安田祐輔

事業を通じた社会的包摂を目指す「キズキ」代表。11年に中退不登校向けの学習塾「キズキ共…

安田祐輔

事業を通じた社会的包摂を目指す「キズキ」代表。11年に中退不登校向けの学習塾「キズキ共育塾」を創業し7教室を展開。全国10の自治体と協働し貧困家庭の子ども支援等に携わる。19年にうつや発達障害による離職からの復帰を支援する「キズキビジネスカレッジ」開校。著書『暗闇でも走る』講談社

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社員の半数が辞めた時、「起業家」であることを辞めた。

FacebookやTwitterでお伝えしたように、キズキは創業8周年を迎えることができた。 「社会で本当に必要な事業を創り拡大させていきたい」 そう思ってミッションやビジョンに忠実に、会社を経営して来た。特にこの2年間は売上も2.5倍になるなど、特に真剣に経営をすることができた。 現在、塾の生徒は累計1500人全国7校舎、連携自治体も7つとなり、4月に立ち上げたキズキビジネスカレッジも早々に定員オーバーになる。 けれども当然ながら、ここまでは順風満帆な道のりではなか

    • オンライン教育から取り残される人々

      新型コロナウイルスによる休講の長期化に伴い、議論にのぼっている「オンライン教育」。はじめこそ「ICT教育が浸透する機会」「教育現場に変革をもたらすのでは」などの声が上がっていたが、公教育での導入が本格的に検討されるにつれて、環境整備や導入の困難さが挙げられるようになった。 僕が経営する会社は学習塾の運営の中でオンライン教育も行なっている(コロナ前からも生徒の一定数はオンラインだった)。また地方自治体から委託を受け、生活困窮世帯向けの学習支援にも取り組んでいる。 これらの経

      • 経済の悪化は、人の命に関わるという話。

        日本で最初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから、約2ヶ月半が過ぎた。 「経済よりも命の安全を優先しなければいけない」という話は当然である。一方で、「コロナで直接死ぬことも怖いが、経済で人が死ぬことも怖い」という意見にも共感する。経済が悪化すると、自殺率は上がるからだ。 つまり、「命か経済か」ではなく、「命も経済も」守らなければいけない。 *僕自身は、この6年ほど新宿区の自殺対策の委員を務めると同時に、全国10の自治体の生活困窮世帯の支援を行っている。また、中小企業

        • 「アスペルガーに生んでしまって申し訳ない」という言葉を、この社会からなくすために。

          2019年6月、農林水産省の元事務次官・熊沢英昭被告(76)が、長男の英一郎さん(44)の身体を数カ所包丁で刺し、殺害した事件。先日、東京地裁は懲役6年の実刑判決を言い渡し、後に保釈を認める決定を出した。 「(長男を)アスペルガーに生んでしまって申し訳ない。」 これは殺害された長男に向けて母親が法廷で発した言葉だ。 この言葉を聞いたとき、様々な記憶が思い出され、とても胸が傷んだ。なぜなら、僕自身「アスペルガー」当事者であり、今は引きこもりや発達障害の方を支援する会社を運

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          「迷惑な人」ならば、みんなで叩いていいのか

          僕が住んでいる場所の近くで、先日からマンション工事が始まった。 工事車両がひっきりなしに家の前を通るようになり、朝は7時から夜7時くらいまで、工事の音が鳴り響くようになった。 僕の家はアパートの1階にある。窓をしっかりと閉めていても、家のすぐ前で工事が行われていれば、その音は丸聞こえだ。 ある日、あまりにもその音が大きくて耐えられなくなった僕は、建設会社に1本の電話をする事にした。 「すみません、家の前で行われている工事なのですが、音が大きくて眠れなくて…」 「ご意

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          組織カルチャーを浸透させるために行った、たった二つのこと

          先日、キズキの創業から8年間で最も辛かった時期を振り返ってnoteを書いた。組織が壊れかけていたあの時代、行動規範を作ったことで最終的に乗り越えられたことは、大きな成功体験となった。 今、組織づくりの真っ只中で悩んでいる方々からも、たくさんの感想をいただいた。 また、キズキの現COOである仁枝からはこんなコメントをもらった。 仁枝がいう通り、今キズキがなんとかやっていけているのは、ただ「行動規範をつくったから」ではなかったように思う。 まずは、社員の賛同を得られるよう

          組織カルチャーを浸透させるために行った、たった二つのこと

          明日学校に行かない子は、君以外にも何万人もいる。

          もうすぐ8月が終わる。すでに新学期が始まっている人もいれば、これから始まる人もいるのかもしれない。 自殺総合対策推進センター によれば、中高生の自殺は8月下旬から9月上旬にかけて増加すると言われている。 学校が始まるこの時期に憂鬱な気持ちを抱える子どもたちは多い。 実は僕自身も「学校に行きたくない」と強く思っていた時期があった。 中学生の時、全寮制の学校で生活していた僕は、そこでいじめにあった。誰の目も届かない寮の部屋で、容赦なく叩きつけられる悪意。 そして味方が誰一人

          明日学校に行かない子は、君以外にも何万人もいる。

          れいわ新選組を見て感じた戸惑い

          少し遅くなってしまったけれども、先週の参議院選挙について。 投票率は48.8%と低かったが、N国が一議席獲得したことと同様に、れいわ新撰組が二議席獲得したことが話題となった。 それらの現象をポピュリズムとしての馬鹿にすることは簡単だし、その危険性も、色々なところで語られている通りだと思う。けれども、そこから学ぶべきことはあると僕は思っている。 ****** 色々な所で書いてきたように、僕は長らく「発達障害」や「虐待」、「ひきこもり」といった社会課題の当事者だった。一方で

          れいわ新選組を見て感じた戸惑い

          「人間を生産性で測るな」という言葉について、経営者として思うこと

          れいわ新選組のスローガン、「人間を生産性で測るな」という言葉を聞くたびに、後ろめたい気持ちになる時がある。 8年間企業を経営する中で、僕は誰よりも「生産性」を重視してきたからだ。当然だけど、社員一人一人の生産性が低い会社は成長できないどころか、潰れてしまう。 そして、職務に基づいた等級をつくり、人事評価に基づいて給与を決めていくこと(=つまり「生産性」に応じて給与を決めていくこと)も、私企業として重要なことだ。 一方で、僕はうつ病・発達障害・中退など、社会の中で一見「生

          「人間を生産性で測るな」という言葉について、経営者として思うこと

          なぜ事業を拡大させるのか?それは社会課題の解決に繋がっているのか?

          「安田さん、本当に事業を拡大する必要があるんですか?」 先日マネージャー会議で、一人の社員が発言した。 キズキは現在、これまでの事業をさらに拡大しようと考えている。全国に7校ある不登校・中退者向けの学習塾「キズキ共育塾」は、今後も拡大予定だし、うつ病や発達障害によって離職した若者向けの就労移行支援事業「キズキビジネスカレッジ」も、第2事業所を立ち上げる準備をしている。大学・自治体からの委託事業も、8つに増えた。 事業を拡大しより多くの人に支援の手が届くことはもちろん喜ば

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          会社のビジョンについて、改めて考えている

          6月、ビジョン・ミッションの再策定をした。 僕はビジョンを「あるべき社会の形」、ミッションを「ビジョンを達成するために、果たすべき自社の役割」と定義している。 僕の会社のビジョンは、長らく「何度でもやり直せる社会」だった。 8年前に「中退・不登校の方を対象とした塾」で事業を開始した僕の会社は、現在は塾だけでなく、「行政・大学と連携した生活困窮者等の支援(公民連携事業)」や、「うつや発達障害の方を対象としたビジネススクール(キズキビジネスカレッジ)」などに広がっている。

          会社のビジョンについて、改めて考えている

          考えることが僕の仕事

          noteを始めてみようと思う。色々悩み考えてきたことを、定期的にちゃんとシェアしたいと思った。 僕がキズキを立ち上げてから、もう8年が経つ。事業を始めたばかりのキズキには、ほんの数名の仲間しかいなかった。 (創業時、僕の誕生日を祝ってくれたインターン生たち) けれども、8年が経った今、一緒に働く仲間は300名を超えた。 巣鴨の築50年アパートの一室から始まった不登校・中退者向けの学習塾「キズキ共育塾」は、年内には全国9校に広がる。 公民連携事業も増え、現在は、9つの

          考えることが僕の仕事