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黒猫印のTKG


「はぁ…なにやってんだろ、わたし」

せっかくおおきなプロジェクトを任せてもらったのに、やることなすことうまくいかない。空回りばっかり。


わたし、ダメダメだ。



こんなときは親友に愚痴を聞いてもらうのでもなく、スイーツをおなかいっぱい食べるのでもなく、「ひだまり」にいくのにかぎる。


ひだまりは、大好きなおともだちのmotohiroさんがつくったカフェだ。

「こんにちは」


ちいさくつぶやきながらお店にはいる。今日はなんだかお店がにぎやかだ。motohiroさんを囲むようにしてみんなが楽しそうに話している。


「あ、ゆきさん、いらっしゃい」

黒猫ちゃんが気づいて、小走りでかけよってくる。

「みんなで新メニューを考えているんです。よかったらゆきさんも一緒にどうですか?」

いつもだったら聞かれなくても輪の中に入っていくのだけれど。今日は…

「うん…あとで、ね」

黒猫ちゃんがちいさくうなづく。すべてを言わなくてもわかってくれちゃうのが黒猫ちゃんのすごいところだ。もはや特殊能力といってもいい。


「ゆきさん。もしよかったら、たまごかけごはん、食べませんか?」

「たまごかけごはん?」

「こういうときってほら、おかあさんの味、みたいのが食べたくなるじゃないですか」

そういえば最近は忙しすぎて、ごはんを炊くのも忘れてた。

「うん、じゃあ、たまごかけごはんにする。黒猫ちゃん、ありがと」


5分もしないうちに黒猫ちゃんが戻ってくる。お盆の上は、ほかほかの白いごはんが盛られたお茶碗とたまごがひとつだけ。

「なんか…カフェっぽくない笑」

「ですね笑」

ごはんの頂上を平らにして、穴をつくって。たまごをポン、と割って、穴に入れる。

すぐに食べる気になれず、ふーっとながいためいきがでる。



……


…………


あ、あれ?

なんかお茶碗が大きくなってない?

みんなも大きくなって…。


いったいわたし、どうしちゃったの?



まるで不思議の国のアリスの世界だ。



と、とにかく。

助けを呼ぼう。

にゃーーー!(黒猫ちゃん!)


??????????

しゃ…しゃべれない!


みゃあみゃあ、にゃー!(助けて、黒猫ちゃん!)


猫語(?)が通じたのか、黒猫ちゃんが駆け寄ってくる。


「もしかして…ゆきさん、ですか?」

「黒猫ちゃん、わたしの言葉がわかるの? たまごかけごはんを食べようとしたら猫になっちゃったみたいなの…」

「説明はあとでしますね。とにかくいまはみなさんのところにいきましょう」



「みなさん、猫ちゃんがあそびにきてくれましたよ!」


きゃー! かわいい♡ だっこさせて。


歓声が上がる。

だりくん、夜雪さん、たまちゃん、かねけんくん、メアリちゃん、はるさん…大好きな常連さんが、わたしをとりあっている。


ふふふ。

なんだか不思議な感じ。でも悪い気はしない。



「ゆきさん、起きてください」

あれ…? いつの間にか眠ってしまっていたみたい。たしか最後はたまちゃんのひざの上にいて…。

「motohiroさん、お店の看板を裏返してきてもらえますか」


次の瞬間。


あ…戻った!



「閉店と同時に魔法がとけるんです」


え…? 

motohiroさんの方をみると、わたしと同じようにくびをかしげている。



「じつは、たまごに魔法をかけたんです。ゆきさんに元気になってほしくって。でもごめんなさい。びっくりさせちゃいましたね」

そりゃあもちろん。驚いたなんてもんじゃない。人間にもどれなかったらどうしよう、って不安にもなったし。



でも…。

楽しかったな。


大好きなみんなのぬくもりを感じながらいっぱい眠って。


いつの間にか、なにを悩んでいたのかも忘れちゃった。




「ねえ、さっき、みんなで新メニューを考えてるって言ってたよね? このたまごかけごはんを新メニューにしたらどうかな?」

「あ、でも、これ、百発百中じゃないんです。ほんとに悩んでいる人にしか効果がないみたいで。しかも、たまごをごはんにのせたときにまんまるにならないとダメみたいで。なんか、月に関係してるのかなって」


「そういうのもレア感があっていいよ、きっと!」

motohiroさんも、にこにこ笑ってうなづいてくれている。



「なまえは…そう、TKG!」

「うふふ、そのままじゃないですか」

「えっとね、もちろん、たまごかけごはんっていう意味もあるんだけど」

そう言いながら、紙に書きだしていく。

T:ためいきを吹きかけると、
K:くろねこちゃんの魔法がかかるかもしれない、
G:グレイトなたまごかけごはん


「もう、ゆきさんったら。けっきょく、たまごかけごはん、なんですね」

「グレイトって自分で言っちゃう!?」

「いいんです、グレイトに素敵なんだから」

「あ! せっかくだから卵にあしあともつけませんか? ...ほら!かわいくなりましたよ!」

「わぁー♡すてき! 黒猫印、だね」



こうして、口にしただけで楽しい気分になる魔法のメニューが「ひだまり」にできました。


(おしまい)



motohiroさん、ごめんなさい(´;ω;`)

勝手な設定をいろいろつくりすぎちゃいました。もしダメなこととかあれば、こっそり伝えてくれたらうれしいです!すぐになんとかします!

…でも、書いていてめちゃくちゃ楽しかったです!

素敵な企画をありがとうございました♡



そうだ! まだあやまらなくてはいけない人たちが…!

だりくん、夜雪さん、たまちゃん、かねけんくん、メアリちゃん、はるさん、勝手に登場させちゃってごめんなさい。

でも、みんなで集まったらすごく楽しそうだなーって思ったら、書かずにはいられなかったんです。もしなにかまずいことがあれば、こっそり教えてくれるとうれしいです。




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