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「いやな上司には、サラリーマンかくあるべき」 サラリーマンあれこれ#6

サラリーマン稼業なんてやってると、大抵の上司は気にくわない。

「何でこんな人が部長になっちゃたんだ?」とか「この課長は許せん!」とか、自分を棚に上げて不満いっぱいだ。

まあしかし、大抵の会社組織では転勤や人事異動がある。上司にも自分にもだ。僕のいた会社では、どんなに長くても同じ上司に仕えるのは、概ね4年だった。

そう、どんなに嫌な上司と出会っても4年我慢すれば、おさらばできる。
そんなふうに思えたら良いのだが、実際には日々の業務をこなす中での4年は長い。

そんな嫌な上司が今年も新たな方針や指示を出すことだろう。
ぜひ忠実に、人一倍誠実に、嫌な上司の方針をサポートするに限る。

ある日、以前の会社で後輩だったM君と東京・新橋駅前でバッタリ会った。
サラリーマンの聖地、新橋。時刻は17時半。

「あっ、フレッドさん。こんちは、ご無沙汰してます。こんなとこでお会いするとは」と後輩のM君。「おっ、久しぶり。元気にやってる?」と僕。
「一杯行く?」当然のごとく、二人連れだって夜の街へ繰り出した。

M君は年始から、ずいぶん鬱憤がたまっていた。

「去年夏に転勤してきた部長から、年始の挨拶回りのアポ取れ、アポ取れ、って言われて大変なんですよ」
「そんなに行きたきゃ、自分でアポとればいいのに」

「自分はアポとって出かけたいくせに、僕らにはビデオ会議を有効活用して、もっと効率的なバーチャル営業を推進しろ、ですよ」

このM君、昔からそこそこ仕事ができ、顧客受けもいいのに、昇進が遅い。
40代後半で、ようやく一昨年に課長に上がったところだ。

「あんまり腹立つんで、無視ですよ無視。」
「そもそも営業なんて、直接会って話して、なんぼですから」
「適当にやってるふりだけですよ」

相変わらずだなあ。いつもM君は威勢がいい。
そして、自分のやり方で、それなりの成果を上げてくる。
でも評価されない。

「違うんですよM君。
上司の指示や方針を、”やってるふり”なんてダメですよ。上司だってバカじゃない。すぐに見抜かれる。
ましてや、”無視なんて”ありえないよ。」

「上司にケンカ売ったところで、いいことなんか何一つない。
4年我慢しなさい。
もっと言うと、徹底的に方針に忠実にやってみな。」

「そもそも、大抵は上司だって不安いっぱいでやってるんだから。
サポートしてくれる部下がいると、とってもうれしいもんだよ。」

「それでもって、自分のやりたい方法があるなら、アドオンでやればいいんじゃない?サラリーマンはカワイクなくちゃ、評価されないよ。」

なんてことを、M君に諭しながら酒を飲んだことが思い出される。
M君の気持ちは手に取るようにわかる。僕も多少なりともM君に近いタイプであった。

でも、上司に逆らい、打ち破ろうとする考えは捨てた方がいい。現実はテレビドラマとは違うのだ。

そもそも、嫌な上司の言っていることは、間違ってはないだろう。
いわゆる、誰も文句の言えない正論だ。

要は、言い方、表現の仕方が問題なのだ。
ならば、その正論に真正面から付き合ってみたっていいじゃないか。

これを、ゴマすりと思うか、処世術と思うか。人はアレコレ言うけれど、言いたい人には言わせておけば良いではないか。

さて、月日が経つのは早い。
あれから一年、今年の年賀状に「本年もアドバイスよろしくお願いします」の言葉と共に、「部長昇進」の報告があった。

M君が上司の方針に忠実に活動したか否かは不明だが、めでたい報告がうれしい。

今年も良い一年になりますように。



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