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フィギュアスケートTV観戦案内(男子シングル)

フィギュアスケートを見るのが好きだ。

それを知っている友人から時々、「テレビで見ていたけれど、なんでこの選手が勝ったのかわからなかったから教えて」と尋ねられることがある。

フィギュアスケートというのはスポーツであるだけでなく、その美しさから人気のある競技ではあるけれど。たしかに好きで見ている自分であっても、まだまだ細かい採点基準の把握は難しい…という競技でもある。

だけれども、テレビや新聞ではそのことは語られない。話題になるのは「4回転を跳んだかどうか。ジャンプが失敗したか、していないか。」そればかりで。たしかに大きな得点源で、1番点数を左右するところではあるのだけれど…それだけではないのだ。

というわけで、来月9日から始まる平昌オリンピックのお茶の間観戦に向けて。男子シングルの、知っておくとより楽しめる…かもしれないルールなどについてまとめてみた。
 
* * *

<フィギュアスケートの得点源>
 

●ジャンプ
(6種類:アクセル、ルッツ、フリップ、ループ、サルコウ、トゥループ)
・難易度順に記載、左に行く程に基礎点が高い
・回転数が多い方が点が高い、また後半に跳ぶと1.1倍の点数になる
・試合で跳べるジャンプの種類や回数は決められている。

*ショート(計3回のジャンプ)
2回転or3回転のアクセル、3回転or4回転のステップから跳ぶ単独ジャンプ、2連続のコンビネーションジャンプ
*フリー(計8回のジャンプ)
1本は必ずアクセル。連続ジャンプは2連続が2回、3連続が1回まで。同じジャンプは2回以上跳んではならない。さらに3回転以上の場合、2回跳んでも良いのは2種類だけとする。そして2回のうち1回は必ず連続ジャンプにすること、連続にしなかった場合は減点。

☆GOEという評価点について
プラスの要素・マイナスの要素を勘案して、-3から+3までの数値で技が評価される。ここで点を稼げるかどうかも非常に大切。ジャンプの場合の+要素には「高さや飛距離」「着氷姿勢」「入りから出までの流れ」「難しい入り方」などの8項目がある。

◆個人的な観戦ポイント
・ジャンプの種類は踏切の仕方の違い、慣れると見分けがついてくる。前を向いて跳んだらアクセル、が1番わかりやすい。
・フリーでは連続ジャンプを全て跳んだかどうかに注目。「転倒がないのに、やけに点が出ないぞ」という時は、これを跳びきっていない可能性が高い…
・高さや飛距離、着氷後の流れの美しさなどに注目
・高いor幅があるとテンションが上がる(例:ロシアのミハイル・コリヤダの4回転ルッツ、中国のハン・ヤンのトリプルアクセル)
・助走が長いかどうか(羽生結弦君の助走の短さは本になるレベル)
・踏切前や着氷後に入るステップは難易度UP
  


●スピン
レベルによって得点が変わってくる。レベルは、「同じ姿勢で8回転」「ジャンプでの足替え」「難しい入り方」「明確なエッジ変更」「難しい姿勢」「回転速度の増加」などの様々な要件を満たしていくと上がる。

☆スピンにおけるGOE判定基準
「回転速度」「回転数」「独創性」「軸」等々…

◆個人的な観戦ポイント
・独創的なポジションをとっているとテンションが上がる
・しなやかさやスピード、グラグラ感が選手毎に違う。身体の硬いのか、男子ではポジションのキープがとても大変そうな選手も見かける…
・音楽に合わせた回転の速さ
・羽生結弦君のSP「バラード1番」には手の位置が次々に変わる素敵スピンがある

  

●ステップシークエンス
 スピン同様にレベル判定がある。 「多様さ(ターンやステップの種類と数)」「難しいターン3連続×2」「両方向への回転」などでレベルが変わる。

☆ステップにおけるGOE判定基準
「明確で正確か」「無駄な力が無い」「スピード」「流れ」「独創性」等々…

◆個人的な観戦ポイント
・上半身の振り付けではなく、足元に注目!!!
・スピードに目が追いつかないので、ターンの種類は気にしない。有名処では「片足でクルクルクルと回ればツイズル」「足を外側180度に開きツーっと滑るとイーグル」「片足で滑っていて急に前後が入れ替わったらブラケット」
・気になるのは滑らかさやスピード
・パトリック・チャンのステップは素晴らしいので、ぜひ上半身より足元を…

* * * 

書いていて自分でも思ったのだが、長い。細かい。もしかしたら「マスコミがジャンプにしか言及しないのも納得だわ…」なんて思われたかもしれない。しかしここに記載したのは、ほんのごく一部。

目が滑っても良いから、もっと詳しく知りたいという方はこちらもどうぞ。

テクニカルパネル ハンドブック
http://www.jsfresults.com/data/fs/pdfs/comm/2017hb-singles_ja_r2.pdf

GOE採点のガイドライン
http://www.jsfresults.com/data/fs/pdfs/comm/comm2089j.pdf

 
また試合後には下記のような、プロトコルと呼ばれるジャッジスコアが出るので。興味を深めたいなら、これと演技を見比べてみることから始めるのも良いかもしれない。(試合が終わってしばらくしてから、TwitterとかYahooリアルタイム検索でプロトコルで探すと簡単にみつかる)

例)2017世界選手権/男子フリー プロトコル
http://www.isuresults.com/results/season1617/wc2017/wc2017_Men_FS_Scores.pdf

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フィギュアスケートは選手毎に、得意とする技術や表現したいこと…それから戦略なども違う。だからジャンプや点数以外にも…

・足元の滑りの滑らかさ、複雑さ、表現
・振付け、上半身の動き
・手指や腕の使い方
・表現スタイル
・スピード感
・ジャンプの幅や高さ
・衣装
・音楽との一体感
・戦い方、ジャンプ構成
・プログラムや使う音楽

こういった部分での個性の違いが、見る側の楽しさになっている。それぞれの選手の特徴を見ながら、「自分はこの中の何を重視しているのか?」「何が際立っていると素敵だと感じるのか?」を考えてみるのも面白い。


ちょうど今週は四大陸選手権が開催されているし、来月はオリンピックだ。この記事を機会に、チラッとでもフィギュアスケートへの興味が増す人がいてくれたら…とても嬉しい。



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ちなみに、これは男子のルール。女子はまた微妙に違ったりする上に…アイスダンスなんかは見るのは好きだけれども、ルールはもうさっぱりです。

でもアイスダンス、オリンピックの最終グループに残るレベルのカップルはみんなすっごい素敵なんで!!良かったらぜひ、普段はなかなか放送のないシングル以外も見てみてくださいね…!

パパダキス&シゼロンのまるでフィギュアスケートという枠を超えた1つの舞台を見ているような、シームレスな演技に。カッペリーニ&ラノッテの表現力豊かなフリーダンスの「ライフ・イズ・ビューティフル」に。バーチュー&モイアの「何かわからなくても、とりあえずすごい!」と思わされる素晴らしい演技…細かいルールはわからなくても、見ているだけでうっとりできます!

男子は羽生結弦選手が万全の体調で、万全の演技ができることを祈るばかりです…。が、同時に。どの選手もキスクラでは悲しい顔ではなく心からの笑顔を浮かべられたら良いなとも思います。(キスクラ=キス&クライ、試合後に点数発表を待つあそこのことで。キスは喜び、泣くのは悲しみ、悲喜こもごもの起こる場所…という意味でそう呼ばれるのだとか。)


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