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大人が写真を撮るとき その1

最初にご依頼を伺った時に「素敵だな、羨ましいな」と思った。
自分には訪れなかった幸福の形は、いつでも眩しい。

「祖母の米寿のお祝いに身内で集まるので、宮島で撮影をお願いしたい」、これはそういうご依頼だった。

少し我が家の話をさせてもらうと。かわいがってくれた母方の祖父母は、米寿を迎えるよりも随分と前に早々と亡くなった。父方とは色々とあって子供時代以降は疎遠であり、やはり既に亡くなっている。

そのせいかこんな風に身内で集まって米寿をお祝いする、ということにどこか憧れめいた感情があり…こういう機会に立ち会って撮影させていただけることが、とても嬉しかった。

また総勢大人9名とプラス犬という、小さな子供を含まないご家族での撮影はかなり珍しいもので。そういうことも含めて、この撮影の日をとても楽しみにしていた。


撮影当日、野外での撮影は天気が心配なものだけれども…雲と共に青空も広がる美しい日だった。秋めいてきてはいるが、まだ寒さは感じられない。

自分の撮影は、自然体でのスナップ写真がメインとなる。
なので最初に「わたしのことは通りすがりのカメラを持った観光客だとでも思って下さいね!」と皆様にお伝えしておく。

もちろんせっかくの機会ではあるし、必ずご要望があるものなので。全員揃っての集合写真も撮るけれど…その日の雰囲気や気配が伝わる写真というのは、やはり断然にスナップ写真だと思っている。

なんでもない自然体の、取り繕わない素顔だからこそ。後から見たときにその瞬間が愛おしく感じることもあるだろう。

それに写真における臨場感というものが、好きなのだ。

またカメラ目線でにっこりピースは必要はないけれど。チョロチョロと走り回っては屈んだり立ち上がったりしている挙動不審なカメラマンが向けたレンズに気づいて、かけていただく笑顔はあたたかい。


常々、出張撮影は幸せのおすそ分けのようなものだと思っている。

ご依頼を下さる方はその瞬間を形に残したい、と考えて下さっているくらいだ。ご家族への愛がある。その人達にとっては普通で当たり前のことかもしれないけれど、また小さなお子さんがいれば楽しいばかりではなく大変なことも多いかもしれないけれど、そこにはたしかに幸福の気配があって。

そこから少し離れた場所に立っているせいで、そして他人だからこそ、その気配がよりハッキリと感じられるのだと思う。

懐かしく恋しいような、もう手の届かない所にある、だけど近しい。

そんなノスタルジーに近いような幸せの気配と共にシャッターを切っていると、いつのまにか自分の胸のうちまであたたかくなっていて。こういう時はいつも「幸せのおすそ分けをもらったな」と思う。

この日も、そんな撮影だった。


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広島で、大人から子供まで人物の出張撮影をしています。自然な情景を、その時間を…切り取って残したスナップ写真は、お客様だけでなく自分にとっても宝物。何かありましたら、ぜひどうぞ!

ユルリラム
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