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お祭りのなかった宝島で、夕涼み会を始めた話

夏休みには、中学校を卒業して島を旅立っていった島の子供たちも帰ってくる。夏の1ヶ月、宝島は少し賑やかになる。

そのころの宝島には、お祭りがなかった。伝統的なまつりごとは残るが、出店が並ぶようなお祭りはなかった。まつりごとに、大人の宴会はつきものだったが、子供たちは参加できる雰囲気ではなかった。

そんな宝島で、帰省している島の子供たちや、いつも遊びにきてくれる子供たちに楽しんでもらおうと、「夕涼み会」を企画した。初めてのことで、準備をするのにも時間がかかった。どんなで店があったらいいかと、じい様ばあ様と作戦を立てた。さらにスタッフとは少しでも、利用者が参加できる場を作ろうと、話し合いを重ねた。準備の段階から、作業を細切りにして、できることを担ってもらった。その時間は、楽しく、学園祭の雰囲気もあった。

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夕涼み会、当日

たくさんの子供たちがきてくれた。それにつられて、保護者もやってくる。どうしても人手が足りないから、お手伝いにも回ってもらった。全部を自分たちやらないこともポイントの一つだったと思う。狭いスペースに、想像以上に人が集まってくれて、ドタバタ感は否めない。ケアという視点では、反省点もあった。たくさんの笑顔と少しの反省点を残した、初めての夕涼み会だった。二階というスペースに足を運んでもらうためにやってきたことの一つだったけど、初めての夕涼み会が二階という、環境的に大変だった。

反省点を改善して、環境も変わった次年度以降は、さらにパワーアップしていった。

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祭りの後で

最初でハードな体験を共有しておいたことで、次年度は新しいアイデアがたくさん出てきた。夕涼み会の翌日も、子供たちが遊びにきて「昨日はありがとうござました」って、スイカを食べていった。

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子供たちの夏の思い出に、宝島のじい様やばあ様の姿がのこる。そして毎年、夏になると、子供たちから「夕涼み会はいつですか?」って聞かれるようになる。そうして小さな会話が生まれ、地域の子供たちを見守り、見守られる関係ができていくのだと思う。「あんたはどこの子ね?」って聞かれて、ちゃんと答える子供たち。じい様ばあ様が名前と顔を忘れても、またちゃんと話す素直さがある。娯楽の少ない宝島だからこそ、そういう豊かな時間が流れているんだと思う。

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花田さんの旅立ち

この初めての夕涼み会から数日して、北海道の僻地での事業立ち上げのために、花田さんは宝島を離れた。ご利用者も寂しかっただろう。僕も少し心細かった。

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