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蔵王温泉スキーで憂う、やっぱり変だぞニッポン

3月初旬、山形の蔵王温泉へスキー旅に出かけた。

1月、2月の青森 八甲田でのバックカントリースキーに続き、今回はスキー&温泉の旅。
パウダースノーが楽しめる広大なスキー場、源泉かけ流しの強酸性硫黄泉、日本三大樹氷の景観と、三拍子揃った僕の一押しウインターリゾートだ。

ものぐさな僕は、マイカーでは出かけない。
この歳になると、雪道での運転や渋滞は、ストレスでしかないのだ。

羽田空港から山形空港へ一っ飛び、僅か60分の空の旅。更に山形空港からは、乗合タクシーが一人僅か3千円で蔵王温泉まで運んでくれる。

朝一の飛行機に乗った僕は、宿の到着後すぐに着替えて、11時にはゲレンデで滑っていた。

ロープウェーで一目散に頂上を目指す。
しかし、ここで最初の異変を感じた。「ロープウェーがガラガラ」なのだ。

空いてることはありがたい。だが、拍子抜けするほど人が少ない。
そして、日本人より、どうやら外国人の姿が目立つ。平日だからだろうか。

ロープウェーのオペレーターに聞くと、「ここ数年はこんなもんです」「特にコロナ以降はずいぶん減りました」「今年は雪も少ないし、余計に少ないね」「樹氷観光のお客さんは増えてるんだけどね」

あらためて調べてみると、蔵王ばかりか、日本のスキー・スノーボード人口は驚くほど減っていた。ガラガラなのも無理はない。
そして、頼りはここでも訪日外国人らしい。

出所:日本生産性本部

宿泊する宿も温泉街も人影はまばらだった。トップシーズンを過ぎたとは言え、まだ3月上旬。大丈夫か蔵王。この先の経営が心配だ。

ロープウェーで乗り合わせた台湾から来た5人の若者グループに話しかけてみた。プチ国際交流だ。残念ながら日本語は通じなかった。

30年ほど前までは、戦争の名残で、日本語を話す台湾の方は多かった。今はそうでもなさそうだ。終戦後まもなく80年、無理もない。

同じ会社のエンジニアで一緒に休暇を取っているという。
そして、人生において雪を見るのは初めてだと言いながらはしゃいでいた。
雪が初めてなんだ… 四季のある日本を自慢げに思う僕がいた。

そんな思いも束の間。台湾、エンジニア…
そう言えば、つい先日、台湾の大手半導体メーカーTSMCが熊本で巨大な半導体工場の開所式を行ったばかりではないか。
今や、先端技術で大いに躍進する台湾に対し、それに頼るばかりのニッポン。栄枯盛衰、ふと先行きを淋しく感じるのであった。

蔵王頂上の地蔵尊と一緒に

幸い好天に恵まれて視界は良好。所どころに青空も顔を出した。
そして、期待通りのパウダースノーにも満足。

しかし、またもや異変を感じた。
「樹氷原に樹氷がない」
今年の積雪の少なさは年始から各地で話題になっていたが、2月の異例の暖冬で、すっかり雪が落ちてしまったらしい。

美しい蔵王の樹氷は、日本海を越えてやって来る季節風が、氷点下でも凍らない「過冷却水滴」を運び、アオモリトドマツにぶつかって凍り付いたり、着雪してできあがる。氷点下10~15度の環境下にあることが条件の一つ。
ここにも地球温暖化の影が忍び寄っているようだ。

しかし、よく見ると、更に異変を感じる。
雪が解け落ちたのは理解できるが、木々に葉っぱがないではないか。
アオモリトトマツは針葉樹のはず。

調べると、キクイムシの大量発生で、多くのアオモリトトマツが立ち枯れしているという。僕の見た目では5割以上でやられているように感じた。
これでは、いくら冷えても雪の付きようがない。
これも地球温暖化の影響であろうか。

残念ながら、蔵王の美しい樹氷は、近い将来見れなくなるかもしれない。
となると、多くの訪日外国人のお目当ても消滅することになる。
解かねばならない問題は複雑だ。

それからの4日間は、広大なゲレンデを隅から隅まで滑り倒した。爽快感で笑いが止まらない。
リフト待ちもゼロ。バブル期の長いリフト待ちがもはや懐かしくさえ感じられる。「少しは休憩させてくれ!」

蔵王中央ロープウェー鳥兜駅前

夕方からはスキーの疲れを癒すべく、温泉三昧だ。
開湯後なんと1,900年の歴史をもつ蔵王温泉の湯は、日本で2番目に強いと言われるPH1.3の強酸性硫黄泉。この湯がたまらなく良いのだ。

酸の強さで、湯船にタオルを入れると2、3日でぼろぼろになってしまう。
もはやほんとうに身体に良いのだろうかと疑いたくなるほどだ。

豊富な湯量を誇り、湯船からはいつも溢れる出る湯は、もちろん源泉かけ流し。
美肌、切り傷、火傷、婦人病、虚弱児童、動脈硬化症、糖尿病、高血圧症、神経痛に効くらしい。

大抵の宿には、源泉かけ流しの内湯が備わっているが、温泉巡りができる風情たっぷりの外湯も3か所にある。

上湯共同浴場

こんな素敵な外湯だが、完全に貸し切り状態。この後、一人の西洋人が入ってきたのみだった。

温泉街を散歩する。残念ながら、所どころ廃業した宿や店が虫食い状態のようになり、淋しい限り。温泉街の賑やかさはどこにもなかった。

宿に戻り女将と話をすると、長年厳しい状況が続いていたが、コロナで一層の打撃を受け、撤退されたところが多いようだ。

これほどのスキー場と温泉と樹氷観光に恵まれながらも、この苦境ぶり。
僕はニッポンの未来に不安を覚えずにはいられなかった。

悪化する環境問題、加速する少子化問題、低迷する経済、高まる内向き志向
還暦を過ぎた僕に、何かできることはあるだろうか。
今一度じっくり考えてみたいと思う。

そして、このNOTEを書きながら思ったことは、まずは僕自身が先頭に立って遊ぶことだった!


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