登れるらしい。


どうやら本人は気づいてないようだけど、きっちゃんは自分で発光できる人だ。ぽんぽんと湧き出るようにすごいスピードでアイデアを思いついては、それを軽やかに叶える達人。思いつくだけでもすごい才能なのに、いつも変わらぬキラキラした目で、きっちゃんはそれを着実に現実にしていく。

誰かに光を当ててもらうまで陰でじっとしてしまうタイプの私には、まぶしいくらい。

世界一周の予定がじわじわと後ろ倒しになっている私とは裏腹に、きっちゃんはモロッコの砂漠を自分の目で見にいったし、次はマルタ留学へ行こうとしている。

やりたいことに言い訳せず、儚い夢で終わらせず、ちゃんと「目標」にできる人。

そんなきっちゃんの側にいたから、今まで誰にも言えなかったような自分の夢まで、気づいたら私も口にしていた。きっちゃんが光を分けてくれたのだ。



「キャリアの空白期間になっちゃうから、世界一周じゃなくて他のことしたほうがいいのかな」

ふと不安になって、そんな相談をしたことがあった。なんてことない会話をよそおって口にしたけど、実はそのとき、けっこう気にしてた。

「でもさ、ゆりちゃん、バリキャリになりたいわけやないやん?」

間髪いれずきっちゃんの返事。そう、そうだった。会社や家族の見栄を気にしてすぐ本心を見失う私を、きっちゃんが引き戻してくれた。すごく嬉しかったんだ。

物腰がやわらかいのにきちんと自分に芯があって、柔軟な頭と軽いフットワークの持ち主で、かわいいものを見つける感度が尋常じゃなくて、まわりまで幸せにする笑顔の持ち主、きっちゃん。

世界のきらめきを、私にも分けてくれてありがとう。これからも末長く、よろしくね。


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