実験的即興詩 「玄関」

実験的即興詩 「玄関」

靴下をいやがるぼくには
ビーサンが一番心地良い
何処へ行くにも履古した
古いビーサンが心地よい
指の股を風が抜けて行く

こんな心地良さは他に無い
教会も寺院も葬式も婚礼も
訴訟も融資も返済も受祭も
食事も風呂も誘惑も性交も
飲酒も歌詠も句詠も句会も
ビーサンで過ごしていたい

ほんとは冬でも履いていたいけど
せけんがそれをゆるしてくれない
せけんはそれをゆるしてくれない

なあ、マリアさま
あんたならわかってくれるよな
裸足のマリア
おれのおんな

白くひび割れたかかとの爪先は
地面を掴む鷹の足のようひろく
爪は割れ土に染まり色がかわる
日に焼けて例えようなく美しい
その足に跪坐いてキスをしよう
その足だからこそキスをしよう

無辜であることは正しくは無い
無謬であることは正解では無い
無為であることこそうつくしい
無似であることを恐れるなかれ

ひとは靴を履いた瞬間弱くなった
そうだろ?マリアさま

ビーサンがすき
古ビーサンがちらかる玄関

叶裕

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