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熊谷守一「生きるよろこび」展

国立近代美術館で開催された熊谷守一「生きるよろこび」展が良かった。

特に守一の特徴の赤い輪郭線が生まれる変遷や試行錯誤が年代を追って丁寧に見せられているのが興味深かった。赤い輪郭線が生まれたことで、影の表現が暗く陰気なものでなくなったと言ってたとか。輪郭線によって色と色の関係性が相対化されたからだろう。

赤い輪郭線は、描かれているモノ同士に実体とは別の関係性を与えてるように感じとれる。例えば空と岩、山と木、平面上の隣接関係を超えてモノ同士が自律的に結びつく。ある種の異質かつ超越的な線であり、平面上に描かれた境界あるいは仕切りとも読める。

何もない場所に一本の線が描かれると、2つの場が生まれ同時に距離が生まれる。そして、引き離されたが故に関係性を持ち出す。線は場と場の境界となり、太さや質感が場の関係性に影響を与える。守一の赤い輪郭線はモノを縁取った線だが、モノ同士の境界であり場同士の仕切りでもある。

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