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「顧客体験良くして収益上がるの?」−他社事例編−

入社して早々、顧客体験(以下CX)・NPS改善が自分のテーマになったことは前回の転職エントリで書いた。アサインされた時は、サービスが成長するために本質的に重要な部分を担えることが嬉しかった。と同時に「CX改善して売上が上がるの?」という問いに、早い段階で応える必要があるなとも感じていた。何故ならば、CX改善は息の長い活動になるし、長期間取り組む土台作りが最初に必要だと思ったのだ。それなしで進むと中途半端に着手して、終わる可能性があると思ったからだ。


収益にならない「素晴らしい」活動は続かない

営利企業は売上・利益に因果が弱い活動は長続きしない。「これをやって売上に繋がるの?」は社会人なら誰もが上司や先輩に問われた言葉だし、後輩に問うたことがある言葉だろう。顧客体験改善は誰がどの角度から見ても、素晴らしい活動。ただ、素晴らしい活動か否かは活動自体の継続を全く保証しない。売上・利益と因果が弱い活動と判断されてしまえば、どれだけ素晴らしい活動であっても終わってしまう。売上・利益との因果が強い活動に人と金を移されてしまう。ぼくは10年くらいの社会人生活で「直感的に素晴らしいと思う活動」が「収益に繋がらない」と言う理由で、リソースを集められなかったり、途中で終わったりするのを何度も目の当たりにしてきた。


CX改善を始めてみようと経営に思ってもらうには

「お客さまが素晴らしい体験をする→ファンになる→購買頻度が上がる→売上が上がる」は定性的には納得のいくロジックだ。経営者もここは反対しない。問題は数字でそれを証明できるかどうかだ。ゼロから始める際は、自社で取れている数字は一つもない。「まず数字を取ってみよう」と経営に思ってもらうためには、やはり他社事例を持っていくに限る。同業種で事例があればベスト。だが同業種で事例が見つからない場合は「うちが始めれば業界初ですよ!」などと上手いことを言って、経営陣をその気にさせよう。ぼくが実務上ガチで参考にした事例を2つと、各業界のNPS事例集を紹介したい。


収益とNPSの相関事例 -Airbnb-

メルカリの場合はC2Cビジネスなので、似たようなC2Cの事例としてAirbnbをベンチマークした。そして、下記はぼくが社内で作った資料。

NPSスコアと1年以内の再予約・良い口コミが強く相関しており、このグラフを見た時思わず「こんなキレイな相関出て羨ましい。。。」と思ったほど。しかもサンプルサイズが60万とか、普通のサービスだとこんなに多くのユーザーから回答してもらえない。 

参考資料 : How well does NPS predict rebooking?


具体的なNPS施策の事例 -ソニー損保-

「相関は分かったけど、一体どんな施策をすればええんや」と思ったあなた。安心してください。ぼくも同じことを思いました。NPSもCXも全くわからない時にぼくがやった行動は先行事例を見つけること。そして、出来れば日本企業と思っていた際に見つけたのがソニー損保の事例。この記事を読んだ直後に社内Slackで共有したくらい、めっちゃ良い事例だった。内容を抜粋すると以下のような感じ

■収益に直結する指標であるNPSが与えた社内へのポジティブな影響
■他社には真似できない顧客体験によって差異化を図る
■スペック競争でも価格競争でもなく、いかにしてお客様に愛される保険会社になるか?
■お客様側の保険会社でありたい。だからあえて”ありのまま”に伝える
■短期的には損をすることでもありのまま伝えることでロイヤルティが向上

特に最後の「短期的には損をすることでも」とは、損して得とれの精神とでも言おうか、商売の本質な気がして「あーこれうちの会社でもやりてー!」と読んだ後に強烈に思った。顧客が真に求めているものを知り、目先の損得勘定を越えてサービス提供する。期中の売上利益だけ考えるP/L脳なことよりも、もっとずっと本質的な気がしたのだ。

各業界の事例

NTTコムリサーチが出しているレポートが、各業界ごとによくまとまっていたので下にまとめてみた。下記に自分の業界が含まれていないとしたら、「"自分の業界名" + Net Promoter Score」でググってみて欲しい。仮に日本語で見つけられなければ、業界名を英語にしてググれば何かしら出てくるはず。

NPSベンチマーク調査結果(ECサイト)
NPSベンチマーク調査結果(自動車保険業界)
NPSベンチマーク調査結果(航空業界)
NPSベンチマーク調査結果(トラベル)
NPSベンチマーク調査結果(シティホテル)
NPSベンチマーク調査(ISP)
NPSベンチマーク調査結果(スマートフォン)
NPSベンチマーク調査結果(百貨店業界)
NPSベンチマーク調査結果(通販化粧品・健康食品業界)

ちなみにUSのTech IndustryのNPSレポートによると、AppleのNPSは89。このスコアは普通にやばい。ただ、アメリカは他国よりもNPSスコアが高く出やすいみたいなので、アメリカとスコア比較して落ち込む必要はない。

とはいえ他社事例だけでは説得力が足りない

最終的には自社で得られたNPSと、収益指標の相関を証明しないと本格的なCX改善活動のGoは当然出ない。「他社ではそうだけど本当にうちの会社でもそうなの?」はどの会社の経営者からも必ず問われる疑問だ。なので、次回はぼくが自社データで相関を出すまでの試みを書いてみたい。本当に紆余曲折あり、データの抽出方法や相関の出し方など、一通りハマった自信はある。読者のみなさんが、同じ罠にハマらないような記事を書きたい。

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