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魔性の犬

我が家には時々、犬が来る。

叔母の犬なのだけれども、彼女の幼い孫が犬アレルギーな事が発覚して以来。
その子が体調を崩して面倒を見るような事態になると。

我が家に犬がやってくる。

1週間しかいない事もあるし、最大では半年近くいた。
もうそういう生活を2年程送っているので、すっかり犬に情が移っている。


ここ数ヶ月は我が家に来ていないので、1度叔母の家に顔を見に行った。

早くこっちに!とワンワン嬉しげな声を上げながら、
高速で動き回って歓迎の意を表す犬。

片手で持てる、膝にも納まる1.8kgという超小型さも相まって。
それはそれはもう、愛らしくて。

ぎゅーっと抱きしめて、もみくちゃに撫でくり回したくなる。


またいつでも我が家に来て欲しい、と思いつつ。
犬がいると、犬優先の生活になってしまうので悩ましい。

極力、家にいるようになるのは当然として。

家族全員を一部屋に集めたがる犬が。
お気に入りの和室に来るように何度も部屋に誘いに来るので…

夜に集中して作業しようと思うと、犬の愛らしさとの戦いになる。


扉からチラッと顔を出して、佇んでいたり。
それでも気づかないと、椅子の足元にやってきてジッとこちらを見上げている。

それでも無視していると、抑えた小声で小さくワンッと呼びかけてきて。

本当に忙しくて、どうしようもないとか。
手が離せないでもない限り…

どうして、この愛らしい小さな生き物に逆らえようか!!

という気分になってしまうので、よくない。
うちの根性も精神力も、犬の前ではぐにゃぐにゃだ。


膝に前足をかけて、キラキラした目で見つめてきたり。
寒い日にはお膝にぴょんと跳び乗って、腕に這い上がって抱っこをねだったり。

自分のかわいさを存分に活用している犬には、常に負けっ放しで。

食欲がない、体調が悪そうだ…となると心配で落ち着かない。
喋れない相手だからこそ、おろおろとして。
庇護を求めて膝に上がってくるので、犬の気が済むまで抱き上げて様子を見る。


過保護だ、過保護がここにいる。
そうは思っても、どうしようもない。

自分に全責任があり、相手の世界の大半を占めているかと思うと
できる限りの事をしてやらねば…と思ってしまう。

大人の人間関係だと、過保護からは全くかけ離れていて。
積極的に余計な手を出す事を良しとはしない方だというのに…

関係性が異なると、こうまで変わってしまうとは。
過保護で口煩いと思っていた母の事を、これでは笑えない。


犬は、魔性の生き物だ…。



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