社会人２年目まで、社員寮に住んでいた。なかなかに質素は暮らしをしていたのだけど、１つだけ、社員寮時代に「えいやっ」と奮発して買ったものがある。それがIKEAのウィングチェア（商品名は"ストランドモン"）。

ずっと、憧れていたのだ。この背の高い椅子に。

一目見たときから、この椅子に心奪われていた。

頭までしっかり支えてくれる大きな背もたれに、すっぽり覆われてる安心感を生み出す左右のウィング。クッションはふかふかで、そのまま座ってもいいし椅子の上で体育座りしても落ち着く。４本の足はしゅっとスマートで、可憐な細さながら安定感も抜群だ。この美しい椅子なら、シャーロック・ホームズが座っててもおかしくない。

IKEAの店頭でうっとりとストランドモンを眺めながら、妄想が始まった。この椅子に座ってふかふかのブランケットにくるまって、おいしいコーヒーを飲みながら映画を観たらどんなに幸せだろう。この椅子のうえで本を読んだら、どんなに捗るだろう。家に帰って毎日この椅子があったら、どれだけ心踊るだろうーーー

しばらく悩んだ。ひとり用のソファなんて、贅沢なんじゃないのか？自分には高すぎる買い物じゃないか？ほんとうに必要なものか？

けれど気づけばカメラロールが、ウィングチェアの写真でいっぱいになっていた。もう、心の奥底で答えは決まっていた。

寮の管理人さんに「あんた、こんなおっきい荷物届いたけど、何買ったの！？」と訝しげに見守られながら、私とウィングチェアの蜜月が始まったのだ。

実際に使い始めて、もう数年がたつけれど、やっぱり最高の買い物だった。ぜんぜんヘタれてこないし、グレーの色は汚れも目立たず、布地の毛羽立ちもあまり気にならない。

この椅子に座って見る映画はやっぱり極上だし、お行儀わるく肘かけの部分に足をのっけてぶらぶらさせながら本を読むのも幸せだ。

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余談だけど、最近このウィングチェアのキッズモデルも発売された。見た目はほとんど同じで、サイズだけが違う。もし子どもがいたら、衝動買いしてたと思う。

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日本ではなかなか見かけない一人用ソファ。なくても生きてはいけるけれど、私のなかでは全力で推しアイテムです。