見出し画像

日建設計「荒川ビル」

日建設計が西新橋でつくった荒川ビルを見学させて頂いた。プロジェクトの担当者で、現在は東京大学特任助教である谷口景一朗さんにご案内していただく。オーナー会社のフロアが3層、オーナー住居、その他は貸し床の800平米程のビルである。日建的には小規模なプロジェクトで、その分若手のチームで自由にやった雰囲気もある建築だった。角地の2面に避難用階段を表出させ、そのぶん室内のコアをコンパクトにして、実際通常のつくり方よりも床面積を広くとれる構成になっている。

まず外階段が複雑に絡んでる外観が、中規模のオフィスビルの建ち並ぶ周辺のファサードラインに、運動性をもたらしているのは素直に良かった。角地であることも効いてるし、逆に言うと角地だからこそ成り立つ形式でもある。そして、角地をデザインすることは街区をデザインすることにつながるのだ。荒川ビルの場合、周辺は少し古いめのオフィスビルが多く、カーテンウォール以前の味のある古いアルミサッシや窓で構成されたビルが多いエリアだった。そのようなコンテクストに対して、外階段とオフィスにしては小さめの窓で応答することで、街並みに参加しつつ斜めの運動性をもたらしている。
また立面的な処理も上手い。避難上有効なバルコニーなど、各階で均一に入ってくる要素を階段や飛び出した部屋と絡めて、単調さが出さないようにしていたり、階段も外壁に沿ってる場所だけでなく飛ばしている場所もあり、アグレッシブな部分を要所要所でつくりながら、動的な印象を持った状態でまとめ上げている。

唯一疑問に思ったのは、外階段のスペースに溜まりを生んだり植栽などを置ける設えが全くなかった点である。避難通路ではあるが、必要幅が確保出来ている場所であれば、躯体の一部として腰掛けを用意できたし、階段下で配管関係が出てくる部分の設えを上手く利用できた気もした。

しかしながら、小中規模のオフィスビルに新たな形式を発見したプロジェクトだと思うし、まだコアのつくり方に可能性があることを気付かされた。それ以外にも、角地のあり方・オフィスビル街のデザインの余地といった、1つのビルが都市を形造ることの可能性も感じられた刺激的なプロジェクトでした。谷口さんありがとうございました。

#建築 #レビュー

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?