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スタートアップ経理の振り返り

この記事は「UP!経理 Advent Calendar 2023」の12/24の記事です。

株式会社ビビッドガーデンのゆたく(@yutak824)です。
簡単に自己紹介すると、公認会計として大手監査法人でキャリアをスタートし、上場準備会社をメインとする監査・IPO支援業務を行っておりました。その後は、スターアップ企業の管理部門を経て、現在のビビッドガーデンに入社しコーポレート部門を担っております。

現在のビビッドガーデンには2021年3月に二人目のコーポレート担当として入社し最初のミッションは経理内製化でした。
2022年に経理経験豊富なメンバーが2名入社し、2023年には経理領域において私はほぼお役御免状態となりました(笑)。
このタイミングでスタートアップ経理業務について振り返り、その経験を共有したいと思い、今回noteを書きました。


スタートアップ経理の魅力

スタートアップ経理といっても多岐に渡るので、今回はミドルフェーズのスタートアップを前提にしたいと思います。
そもそもシード・アーリーのスタートアップでは会計事務所に外注してるケースがほとんど、レイターになるとオペレーションが定着してきて開示書類の作成や連結決算などより専門性の高い業務が必要となります。
多くのスタートアップでは、ミドルフェーズで経理を内製化することになりますが、そのタイミングで私も入社しました。

そんなスタートアップ経理の魅力とは何か。その一つが、経理が会社の意思決定に深く関与できる点にあります。

まず、経理は会社の会計データを総合的に取り扱います。これにより、他の誰よりも会社の財務状況を網羅的に把握することができ、この深い理解は、経理が重要な意思決定プロセスにおいて中心的な役割を果たすことできます。経理は単に数字を追跡するだけでなく、それらの数字が物語る背景と将来を読み取り、戦略的な提案を行うことができます。その結果、会社の方向性を形作る上で重要な役割を担うのです。

さらに、スタートアップ経理は会社のオペレーションを上流から理解する必要があります。契約の内容からシステムの運用、モノやお金の流れまで、これらの要素を深く理解することで、適切な会計処理を行うことができます。この全体像の把握は、経理が単に会計の専門家としてではなく、事業全体を見渡しオペレーションを効率的に機能させるために不可欠です。

このように、スタートアップ経理はただの数字の管理者ではなく、会社の意思決定に影響を与える重要な役割を担っています。

スタートアップ経理に必要な適性とスキル

会計や税務の知識といったどのフェーズでも普遍的な必要スキルは対象外とし、スタートアップならではの適性とスキルについてお話します。

オペレーション設計力

経理に必要なスキルとして、オペレーション設計の重要性は意外にも高いです。特に、監査法人時代に見てきたスタートアップ企業が監査契約初期に直面する難題として、これは頻繁に見受けられました。経理は、適切な会計処理を実施するために、業務オペレーションを詳細に理解し、必要に応じて修正を加える必要があります。

一般的なケースとして、売上計上を現金主義から発生主義へと移行する際の設計が挙げられます。私が入社した際、ちょうどこの移行期にありました。当然会社の注文管理システムが初めから会計処理を意識して設計されていないため、必要なデータの整備が不可欠です。このため、システムが適切なデータを抽出できるようエンジニアと協議し、具体的な仕訳フローを構築します。このような役割は経理担当者にしかできないものです。
監査法人での経験から、売上計上フローを一定のレベルまで押し上げるのは、どのスタートアップ経理でも通る最初の難題なのかなと思います。また、これをリードできる経理人材はスタートアップでは重宝されると思います。

売上計上フローだけでなく、稟議フロー、請求書発行/回収フロー、振込フロー、債権債務管理など、様々なオペレーションの設計機会も存在します。これらを効率的かつ正確に構築することは、スタートアップ経理の面白さの一部です。

リスク・アプローチ力

リスク・アプローチとは監査用語で「監査を効果的・効率的に進めるための手法」のことを言います。
端的に説明すると、監査において人や時間は有限なので、リスクが高い箇所に重点を置き、リスクが低い箇所は適度な労力でやりましょう。ということです。
この考え方は監査に限らずどの役割においても重要ですが、特にリソースが限られているスタートアップではなおさらです。ミスを減らすという意識は皆さん持っていると思いますが、「リスクが低いところをそれなりの労力で」行うことも大切です。ミスは避けられないものであり、リスクの大小に応じて柔軟に対応することが求められます。
例えば、上述した売上計上フローのオペレーションについても売上構成割合に応じて濃淡をつけ簡便的な処理が許容される領域はそれに応じたオペレーションを設計します。
効果的なリスクアプローチには、財務諸表全体を俯瞰することが不可欠です。

忍耐力

一人目○○のポジションでは、どの職種でもまずは「荒地を耕す」ことから始まります。入社して最初の3ヶ月は、社内での信頼を築くために早めに成果を出し、周囲との連携を強化することが重要です。しかし、その裏では、地道なデータクリーニングなど、目立たない作業がさらに次の成果を生むために必要となります。

入社時は会計データ上には補助科目や取引先といった債権債務管理や管理会計に必要なデータがなかったため、進行期分の仕訳には必要な粒度で仕訳データを一つ一つ開きながら地道に補助科目(取引先等)を登録していきました。
(一点注記しておきたいのは前任の外注先が補助科目を登録してないことが悪いとかではないです。会計データをどう管理し扱うかは会社側での設計が必要な部分です。)

また、会計システム以外にも必要なデータは整備していきます。例えば、自社システムで管理している振込先データが、ネットバンキングに流し込めるデータの形式や仕様になっていなかったら、そこもコツコツと修正をかけていきました。当然将来的に、データが適切な形式で入力されるよう、システムの上流部分から仕様を変更する動きも並行して進めていく必要があります。

一人目○○のポジションでは、「荒地を耕す」作業が避けられませんが、これは将来の生産性への投資だと考えて、淡々と取り組むことが必要です。

推進力

推進力は、ポジションやフェーズに関わらず重要です。経理においては特に、オペレーション全般に関与し、その設計から実施に至るまで積極的に関与する必要があります。

特にスタートアップでは、常に報告して協議して進めるよりも、担当分野においてスピード感を持ち、自発的に動くことが求められます。
もちろん、経営者や上長によって重視するポイントや譲れない点は異なりますが、何かが違うと感じたら、それをはっきりと指摘するでしょう。指示を待つのではなく、自分が必要と判断したことは積極的に推進する必要があります。

最後に

約3年前の業務を振り返ってみましたが、経理業務の魅力や重要さを改めて感じる機会となりました。
いろいろ書きましたが、私自身できていないことが多いです(笑)
私自身は経理として半人前ですが、上場企業の経験豊かなCFOや管理部長、監査役との対話を通じて、経理人材の重要性を強く認識してます。
会計、税務、開示書類の専門知識に加え、多様なスキルを融合させることで、経理の役割はより広範囲にわたる活躍が可能になると思います。

明日は、アドベントカレンダー最終日です。
俵家さん、締めお願いします!


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