蝗禍

私は多分、もう東京に暮らすことはないと思う。
必要があって暮らしたとしても、満員電車に乗る生活だけは、したくない。
人混みにひどく疲弊するから。

密度が高まれば人はストレスフルになり攻撃的になる。満員電車は、とても不自然で危険な空間だ。
いとも簡単に満員電車や過密した空間を発生させる東京というまちは、異空間じみていて、今の私には耐えられそうにない。

子連れへのバッシングはいつまでもなくならない。今日も個人攻撃や脅迫に闘う人のコラムを読んだ。いつまでこんな悲鳴を聞かねばならないんだろうと思う。

でもその乗車している一人ひとりは、元は極悪人ではない。はずだ、とも思う。
過密さが、こころを変異させるんだと思っている。

昔、高校のとき、生物の時間に、バッタの相変異の話を習った。バッタは、過密な環境になると黒くて攻撃的なやつに変異するのだそうだ。そして集団となり、あたりを食い尽くしていく。種は、草むらにいる穏やかなバッタと同じなのに、過密さが、黒い恐ろしい集団バッタを生み出してしまう。

人もおんなじだと思うんだよ。過密な環境に置かれて、殺気立つ。
だからもう、ほんとうに、乗車トラブルは環境のせいというか、ほぼ公害のようなもんなんだと思っている。

黒いバッタに呑み込まれてしまわないように。
東京で暮らす近しい人を草の影から心配している。

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